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第194話「うーん、色々な事が出すぎてよくわかんないんですけどー」

アグニラディウスは2人が完全に納得できたかどうかはわからないが、特に質問も無さそうなので一方的に元の時間に戻そうとした。

「ではもう良いな?通常の時間に戻すぞ」

「あの!最後にもう1つだけ!」

ロザリアが滑り込みで質問をしてきた。その勢いに押されてアグニラディウスは苦笑しながら続きを(うなが)す。

「世界が飲み込まれるっていうんですけど、宇宙全体が飲み込まれちゃうんですか? 壮大過ぎません!? そんなのどうしようもないと思うんですけど!」

ロザリアの疑問ももっともだった。前世の記憶では宇宙を含む世界は広大で果てもないもので、それが残らず別の世界に飲み込まれると言われても信じられなかった。


「ああ、丸い大地の概念を知っているのか。いや、局所的に重なり合う部分だけだ。宇宙ごと衝突する事も可能性の上では起こりうるがまぁ普通は起こらん。

 だが今回は運の悪い事にほぼ星ごと飲み込まれるな。普通はごくごく限定的な範囲のみなのだが」

「どうしてそんな都合よく、星全部丸ごと相性の悪い世界があるんですか……」

「われらも他の世界のことまで観測できるわけでは無いから断定はできんがな、全く相反する事が起こった世界なのかも知れん」

神王獣ですら見通せないような事態が起こっているのでは、いくら考えても無駄だろうとロザリアは考える事にした。

『ウチのあんま良くない頭にそんな無茶をさせないで欲しい。マジ意味不(イミフ)過ぎる事だらけなんですけどー……』


「さて、もう良いな? では戻す。何、内緒話は気にするな、今話した事は他の皆にも深層心理内に記憶を与えておく。

 この世界の常識とは相反するので普通は無視されるが、来るべき時が来たら受け入れてくれるだろう」

その言葉と共に世界に色が戻った、時間が動きだしたらしい。

「さて、ロザリア嬢ちゃん達の事はまぁ個人的な問題止まりだ、現状最大の問題は魔王女復活への対策だな」

さっきまで疑問の表情を浮かべていたリュドヴィックが、なんとなく納得したような雰囲気になり、話題が変わっても気にしたような様子は無かった。”深層心理に記憶を与えた”という効果が出たのだろうか。


「ロザリア達が獄炎病の治療や治療薬を作った事で因果律は大きく変わったが、それでも隣り合う別世界から離れる程でもない。普通これだけ世界が変わったら安全になるのだがなぁ」

「恐らく御柱の底の魔王女の存在が、向こうの世界とのつながりを断ち切れないでいる原因になっているのだろうな」

アグニラディウスの説明にオラジュフィーユが補足を入れる。闇の魔力の特性が引き寄せ合うという体験からの推論らしい。

「だったらその人を向こうの世界に帰してあげたら……というわけにもいかないんですよね?」

「そういう事だな、激怒したままの魔王女がでてくるだけだ。彼女にとっては1000年前の事ではないのだからな、それに戻したとしても帰ってくる可能性が高い」

ロザリアの思いつきはアグニラディウスに否定される、どうも話のスケールが惑星規模だの1000年単位だのと大きいので感覚が狂う。

「現状維持しかできませんか……。」

「うむ、グランロッシュ王国にはこのままの御柱の維持、及び敵対する勢力の撃退を期待する。状況によっては我らも助力は惜しまん」

アグニラディウスばかりに話させるのは何だとでも思ったのか、アルデフラクタスが話をまとめに入る。つまりはこちらからではどうにもならないという事なのだろう。

ちなみにステラフィスはやけに大人しいと思っていたら、途中から完全に寝ていた。


そこへ、今まで部屋の隅で控えていた”天使”がテーブルに近寄ってきた。

「我らの創造主よりの言伝てだ、『皆それぞれ不満があろうが世界は回って行く。皆それぞれの働きを期待する』だそうだ」

「結構大雑把な指示っスね……」

クレアはこういう時でも物怖じしない、天使の言葉にも素直過ぎる感想を返してしまう。

「支配される方ではないからな。あくまで我々の自由意志に基づいた行動を期待されてのお言葉だ」

「えー、マジっすかー。でもそんな凄い存在ならこの状況をなんとかして欲しい。って思ってしまうんスけどー」

「『不満はあろうが』と言われたのはそういう事だ。もちろんあの方々も何もしていないという事は無いはずだ、我々が認識できないだけでな」

「世界が消えたく無ければ自分達で考えて行動しろ、ですかぁ?」

「そういう事だ、そもそもの始まりが1000年前の向こう側への侵略行為だからな。責任はこちら側の人間にあるというのは1000年経っても変わらん」

クレアの失礼とも取られかねない物言いであっても、気分を害した様子もなく天使は淡々と答える。

過去の人間が引き起こした事は世界レベルで見れば人間全体の責任だ、という事らしい。ロザリア達も返す言葉が無い。


「では折に触れて我の方からも声をかける事があるだろう」

それだけ言うと天使は無言でロザリア達がやって来た扉を開いた、これでお開きという事らしい。

「じゃあねーロザリア嬢ちゃん、まったねー」と、帰っていくロザリア達にアグニラディウスが手を振っているが、あまりお呼ばれしたくないなー、というのがロザリアの素直な感想だった。



「お姉さまー、なんだかとんでもない事になってましたね」

「そうねぇ、知らない間に世界が滅びそうになってる、と言われても」

「私もさすがにこれは陛下に報告するかは悩む所だな。別世界の事が関係しているといわれてもな……。ひとまずマクシミリアン所長には相談してみるが」

ドワーフ王国へ戻る暗い通路の中で愚痴り合うクレアとロザリア、帰ってどう報告したものかと悩むリュドヴィック、三者三様で現状を思い悩むが答えは出ない。

扉を抜けて戻り、ドワーフ王に報告しても似たような反応だった。


「かなり脱線した感はあるが地の神王獣様に対する尽力誠に感謝する。これでワシらも安泰だ……、と言いたい所なんだがなぁ」

「王よ、世界どうのと言われてもワシらにはどうする事もできんな」

「考えても仕方の無い事にしか思えんよなぁ」

いつぞやのように、うーむとドワーフ達が3人腕を組んで悩み合う始末だった。


おっさん達が悩ましげな顔をしているのを見物する趣味も無いので、リュドヴィックが話を切り出す。

「ドワーフ王、この一件我が国のみの問題ではないと思う、後ほど陛下より何らかの協力なりを要請するかもしれないのでどうか頼む」

「まかせろ、と言いたい所ではあるんだなぁ。ワシらでは手に負えんかも知れんぞ。技術力が違いすぎる」

「この”遺跡”の技術力も相当なもののようだが、ドワーフはこれを調べたりしないのか?」

「ある種の”禁忌”扱いなんだよここは。我らの技術力の延長線上にはあるんだろうが飛び越しすぎてるからな」

「だがそうも言っていられないだろう。わかる範囲でも調べてもらえないか?何かの解決策が出てくるかもしれない」

「う~~~む、種族会議にはかけてみるとしよう。あまり期待しないでもらいたいが」

また悩み出すドワーフ王を多少は気遣ったのか、オラジュフィーユが声をかけてきた。

「だがまぁ先程の話からすると状況はそれほど悪い事ばかりではないぞ。ロザリアは思う存分色々とやらかすが良い」

「あの、私を何だと思ってるんですか……?」

オラジュフィーユのよくわからない励ましに、ロザリアは先程自分がこの世界に転生してきた理由を聞かされたのもあってどう答えて良いかよくわからなかった。

ロザリアは遊びで色々やらかしたわけではない、いつだって全力の本気でやらかしているのだ。

『だからみんなしてウチの事を……』


――・――・――・――・――・――・――・――・――・――・――・――・

『ようこそ聖女、ツァラトゥストラです。そろそろ情報が必要かと思いましたので、”方舟”の制御中枢を通して超高速意識通信にて情報をお届けしております』

「色々と私も知らない事が出てきたが、私の存在が完全に情報漏洩してるぞ! どこから情報が漏れた!?」

『私にもそのログは残っておりません。私はあくまで管理システムですのでそれ以上の情報は提供できかねます』

「わかった、もうそれは聞かない。率直に言うと私は何をすれば良い?」

『選択肢はいくつも残されていません。このまま何もせず事を荒立てなければ数年は保ちます。もしくはロザリア・ローゼンフェルドの活動を活発化させ、半年以内に問題を解決するかです』

「かなりの賭けになる気がするんだけど……」

『ですが、あなたもロザリアもその為にこの世に産み出されたのです。確度は落ちますが危機を回避する未来予測の確率はゼロではありません』

「ゼロではないという事は、現状かなりの確率で世界が崩壊か消滅するという事だな?」

『答えを聞かないほうが良いという演算結果ですのでお答えしません』

「……一度”外なる神”に話を聞きたい。会わせてくれ」

『確約はできませんが申請させていただきます』

――・――・――・――・――・――・――・――・――・――・――・――・


ドワーフ王国から魔法学園の寮に戻る馬車の中ではロザリア達の会話は少ない。

聞かされた事の衝撃が大きすぎたので、ドワーフ王国見物もあまり気が乗らず、動く歩道を一周してそこで帰る事にしたのだ。

リュドヴィックは魔法研究所の所長に相談するとの事で、一足先に戻っていた。

「クレア様は良く眠ってらっしゃいますね。で、お嬢様はどうされるのですか?」

「どう、って……、何も?」

「何も……、ですか?」

「だって、私はただの侯爵令嬢でただの魔法学園の生徒よ?世界をどうこうしろ、と言われても手に余るわよ」

「はぁ、意外です。お嬢様の性格なら何が何でも世界を救わないと!となるかと思ったのですが」

「眼の前で人が死にそうならいくらでも頑張るんだけどさー、世界が消えるとか言われてもねぇ」

「いえ、多少は焦った方が良いのでは……?」

「どんなに健康な人だって死ぬ時は死ぬわよ? 私の前世だって今と変わらない歳だったのに、事故であっという間だったもの」

「はあ……」


『まず状況が意味不過ぎるんですけどー。んな事気にするより今日一日を楽しく生きる方がマジ大事!』

世界が消えるとか何とか言われても、ロザリアはロザリアだった。


次回、新章突入、第15章「悪役令嬢の誕生日と王太子の誕生日プレゼント」

第195話「私は性格的には夏休みの宿題を最終日に全力を尽くすタイプだ」「胸を張って言わないで下さい」

読んでいただいてありがとうございました。

多数のブックマークをありがとうございます。


基本的に月水金、夜の5時~6時頃で更新いたします。

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作中のギャル語・若者語は2015~2018年頃を想定しておりますが、

違和感などありましたらご指摘をどうぞお願いいたします。

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