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第150話「これで行こー!なんか変なスイッチ入ったー!マジ萌え~! アゲ~⤴!」


魔学祭(マギカ・スクフェス)での出し物はすぐに決まるものでもなく、各自で考えてくる事になった。

ロザリアやクレアはこれを機会にクラスメイトと交流を持つべく、喫茶室でアデルがお茶を入れるのを待ちながらシモン、カティア、エリナの3人と考えていた。

「学校でお祭りっていうのは面白いな」

「面白いで済んだら良いんだけど、変な事したら成績にまで影響するのよ?」

「個人の成績だけじゃダメってのが、いかにもお国の作った学校だなぁ」

平民出身ゆえに学校に通うのは魔法学園が始めてなシモン達は、村の祭りしか参加した事が無く、シモンは学校で催される祭りというのを面白がっていたが、カティア・エリナにすれば授業の延長という事もあり面白いだけではすまなかった。


「皆様、お茶が入りました。どうぞ」

そんな中ロザリア達の前に湯気の立つカップが置かれる。アデルが入れた紅茶だ。

「うっま!何これ!」「お砂糖入ってないよねこれ?」「なんだか甘くて美味しい……」

「お褒めいただきありがとうございます」

シモン達はアデルの入れた紅茶を初めて飲んで感動していた。

皆が一口飲んで驚きの声を上げる中、アデルは優雅に微笑んで頭を下げている。


「アデルの入れてくれるお茶は最高だものねぇ」

「ロザリア様!むしろこれを魔学祭に出したら良いんじゃないですか?

 この人に教えてもらって」

「ええー? 喫茶店? でもそれだけだと普通過ぎませんか?」

カティアが提案した案にクレアが意見を返すが、カティアの案には続きがあった。

「だから、ロザリア様が入れるんですよ、侍女の姿で」

「え? 私?」

突然自分に話を振られて驚くロザリアだがその表情はまんざらでもない。

普通の貴族であれば身分差からお仕着せ服を着るなんてとんでもないという所ではあるが、

つい先日も王城でメイドとしてお仕着せ服を着ていたり、前世ではコスプレとして着た事もあるからだ。


「でもカティアー、私達は別にいいけどー、他の貴族の生徒からとんでもない反対が出そうなんだけど」

「お嬢様は少々、いえ、かなり変わった方なので問題は無いでしょうが、普通の生徒様は嫌がるでしょうね」

エリナが疑問を口にすると、ロザリアの後ろに控えるアデルが即座に同意した。

『おいアデルさんよ、わざわざ”かなり”と言い直すのはどういう事かなぁ!?』


「たしかに、貴族の人がお仕着せ服着ると主従逆転だもんねぇ。何か工夫要るかも」

「お嬢様が率先してやるのであれば、文句は言い難いでしょうが……」

問題点に気づいたカティアは再度考え始める。補足するようにアデルが意見するが、言いよどむように強制してしまっては後々問題があるだろう。


その時、ロザリアの脳内の変なスイッチが入った――――。


「ねぇ(ひらめ)いたんだけど、主従逆転というならアデルみたいな侍女の子も参加してもらいましょうよ」

「え”」

ロザリアの発言にアデルが珍しく声を上げた。ロザリアは更に提案を続ける。

「主従逆転カフェというのはどうかしら? 貴族の生徒が侍女になって、侍女の子は貴族になりきるの」

「「「「……」」」」

ロザリア以外の4人は思わず黙ってしまう。ロザリアは止まらない。

「ついでに性別も逆転したらどうかしら? 女性は男装、男性は女装の喫茶で主従性別逆転カフェ」

「あ”?」

「いや何言ってんスかお姉さま!?」

アデルが今まで聞いた事の無いような声を出している。クレアもさすがに止めようとロザリアの方に身を乗り出したが、

そのクレアの顎をロザリアがつまみ、くい、と持ち上げながら自分の顔に引き寄せる。


「こらこらクレア君?お兄さまだろ?」

「あっ、心の中の変な扉が開きかけた。行きましょうお兄さま! それで!」

「お気を確かにクレア様!?

 お……、お嬢様、悪い事は言いません、お考え直し下さい」

一瞬にして意見を変えたクレア。ロザリアに完全に心を掴まれてしまったようだ。

アデルは反論しようとロザリアに詰め寄るが今のロザリアはそんな事では止まらない。


「まぁまぁアデル君、私だってそんな無計画では無いよ。

 貴族令息令嬢達の反対意見が出ないよう()考えた。

 猫カフェを混ぜようじゃないか。主従逆転性別反転猫カフェだ。

 完璧だろう?誰だって猫の前には平等にしもべだ」


胸焼けがしそうな全部乗せの計画が出てきてしまった。

しかも今考えたとまで自分で言ってしまった。完全にその場のノリだ。


「貴族の生徒は主従が逆転して、令嬢は従者に。侍女の子は令息に、

 令息は侍女に、従者は令嬢となるわけだ。

 平民の子はそれぞれ性別逆転して令息と令嬢になって周囲には猫。

 あくまでエレガントにね。お猫様に失礼の無いように」


「いや、それはちょっと、さすがに……」

「えっえっ、あの、あの、あの」

「猫なんてどこから連れてくるんですか?」

「私が経営している猫カフェがある。そこから人に慣れた子を連れてくるよ」

シモン達3人も完全にロザリアのペースに飲まれてしまっていた。

もうこうなるとロザリアの暴走は誰にも止められない、

父親が宰相なだけに無駄に計画力があるだけにガンガンと構想が固まっていく。


「貴族は従者・侍女達の仕事の大変さ、従者・侍女達は普段の働きが報われ、

 平民の生徒達には貴族のマナーを学ぶ機会が訪れる完璧な計画だと思うよ?」

「いえ性別逆転してマナー覚えてどうすんですかロザリア様……」

「シモン君、これはあくまでも文化祭なんだ。楽しまなければ損というものさ。

 さて、となると執事やメイドの衣装も必要だなぁ、いやぁ用意が大変だ」

「やばい、お姉さまの変なスイッチが入った。誰か止めて」

「クレア様、もう(あきら)めたほうがよろしいかと」

「常々思ってますけどアデルさん(あきら)め良すぎません!?」



次の日の会議で、ロザリアが宰相の娘というポテンシャルを大いに発揮し、

主従性別逆転猫カフェが決まってしまった。何しろロザリアの服装が決定打だった。

背の高い彼女の男装は物凄く絵になっており、髪をひとまとめにして黒い執事風の服をまとい、側には真っ白な貴族服に身を包んだアデルを従えていたからだ。

肌の色が濃いアデルがそれを着ると異国情緒あふれる雰囲気も相まって何故か気品を感じさせた。

「お、お嬢様、私はこのような場に出る立場では……」

「おやおや()()()坊ちゃま、今の私はお嬢様ではないよ?

 私の事は執事のロゼと呼んで欲しい、そうお願いしたはずだが?

 それに自分の事は”僕”と呼ばないと」

「うう……」

軽くじゃれあうだけで怪しげな色香が流れてしまう。

既に猫カフェではなく、大人向けの別の何かのお店の実演だ。


クラスの女子生徒達からは声にならない悲鳴が上がる一方、男子生徒達は顔を赤くして目を逸らすばかりである。

尚、部屋の片隅では教師と委員長と副委員長が「どうしてこんな事に……」と頭を抱えていた。

『うんうん、クラスの皆の反応は上々みたいだねぇ、善哉善哉(よきかなよきかな)

とロザリアはクラス代表補佐としてご満悦だったが、

アデルは『おのれらか、こんな余計な人選をしたのは』と死んだ眼で教師たちを睨みつけていた。


ロザリアが満足そうに微笑んで「では今日の会議は終了」と言い出した時、アデルは慌ててロザリアの腕を掴んだ。

「お待ちくださいお嬢様……、待つんだロゼ、まだ終わってません」

「ん? アドル、どうかしたの?」

「どうかしたの? ではありません! 今決めた事はまだ不十分です。

 このクラスは喫茶店をするのでしょう?まだ出す料理は何かを決めていません!

 そもそも椅子やテーブルは? 内装はどうするのですか?

 看板は? メニュー表は? お客様への対応手順は?

 お金の管理は? 衣装はどうするのか?

 そういう諸々の事が何も話し合われていないではないですか!」

アデルの理路整然とした説明で思わず教室に「おおーっ」という感心した声が上がった。アデルもアデルでロザリアに言われたように、アドル坊ちゃまとしてなりきろうとしていた、真面目か。


「ロゼは確かに計画を立てたけれど実行できなければ机上の空論です。もう少し後の事を考えて下さい」

「ま、まぁ、確かにアドルの言うとおりだね。もう少し具体的に決めていこうか」

3つ程も年下のアデルにまくしたてられ、苦笑を交えながらロザリアが答える。

その姿に今までなんとなくロザリアに対して距離感を持っていたクラスメイト達が少しだけ評価を改めた。


アデルも嫌なら嫌で路線変更するように仕向ければいいものを、

生真面目な性格ゆえに一つ一つ黒板に書き留めながらきっちりと計画をまとめていく。

「はい、次に食材の確保ですね、これに関して僕の方で手配可能です。調理器具も問題ありません。後ほど必要な金額をまとめてクラス費内に収まるかご確認下さい」

「あ、ありがとうアドル、貴方は本当に頼りになるね」

「お褒めにあずかり光栄です。ですが僕では無理な物も多々ありますので、それは箇条書きした上で、手分けして手配してはいかがでしょうか」

その後も細かい打ち合わせを続け、結局この日の会議は終わりを迎えた。


「それでは、僕は色々と準備があるので戻らせていただきます」

アデルが着ている貴族服に合わせて優雅に子息風の礼をすると、

クラスの生徒達からはほうっ溜息が漏れた。

アデルが退室して残されたロザリアはふうっとため息をつく。

「さて、他にも意見があるかな?」

ロザリアが尋ねると、おずおずとシモンが手を挙げた。


「あのぉ、すみません、ロザリア様。一ついいですか?」

「ん? 何でも言ってみたまえ」

「その口調いつまで続けるんですか? いやそうではなくて、俺たちの衣装はどうしたら良いかな、って。特にドレスなんかどうしようも無いし。」

「ああ、それは心配しなくて良いよ、私が用意しよう。私のお古を」

「却下で! なんとなくそんな予感はしてましたけど生々し過ぎます! そんなの着れませんよ!」

「はいはい、古着屋に心当たりあるからそちらで手配しておくよ」


ロザリアはやれやれと肩をすくめるが、その仕草も今の男装では妙に絵になっており、クラス全体から注目されているのに当のロザリアは気づいていない。


次回、第151話「さぁー!はりきって準備するわよー!!」


……え?ロザリアの猫耳メイド服姿?そんな事言いましたっけ?

読んでいただいてありがとうございました。

また、評価やブクマをありがとうございます。


基本的に月水金、夜の5時~6時頃で更新いたします。

いいね・感想や、ブクマ・評価などの

リアクションを取っていただけますと励みになります。

作中のギャル語・若者語は2015~2018年頃を想定しておりますが、

違和感などありましたらご指摘をどうぞお願いいたします。

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