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第197話「正直そういう事はどうでもいい、私はロザリアへのプレゼントが欲しいだけだ」「世界が滅べばそんな事言ってられないんですよ!」

一昨日は更新が遅れて申し訳ありません、話数にご注意下さい。


ドワーフ王はリュドヴィックと話した事で今後の考えが定まったようだ。

リュドヴィックとしてもこれ以上は知らない方が良さそうな事ばかりだったので、一安心といったところだ。

「まぁ済まなんだな。ワシの愚痴を聞いてもらって。おお、そういえば魔宝石の話だったな」

「ああ、贈り物として作っていただきたいのだが、紹介してもらえないだろうか?」

「かまわんぞ、ではちょっとこちらに来てくれ」

そうして連れて行かれたのは地底工城の第二層にある工房だった。ドワーフ王は工房の入り口で声をかけるでもなく、いきなり扉を開いて入っていく。リュドヴィックはついて行って良いものか迷う間もなかった。

工房の設備はどれもこれもリュドヴィックにとっては見た事もないものばかりだ。

魔石の研究をしているドワーフというだけあって工房内の設備も研究設備に近い。

蒸気を上げているボイラーのような装置があれば、机の上には実験装置のようなガラス瓶が山のように並んでいる。そのドワーフはその工房の奥にいた。


「おーいギムガル!ちょっと頼みがある!」

「なんだ!今忙しいのに!お前がこの魔晶石を調べろと言ったんだろうが!」

「まぁそう言うな。地の神王獣様の魔晶石はゆっくり研究してもらえばいい。実は魔宝石を作ってもらいたくてな」

ギムガルと呼ばれたドワーフは職人というより技術者か研究者のような印象だった。白衣のようなものを着ており、体つきもドワーフにしてはやや細い印象を受ける。


「何だ?ありゃ失敗作だぞ?あんな小遣い稼ぎに作った見た目だけのクズ石に騙される愚か者がまだいるのか?一度頭の中見てみたいわ」

「わ、私がその愚か者だ、その見た目だけで良いんだよ。宝石なんてそんなものだろう?どうか製作をお願いできないだろうか」

リュドヴィックは自分の事を知らないからだろうとは言えボロカスに言われて少々凹みながらも、とりあえず下手に出てみる事にした。どう見ても面倒くさそうな相手に対する対処法くらいは心得ている。

「ふん!元はもっと魔石の魔力貯蔵量を上げようとした実験の失敗作なのに、何が悲しくて宝石扱いされなきゃならんのだ」

「まぁそう言うな、研究や開発にだって金はかかるんだ。これで稼いだ金で好きな物を開発したらいいではないか」

「それを言われるとつらい所だな。まったく世の中はどこもかしこも金か」

ドワーフ王によるとドワーフは頑固者が多く、研究や試作の失敗作は放棄してしまう事が多く、そのままでは食い詰める者が続出する。それを調整するのも親方の役目なのだそうだ、そういった人望もあって国王となったのだろう。


「お金は大事だと思うよ?私なんて金貨1枚を自分で稼ぐのにどれだけ苦労するか」

「身なりのわりに殊勝な奴だな。まぁ良い、見た所お前さんが欲しいのか?貴族連中はどいつもこいつも使いにまかせっきりだからどんな色がいいかさっぱりわからん」

「ああそれなら私が婚約者に贈るものに使いたいんだ、青が良いな。名乗りが遅れたね、私はリュドヴィックと言う」

「こう見えてもグランロッシュ国の王太子だぞ、一応失礼の無いようにな」

「あー?王子様がわざわざ宝石の為だけにここに来たってのか?王族や貴族はろくなのいないと思っていたが良い心がけだ、それに免じて話は聞いてやる」

貴族によほど嫌な思い出でもあるのか、ギムガルは不機嫌そうな顔は変わらないが工房の隅にある何かの装置に案内してくれた。


「これが魔宝石を()()()()()()装置だ。元々はより効率の良い魔力源としての魔石を作ろうとしたんだがなぁ」

魔法石を”作れる”と言わないあたり、よほど不本意なようだ。外観は大きな金属製の球体で、球体の中心に向けて突き刺さるかのように何本もの金属管が伸びており、その先端には液体の入った透明の容器が取り付けられている。リュドヴィックがその装置を興味深そうに見つめていると、ギムガルが質問してきた。

「さて、まずお前さんの魔力について聞かせてくれ。属性とランクは?」

「氷で、Bだが」

「……ちょっとまずいなそれは。上位属性のは作れた事が無いし、ランクも高すぎる」

「どういう事だ?」

「一般属性の水なら何の問題も無いんだがな。上位属性だと魔石の方が耐えられず砕けてしまう。ランクも上位だから魔力量もかなりになるしな」

「そうか……。残念だな、何か手立ては無いものか?」

「出来上がった石なんてどれでも同じだぞ、代理の水属性の魔力持ちを連れてきたらそれで作ってやるが?」

「い、いやそれはさすがに断る。私の婚約者に他人の魔力が込もったものなど身につけさせたくない」

「魔石も魔力なんてどれも同じだというのに、どいつもこいつも面倒くさいのぉ。何が良いんだこんな物」

そう言いながらギムガルが隣の机から手に取ったのは青く光る石だった。その石からはたしかに魔力を感じられた。


「それが魔宝石なのか?ちょっと見せてもらっても?」

「別に構わんぞ、ほれ」

石は普通の宝石とは異なり、光を反射するのではなく内部から淡く発光していた。もう少し光が強いものを想像していたが雰囲気のある光り方だった。これがロザリアの胸元とかを飾る、とても良い。

リュドヴィックの脳裏には、自分の魔力で宝石が青く輝くネックレスを身に着けたロザリアの姿が浮かび上がる。そのネックレスは青い光でロザリアに見惚れる物を睨みつけるのだろう。とても良い。


「ふん、気に入ったようだな。魔石はだめでもお前さんの魔力を受け止めるだけの格の高い魔晶石ならいけるかも知れんがな。」

「魔晶石、か。となるとどれくらいの魔獣になる?」

「最低でも小型のアイスドラゴンかブリザードベアーとかになるな、属性同じだときついのではないか?誰かに獲ってきてもらえ」

「……それも嫌だなぁ、誰かが討伐してきた魔晶石なんかで作ったものをロザリアに身につけさせたくない」

「お前本当にめんどくさい男だな。そのこだわりは嫌いではないが……、ふむ、だったら魔晶石を作ってきてもらえ」

「魔晶石を?作れるものなのか?」

「結局は魔力が結晶化したものだからな。作れるぞ、神王獣とかなら。実際さっき調べてた魔晶石は地の神王獣が作ってくれたものだ」

「水の神王獣か……」

幸いと言っていいのかどうか、過日の神王の円卓で一応面識は無くもなかった。しかし、あまり会いたい相手ではない。

神王獣達の中ではどうも掴みどころの無い印象を受けたからだ。


次回、198話「精霊郷」「魔宝石欲しいだけなのになぜこんな所まで来る事になるんだ」「だんだん嫌な予感しかしてこなくなってきた……、逃げようかな」

読んでいただいてありがとうございました。

また、ブックマークをありがとうございます。

基本的に月水金、夜の5時~6時頃で更新いたします。

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作中のギャル語・若者語は2015~2018年頃を想定しておりますが、

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