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第212話「このえきしだんだいにたい……?」「お嬢様、あなたの家がボコボコにした所です」


客で賑わう王都の古着屋『神の家の衣装箱』、今日も様々なグッズを求めて多くの客が訪れていた。

すると突然扉が開いて鎧を着た騎士が怒鳴り込んできた。

「私は近衛騎士団第2隊隊長、ガルガンチュアだ!ローレンツという役者はいるか!ここに居るのは分かっているぞ!」


怒鳴り込んできたのは騎士服を着た大男だった。騎士というからには少なくとも貴族に準ずる地位にはるはずが、傲慢そうな見た目と口調はちょっと関わりたくない雰囲気を出している。

普段なら古着屋で何を言ってるんだこいつは、となる所ではあるが生憎と今はローレンツを演じるロザリアがいた。

舞台劇の衣装を仕立て直しの為にルクレツィアとの打ち合わせの所に衣装を持っていこうと、たまたま店にいたのだ。

とはいえ、店の出資者でもあり貴族のロザリアを突き出すわけにもいかず、ソフィアが恐る恐る応対に出る。

「あ、あの、当店は衣装を提供しただけで、あの劇そのものにはあまり関与していないのですが」

「嘘をつくな!劇の説明とかの音声をこの店から流しているというのは調べがついている!」


怒鳴り込んできた原因は劇の冒頭で騎士団がやられてしまってそこを五星義勇団が、という展開がお約束だったのがおそらく原因だろうというのは察しがついたが、そういう弱いものいじめしかできないからじゃないかなぁ……、などとソフィアは思った。

一応、ロザリア達は騎士団等に気を遣ってはいたのだ、一応。元々は五星義勇団ではなく五星騎士団という名前にしようとしたのを、アデルの「現実に騎士団が存在する以上避けるべきでしょう」という意見を聞き入れてたり色々と変更していたのだ。


「この店にいないというなら奴らがどこにいるか教えろ!さもなくばお前達を拘束する!」

「そんな無茶な!」

店内で遠巻きに見ている女性達の後ろの方にはロザリア達の姿もあった。当然見た目はともかく性別すら変わっているので相手は気づかない。

「無茶苦茶言ってますねお姉さま、どうしましょう?」

「この店は協会が経営している上にローゼンフェルド家の家紋も提示しておりますから、普通は手出ししようなどとは思わないはずですが……」

ガルガンチュアの横暴にクレアとアデルも困惑気味だった。ロザリアはいつまでもソフィアに相手をさせるわけにはいかないと準備を始めた。


「どうなんだ!早く言え!」

「そ、そんな事言われましても……」

「ソフィア店長、心配しなくても良いよ、俺が相手をするから」

店の奥からローレンツ(に扮したロザリア)が出てきた。服装もきっちりと着込んでいる。

まさか当の推しのローレンツが店内にいたとは思わず、店内にいた女性客達の間から悲鳴のような声が上がる。

ロザリアは姿を認識阻害の魔石具でローレンツに変え、仕立て直し前なので多少不本意ではあるが義勇団の衣装をきっちり着込んでいた。

巨漢のガルガンチュア程ではないが、元がロザリアなので見た目の年齢のわりにローレンツもかなり上背があり、貴族としての身のこなしも相まってかなりの存在感があった。


「俺を探してるんだろ?俺がローレンツだけど何か用かい?」

「お前か……、我が騎士団が役立たずと触れ回っているのは」

やはり原因は劇の内容だった。とはいえさすがにロザリア達といえどグランロッシュ王国の出来事としてではなく架空の国という事にしていた。

とはいえアデルに「グランフォースという名ではどちらにしろ同じでは?」と突っ込まれていたが。

「心外だな、あれは芝居の都合でやっているだけの事だし、そもそも作り話だぞあれは」

「お前の劇で王都は迷惑してるんだ!騎士団の信用を貶めて治安が乱れる一方だぞ!」

「それは初耳だなぁ、今の王都はむしろ治安が良くなったはずだけど?」

それは本当だった、一番人気の五星義勇団のレッドローレンツ風の赤い衣装を着るのが年齢を問わず流行っているので、街中にローレンツ風の姿をした者がいる事からどれが本物のローレンツかも知れず犯罪を起こしにくくなっていたのだ。


「うるさい!我々の権威を貶めれば治安が悪くなるのが当然だろう!」

「ほほぅ、ならどうしろと?」

「まぁ大きな事は要求しない、劇の中で一度くらい俺に負ける話を入れろ。嫌なら営業停止処分だ」

「……はぁ?」

あまりにくだらない提案にロザリアも呆れてしまう。一応近衛騎士団なのだからもっとこう何かあるだろうと思ったのだが。そしてそれは周囲の人達も似たような感想だったようだ。

「なんてせこい……」

「恥ずかしく無いのかしら……」

「だから弱い者いじめしかできないとか言われるのにねぇ……」


思わず真顔になったロザリアやクレアどころか、店中の客からも冷たい目で見られて軽く心が折れそうになっているガルガンチュアだが、彼もまたなりふり構っていられない状況なのだった。

それでなくてもローゼンフェルド家の殴り込みで騎士団が壊滅しかかった所を、何度も王城での事件が続発した事で騎士団の存在価値が問われかかっていたのだ。

元々近衛騎士団と魔法騎士団が別々に存在しているのはどうなんだという事もあって、近衛第一隊以外は統合してしまおうか、という意見まで出る始末だった。

さらに今回の五星義勇団の芝居のために街中にレッドローレンツのコスプレした人がいる為に治安が改善したのもその意見に拍車をかけていた。

『いや知らんし、ってかほとんど自分たちのせいじゃん!ウチらのせいにされても困るんですけどー!』


店にまで怒鳴り込んでおいて、相手のあまりのせこさにロザリアは少々イラっときていた。

「……よしわかった、劇にそういうのを追加してもいい。だが1つだけ条件がある」

「何だ」

「俺に勝てたらだ」


次回、第213話「ちょっと根性叩き直してあげようしかしらぁ?」

読んでいただいてありがとうございました。

また、ブックマークや多数のいいねをありがとうございます。


基本的に月水金、夕方の5時~6時頃で更新いたします。

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作中のギャル語・若者語は2015~2018年頃を想定しておりますが、

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