第205話「やる事が……、やる事が多い!!」「止まったら死ぬ魚か何かですかあなたは」
ロザリア達はローゼンフェルド家のロザリアの自室で、
ヒーローショーの設定を考えようと話し合い始めてから結構な時間が経っているにも関わらず、
決まっていない事が多すぎる事と、決めなければならない事がまだまだあるのではないかという事に焦りはじめていた。
「ちょっとさすがにまずいわね、あまりこだわると先に進まないわ。クレアさん、好みもわかるけどここから先はどんどん決めていくわよ! まずクレアさんの役名!はいどうぞ!」
「えっえっ、それじゃ私の名前がクレアだから……、クレス、っていうのはどうですか?」
「採用! はい次アデル!」
「では私はアドルで」
「なんというか捻りも何も無いわね……、良いわそれ採用!」
それぞれこだわりだすといくら時間があっても足りないのでどんどん即決していく事にした。
ローレンツ達はこの世界を司る5種の魔法力の象徴たる「魔神器」に選ばれた勇者で、
魔神器は5種の武器、とりあえずは火の刀、水の杖というのだけは決めた。あとは追加するメンバーによって流れで決める事にする。
「で、どんな登場人物の構成にしようかしら? 私が1人2役だと出番をちょっと考えないといけないわよね?」
「赤がリーダーは基本っスけど、登場する場面は限られそうですね?」
「クレア様、口調。まずそのお嬢様の前世の物語のヒーロー?達はどのような経緯で人助けをするようになるのですか?」
「えーと色々ね。どこかの組織……、つまりギルドみたいなものに所属してとか、ある日特殊な力を与えられてとか」
「お姉さま、となると私とアデルさんは既に魔神器に選ばれていて、人助けをしていると突然悪の組織が襲ってきたとかにします? 一からメンバー集めていくとお話に手間がかかりそうですし」
「あ、それ採用。どうせならそこに魔界から魔王の使いとか魔王がやってきたー、って事にしましょうか。もうそこが1話の最初で良いじゃない」
物語の要点が決まってしまえば後はわりと早かった。わりとポンポンと最初の方のストーリーが決まってしまう。
それパクリではという展開もあるにはあったが、この世界には元々英雄譚はあってもこの手の話は無かったので気にしない事にした。
ある程度物語の骨子とヒーロー側の設定側が固まった所で、さて悪役をどうするかという事になる。
「ボスはお姉さまとして、子分とか配下の悪役は誰にやってもらうんですか?」
「うーん、やっぱり孤児院の子、かなぁ。背の高い子にお願いするとか?」
「でもお姉さまとか私達が魔法を使えるなら、他も魔法が使えた方が良くないっスかねぇ」
「そこなのよねぇ……、よし決めた、シモンくんにしよう」
ロザリアは魔法学園の同じクラスでもあるシモンの名前を出した、というか他に思いつかなかった。こういう時実はクラスでぼっち同然だったという事が身にしみる。
「お嬢様、そのシモン、というのはどなたなのですか?」
「同じクラスの生徒よ、というか魔法学園で知り合いの男子生徒なんてその子しかいないし」
「シモンさんってだいたい3人でいますし、あと2人の女の子も勧誘しましょうか?」
ロザリアとクレアは色々と煮詰まっていて3人の都合を全く考えていなかった。これは謝礼か何かを用意すべきなので、アデルは後でロザリアに言っておかなければと思うのだった。
「けどこうなるとお嬢様の出番が少々ややこしい事になりますね、悪の女ボスと正義のヒーローの1人2役はさすがに無茶なのでは?」
「とはいえどっちもお姉さま以上に適任はいませんしねぇ……、なんとかずらして登場すれば……。
あ、私ちょっとひらめいたかも、魔石具開発してもらって何とかしてみます」
「そんな事できるの!?」
「今のまんまじゃお姉さまが何度も早着替えする事になって大変なだけっスよ。任せて下さい」
クレアはロザリア達と別れると魔石鉱山のギムオルを訪ねた。なんだかんだ知り合いの中では魔石について長けているからだ。
「たーのもー!」
「何じゃそのかけ声は。今日はどうしたんだ?」
「実はギムオルさんに開発してもらいたいものがありましてー」
「……また何を始める気だお前さん達は」
ギムオルがクレアの見せた魔法を再現する魔石具を開発してほしい、という依頼を即決で受けたのはそのすぐ後だった。
ロザリアの方はというと、クレアと別れた後に街で色々と買い込み、その足で王都の古着屋『神の家の衣装箱』に買ったものを持ち込んていた。
店長のソフィアはロザリアが持ってきた衣装を見て目を丸くしていた。その衣装でとある事をお願いされてさらに驚き、困惑した。
さて、色々と用意を終えたロザリアは後日、魔法学園でシモン達を呼び出した。
食堂の隅の席で自分がヒーローショーをやる事、その役者をやってほしい事を伝えた。が、当然皆の反応は微妙だった。
「いやまぁ、ロザリア様の頼みなら嫌とは言えないけどさぁ」
「うーん、要は舞台劇、よね?」
「おおおお、私もついに役者として世に出るのか……」
ロザリアに呼ばれて集まったシモン達は三者三様ではあるものの、一応協力的だった。むしろ中には異様に乗り気なのもいる。
「何故私がこのような事を……」
「嫌ならおひいさまは断れば良いじゃないか」
「母上がこの件を耳にしてるから断れなかったんですわよ! あのバカ親は絶対自分が出たがりますわ!」
シモン達3人どころか、ヒノモト国のサクヤやらエルフのシルフィーリエルまで巻き込まれてしまっていた。ロザリアの交友関係の狭さがうかがい知れる。
『ぼっち気味なのは否定はしないけどー!わりとバランスの良いメンツだと思うんですけどー!?」
次回、206話「ヒーローショー開幕!」
読んでいただいてありがとうございました。
また、ブックマークをありがとうございます。
基本的に月水金、夜の5時~6時頃で更新いたします。
いいね・感想や、ブクマ・評価などの
リアクションを取っていただけますと励みになります。
作中のギャル語・若者語は2015~2018年頃を想定しておりますが、
違和感などありましたらご指摘をどうぞお願いいたします。