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第178話「外なる神々」


「お腹すいた……。あとフェリクス先生も無事かなぁ」

クレアは目覚めてからもう半日ほど絶賛放置中だった。

これが本当に聖女の扱いか?と疑問を持たざるを得ない。

特にやる事も無く暇だったので寝ていたのだが、空腹でそれも限界だった。

いやその状況で寝るのもどうかという話ではあるが。


「あーもう、椅子に縛り付けられてるから身動き取れないし、身体痛くなってきた……」

何度も声を出して人を呼んでも誰も来ず、

それなら死にそうだー、と苦しがってみても同じだった。つらい。


「それにしても教会かぁ、ゲームでは全く関りが無かったよね?

 だいたいが学校と魔法学園の話だったし。

 教会なんてセーブとか死んだ人を生き返らせるくらいの役割だったなぁ」

と、思い出に浸って現実逃避気味にぼやく。

突然、ガチャガチャと戸が開く音がして数名が入ってきた。

皆聖職者の格好をしているが着ているものにシンボルマークは相変わらず無かった。


「聖女様、お待たせいたしました。

 少々周辺が騒がしくなってきましたので、儀式を始めさせていただきたく思います」

「いや思わなくていいです家に返して下さい」

クレアは縛られている椅子ごと台車に載せられ、ゴロゴロと運ばれていった。なんだこの扱い。

「いやだから、人の話を聞けー!」


途中の階段も大勢の人数で椅子ごと担ぎ上げられたのだが、

皆そんなに体力が無いらしくプルプル震えながら担ぐのはやめて欲しい。

危ないから、もういっそ拘束を外してくれ、文句言わずについていくから、マジ危ないから、

と言っても聞き入れられなかった。

あまりぎゃーぎゃーさけんで口を塞がれても嫌なので黙っていたが、

大きな扉の前にたどり着いた時はさすがのクレアもちょっと声が出た。


「(やだなー、聖女とか言ってるけど扱いがおかしいし、イケニエでもされるんじゃないかなー)」

ギギギと重々しい音と共に扉が開くと、

その向こうは教会の聖堂のようになっており、左右座席に大勢が座っていた。

そして、祭壇に祀られているシンボル像を見た瞬間、クレアの目が死んだ。

「だめだこいつら、本格的にヤバい」



王城でもクレア達の捜索が進み、仕立て屋にリュドヴィックの私兵が踏み込む事態となった。

店内にいたクレアを接客したとされる2人は難なく捕らえられ、

他の店員達からも事情を聞きだしている所である。

リュドヴィックは陣頭指揮を取りながら報告を聞いていた。

「店員の拘束は!」

「ははっ! 既に終わっております!

既に尋問を開始しており、いくつかの情報も聞き出しましたが、その……」

「何だ? 良いから報告してくれ」

「はっ、彼らは教会でも異端派と呼ばれる者たちで、

 聖典中のとある天使を聖女と同一視する者達のようです」

「別にそれは普通の事なのではないのか?」

教会では主神を崇めてはいるが姿を形にするのは畏れ多いと、

一般的には祭壇に両手と羽根を広げた天使像を祀っている。


「いえ、彼らが崇めるのは真に天使を遣わした存在、”外なる神々”のようなのです。

 それは教会が崇める主神と真っ向から対立するものなので、

 教会内部でも異端派として扱われているとか」

「何だ?その、”外なる神々”というのは?」

「要領を得ません。なんでもこの世界の外の神々だとか」

「よくわからんな、この世界には既に神々がおわすというのに、

外から持ってきて崇める必要がどこにある?」

この世界には神が実在しており、

聖職者は信仰により神聖魔法という通常の系統とは異なる魔法を使える。

過去には神罰が下ったとされる事柄も多数確認されていた。


「はぁ、実行犯の話をまともに聞いていると、

 こちらまで毒されそうなので深く聞き入るわけにもいかず……。

 それについて教会の主流派の意見も聞いた方が良いでしょうか?」

「まぁいい、とりあえず置いておいても良いだろう、それは教会内部の問題だ」

「ははっ、ですが問題はここからです。埋葬許可証について教会に問いただしたところ、

 発行されたものは本物で、虚偽で出せるのはかなり位の高い聖職者ですので、

 おそらくはそれに連なるかなりの人数が異端派となっている可能性があるとの事です」



「おお、偉大なる”外なる神々”の一柱よ、貴方様の肉体をお持ちいたしました。」

クレアは祭壇の上で皆に背を向けて教会のシンボルと向かい合わされていた。

背後から信者や聖職者達の祈りの声やパイプオルガンのような曲が鳴り響き、無駄に荘厳だった。

クレアが向かい合っているのは本来なら教会のシンボルである羽と手を広げた天使像であったはずが、この場のは違った。

どう見ても深海の生物のような異形が無理に人のように立ち上がった像だったからだ。

目がいくつもあり、身体からは触手やコウモリのような羽が何本も生えている。

「(どう見てもこれ邪神とかの類じゃないっスか!なんでこんなのわざわざ崇めるのー!?)」

やがて、祈りの言葉が終わったのか曲も詠唱の声も止まり、静まり返った。


「さて、数百年に一度の約束の時は来た、今こそ外なる神の降誕の時!」

突如ステンドグラスが開き、空と太陽が見えた。だがその太陽は少しずつ欠け始めている。

「あれって、日食ってやつ?うわ凄い偶然」

教会内にはどよめきが起こるが、クレアにとっては前世の知識で特に何も感じなかった。

すると、シンボル像が動かされたのか、クレアの顔に異形の邪天使の影が落ちる。


「え、嘘、これって私に乗り移るとかそんな感じ?」

「仰せの通りでございます聖女様。貴方様は本来の姿に戻っていただきます」

「やめてマジやめてそんなん嫌」

「さぁ。儀式の最終段階だ!天使様を!聖女を讃えよ!」


どういう仕掛けなのか禍々しい天使像の目が光り始め、クレアを照らした

「うわあああああああ!」


次回、第179話「ようこそ聖女」

読んでいただいてありがとうございました。

また、たくさんのブックマークと評価をありがとうございます。


基本的に月水金、夜の5時~6時頃で更新いたします。

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作中のギャル語・若者語は2015~2018年頃を想定しておりますが、

違和感などありましたらご指摘をどうぞお願いいたします。

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