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第294話「行くっスよ!グランダイオー!グレート合体!」「ウチ的にはスーパー合体なんですけどー!?」「この世界観はいまだに理解し切れておりません……」


巨大イーラは世界中から魔力を吸収するにつれ巨大化し、魔法学園中央棟の上空にそそり立つ光る御柱(みはしら)と一体化してしまっていた。手も足も溶け込んで形を失っている。

巨大化しているのはイーラだけではない、御柱そのものも頭上に広がる異形の都市にむけて伸び続けている。

「もうすぐだ、もうすぐこいつに魔力は満ちる。これを打ち込んで世界を破壊してくれる!破壊だ!破壊!破壊破壊破壊破壊!」

グリセルダは1000年前以上にこの世界に対して怒りを覚え、激怒していた。

吸収した制服のグリセルダの記憶から、妹であるアルダの最後を知ってしまっていたからだ。

魔力を吸収し切った御柱は超質量のパイルバンカーとなって大地に打ち込まれ、下手をするとこの星を割る程のエネルギーを蓄えつつあった。

それでなくても隕石を超える超衝撃により、音速を超える衝撃派が世界を襲い、星が更地になる予定だ。


周囲で魔力を吸収されて苦しんでいる人々はそれを見上げる事しかできない、それが何を自分達にもたらすかまではわからないが、絶望的な状況だというのは誰の目にも明らかだった。

その時、空を5色の巨大な光が横切っていった。色とりどりの5体のそれは、次々に身体を折りたたむ等して合体すると、巨大な人形になる。

突如、グリセルダの前に現れたのは巨大なグランダイオーだった。5人乗りの為かその全高は50mに達している。

「みんな、行くわよ!」

そのコクピットではロザリアが操縦用の台座で腕組みして仁王立ちだが、他のメンバーはロザリアほどやる気に満ちていないのもいる。

突然乗れと言われた上にさんざん振り回された上に合体して巨大化するわで1つのコクピットに集められ、げんなりしていたのはサクヤだった。

「な……なんですのこれは!? いくら何でも非常識にも程がありますわ!」

「あはははははははは、いやーロザリアさんについて行くと何が起こるか本当に予想できないねぇ」

エルフのシルフィーリエルは上機嫌だった。何も知らない状態でこれを予想できる人がいたら頭の中身を見てみたいものだ。


「悪夢です悪夢です悪夢ですこれは悪夢です、このような物に何度も乗せられる侍女が実在するはずがありません。きっと私はまだ寝床の中なのです」

「アデルさーん、いい加減現実逃避はやめましょうよー」

クレアはもう慣れたものではあったが、アデルはチベットスナギツネのような虚無目でコクピットの天井を見てぶつぶつ言っている。

「ロゼ、これは本当に大丈夫なのか……?」

今回は他にリュドヴィックも乗っている。リュドヴィックだけは一段高くなった座席でロザリアのすぐ後ろに座っていた。

その両斜め前はアデルとクレアで、リュドヴィックの両脇にはサクヤとシルフィーリエルが立っていた。

正直狭い、いくら50m級のロボットでも、6人も乗っていてはコクピットの広さはいくらあっても足りない。



グリセルダは中のロザリアと同じように腕組みして空中に仁王立ちするグランダイオーを見て呆れていた。玩具感丸出しで色とりどりのそれは、どう見ても戦える代物には見えなかったからだ。

「何だ?そんな玩具で何をするつもりだ?」

「ゼルダさん!ゼルダさんはどうしたの!そこにいるの?」

ロザリアは目の前の黒いドレスの少女がおそらくグリセルダだと当たりをつけ、突然姿を消したゼルダの行方を尋ねる。

「目の前の私が見えないのか、あれも私だ、あんな奴はとうの昔に私の中に消えた」

「そんな……」

グリセルダの言葉にアデルが悲しげな声を出す。それを側で聞いたロザリアは顔をひきしめる。

眼の前のグリセルダとアデルの友人だったゼルダが同一人物というなのなら、ほんの少し何か違えば目の前の少女もあのゼルダのように魔法学園の生徒として平和に過ごしていたのかも知れない。彼女を、止めないと。


「ねぇ、今はもうあなたが封印された時代から1000年も経っているのよ?その当時の人たちだってもう生きてはいないわ、国だって全然違う。それでもまだ続けるの?」

「終わらせなかったのは……、お前たちだろうが!私をここまで追い詰めたのは誰だと思っている!」

「何を……、言って?」

「もうお前達に語る言葉は持たん、今すぐこれを打ち込んでやるからさっさと消えろ!」

そう言うとグリセルダは御柱に手をつき、今にも何かをやらかしそうな雰囲気だ。


「待って!」

「何だ?さっきからうるさいぞ。それともその玩具で何かするつもりか?」

「あなたを、止めるわ」

「そういうのはな、力づくで止める実力がある奴だけが言える事だ!」

グリセルダは御柱から手を離すと、直下のイーラに飲み込まれるように乗り込み、既に御柱の一部と化していたイーラから脚を生やさせ、グランダイオーを蹴りつけてきた。ロザリアはそれでもひるむ事なく、脚を避けてイーラの懐に飛び込む。


「ドラゴンヘッドファイアー!」

グランダイオーは初手から最強の攻撃を仕掛けた、四の五の言っていると世界が消えてしまう。だが、それすらも巨大イーラに吸収されてしまった。ありとあらゆる魔法攻撃は無力化されてしまうようだ。

「ガトリングヒールfeat.光!!」

クレアが肩からバルカン砲を出させて光属性を込めたヒール弾を打ち込むが、それすら弾かれてしまう。出力が違いすぎるのだ。

「ええー、もしかしてこれ、打つ手無しなんじゃ無いっスかぁ?」

クレアがぼやくが何よりも今は大きさが違いすぎる。イーラは今も巨大化を続けて100m近くにも達しており、50mのグランダイオーがまるで子供だ。



「弱いぞ! 1000年前に私を苦しめた者はそんなものではなかった!」

イーラの身体中から光が放たれ、グランダイオーにも何発も当たる。その攻撃に対してグランダイオーはまるで耐えられなかった。かろうじて操縦席に当たらないようにするのがやっとだった。周辺の建物も破壊されて火の手が上がっている。

「ひどい……、早く止めないと」

「お嬢様、落ち着いて下さい。まずは目の前の”敵”です。今の所こちら側には有効な手立てが存在しません。今のままでは負けます。何か他に武装は無いのですか?」

周囲の被害状況を気にしているロザリアにアデルが眼の前の相手に集中するように促す。グリセルダをあえて”敵”と言うアデルに、ロザリアは痛ましいものを感じる。


「魔法攻撃は止めた方が良いと思うよ?自然四大力を使う攻撃は全て吸収されるようだし、それは光の魔力でも変わらないみたいだ」

「うーん、ヒーリング・アニヒレーターならもしかしたら……」

「何ですか、その不吉な響きの武装は……」

シルフィーリエルの助言にクレアが出した名前にアデルが警戒した表情を見せる。クレアを放っておくとロザリア以上の惨状になりかねないのはこの間の王都で身にしみている。


「えっとー、こないだヒーリング・インプロージョンって使ったじゃないですか。あれの発展強化版で、瞬間的に発生したマイクロブラックホールにですね、超高密度の光の魔力レーザーを打ち込むと、対消滅する時にもの凄いエネルギーが出るみたいなんです。制御が難しいんですけど、うまくいけばこの国の半分くらいを焼き尽くすくらいの熱がですね」

「却下です、その技は絶対に使わないで下さい。クレア様の命のある限り」

やっぱりこいつは放置しておけない、とアデルは本気で思う。すぐ近くで世界の危機が存在していた、どうして世界は私に優しくしてくれないのだとこめかみを押さえる。


「いやぁ自由で良いねぇ」

「自由だか何だか知りませんけど、そんなので世界を先に滅ぼされてはたまったものではありませんわ。というか気軽に世界を滅ぼせるの多すぎません事?」

「さすがに打つ手、無しって所かな?」

シルフィーリエルとサクヤの言葉を遮るようにロザリアが言葉を発する。

「いえ、最後の手段があるわ」


グリセルダはグランダイオーが逃げる様子が無いのを興味深そうに見ていた。

「ほほう?まだやるのか?」

「切り札ってのは、最後まで取っておくものよ! 召喚!グランキャッスル!」

ロザリアの声と共に、突然魔法学園の上空に”城”が出現した。グランロッシュ城を模したそれは、実物よりも遥かに小さなものの、それでも高さが数十mはあろうかという巨大さだった。そして、中央の巨大な尖塔の上に誰かが立っている。

「おほほほほほほほ!世界の破滅に立ち向かうべく、私、参上ですわ!」

マリエッタ・グランロッシュ第一王女だった。


「マリエッタあああ!? ロゼ! どうしてあの子を巻き込むのかなあああああああああ?」

「ほ、他にいなかったもので、その、6人目の戦士にしろって言ってたし……」

妹をわりと大切にしているつもりのリュドヴィックはロザリアに詰め寄っていた、立つと危ないですよ。

「お兄様、グダグダ言っているヒマはありませんわ!世界の危機に際して我ら王族が立ち向かわなくてどうするというのです!お義姉様?こちらはいつでも良いですわよ?」

「よし、合体!」

上空の城が、突如崩壊するように部品を展開させ始め、巨大な人型へと変形し始める。空中で起き上がったそれは、手足に石垣のような意匠が刻まれ、身体から何本もの尖塔が突き出ているという、まさに人型の城だ。

グランダイオーは腕組みの状態でその城の中庭降下し、収納されるようにして合体し、変形が完了する。

「完成!スーパーグランダイオー!」

「完成!グレートグランダイオー!」

ロザリアとクレアの声は全く合体していなかった。ニチアサ系のロザリアと深夜アニメ系のクレアではどうしても微妙なセンスの差が出る。双方ともにそれを気にせず己の道を行くので特に問題は無いのだが……。

しばしの話し合いの結果、結局この形態の名称はスーパーグレートグランダイオーという事になったらしい。周囲はわりとどうでもよさそうにしていたが、2人は満足そのものの顔だった。


グランダイオーのコクピットの背中側の壁が開き、ずごごごごとマリエッタの立つ台座が入ってきた。操縦室に入ってきたマリエッタは、物珍しそうに周囲を見ている。

「マリエッタ……、お前まで乗り込まなくても良いだろう? というかこれ、乗り込む必要あるのか?」

「あらお兄様、いたのですか」

妹を思いやる兄の声は無情にも軽くかわされた。お兄ちゃんは悲しい存在だ。

「マリエッタ様、危険ですのでその台座からは動かないで下さいませ、今身体を固定いたします」

「そう言われましても、目の前にお兄様もいますし、後ろの方ですから何も見えませんわねぇ。ちょっと介入いたしますわよ?」

アデルから声をかけられたマリエッタは足元に手を当て、魔力を流し込み始めた。


「あ! ちょっと! おかしな事すると消えてしまいます!」

「大丈夫ですわ、ほら、これで良いですわよね?」

クレアが声をあげたが、マリエッタの立っている台座の基礎部分が階段状に持ち上がり、同時にグランダイオーの背中部分が後方に下がってスペースが広がった。

マリエッタの座る台座が変形して玉座のような形になり、彼女はそこに座った。かなり頭が高い。

「よし、これでよく見えますわ。お義姉様、さっさとおやりになって下さいまし」

「ええー?それどっちかと言うと私のセリフでは……?」

悪役令嬢がまるで手下のように命令されてしまっていた。


ロザリアはSGグランダイオーを降下させると、イーラに掴みかかった。体格差は逆転し、こちらの方が倍ほども大きい。

魔法は効かなくても力づくならと、無理やり御柱からイーラを引きはがしにかかり、バキバキと音を立ててイーラの身体が木の根のように御柱から引きずり出され始める。

「おのれええええ!」

眼の前のものが信じられず、呆然と合体シーンを見ていたグリセルダは我に返り、イーラの身体から先程と同じようにレーザーを放つが、それはSGグランダイオーの装甲に弾かれる。

「何だと!?」

今の状態は7人がかりの魔力を込めた障壁なので、まともに受け止める事はできなくても弾くくらいの事はできる。そのままSGグランダイオーはイーラの胸部を無理やり引きはがそうとし始めた。


「アデル!場所はわかる?」

「胸部の奥です、そのまま剥がしていって下さい!」

SGグランダイオーの内部ではロザリアがアデルに分析させながら何かを準備していた。できればグリセルダを殺したく無かったのはロザリアも同感だったからだ。

「お次は、これ……、お、重い!」

ロザリア用意した獲物は巨大で、身体強化をしたロザリアですら持ち上げるのも苦労し、取り扱いに困るものだった。そこにリュドヴィックが手を貸す。

「リュドヴィック様……」

「ロゼ、君一人で無理をする事は無い。たまには私にも支えさせて欲しいな」


イーラの胸部装甲が音を立てて力づくで引き剥がされ、装甲の奥にグリセルダの姿が見えた。

「お嬢様!見えました!位置を表示させます!」

照準合わせ(ターゲッティング)! いつでも行けるっスよー!」

SGグランダイオーの胸を形成している城の城門が開いた。中ではグランダイオーの胸のドラゴンも口を開けている。そこには、剣を構えたロザリアとリュドヴィックがいる。

グランダイオーを動かしていたのはマリエッタだ。ロザリアは残る6人分の魔力支援を受けて、巨大な剣を作り出し、リュドヴィックと共に抱えるように構えていた。


「射出します!」

「うおおおおおおおおおおおおおお!!」

アデルの合図と共にロザリアの立つ台座がカタパルトのようにせり出し、ロザリアとリュドヴィックは弾丸のように撃ち出された。

夫婦最初の共同作業のように、かなり豪快なケーキ入刀がグリセルダを襲った。


次回、第295話「魔界、魔軍、魔王」

新年明けましておめでとうございます。あと少しだけこのお話にお付き合い下さい。

読んでいただいてありがとうございました。


基本的に月水金、夜の5時~6時頃で更新いたします。

いいね・感想や、ブクマ・評価などの

リアクションを取っていただけますと励みになります。

作中のギャル語・若者語は2015~2018年頃を想定しておりますが、

違和感などありましたらご指摘をどうぞお願いいたします。

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