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第14話「どうしてこうなったの、誰か教えて欲しいんですけどー!?」

ふと意識を取り戻すと、ロザリアはリュドヴィックにエスコートされつつ庭園を歩いていた。どうやら意識を失いつつもきちんと先ほどのやり直しをしていたようだ。


ローゼンフェルド侯爵家の庭園は、侯爵家自身が薔薇の栽培を国から任されているだけあり、国内最高の薔薇の数を誇り、無数と言っていい数の薔薇が咲き乱れていた。


「これは咲き始めだけれど、見事な薔薇だね、色も鮮やかだ」

「そ、そそそそそうですね、これは今年の新作ですののののの、花びら先端に向けて、色が薄くなっていくのががが特徴でしててててて」

「うん、そ、とかの、が多いけど、さすがにロゼはローゼンフェルド家の令嬢らしく薔薇に詳しいんだね、どれもどういう品種なのかちゃんと把握してる、素晴らしいね」


どうやら混乱しつつも、受け答えは一応ちゃんとできていたようだ、足元がふわふわした感じのまま、ロザリアは侯爵令嬢らしく意識をできるだけしっかり保ってリュドヴィックと共に庭園を歩いて行く。


「壁一面に、見事な薔薇だね、どれ一つとして花がしおれていないどころか、葉の一枚一枚までが鮮やかな緑色だ」

「はい、こ、こちらはしょ、職人たちが毎日丹精……込めて手入れをしております……ので、」

「ロゼは職人たちの仕事も良く見てるんだね、どうしたんだいロゼ? きちんと私の目を見て欲しいな」


リュドヴィックの顔を直接見ないようにして必死で意識を保とうとしているロザリアは、リュドヴィックに(あご)先を指先でつままれ、くいっと顔を持上げられ、やや強引にリュドヴィックと目線を合わされてしまう。


『ヤバっ❤ 超美形がリアルに薔薇の花々を背負って見つめてくるってマジエモい❤ 超ゲームのスチル画像とか少女漫画の絵そのもの❤ ダメ! マジで又意識トぶ❤』

そして、またもやロザリアは飛かける意識を必死に保とうとしていた。

なお、”エモい”とは、”エモーショナル”から来てるとされており、”感動した”とか”心を動かされた”の意味である。



『待って待って、この庭園ってこんなキラキラしてたかしら? ほぼ薔薇のはずなのに、こんないろんな花々が良い匂いさせてたっけ? なんで天から光の粒が降り注いでるの? 風も無いのにどうして殿下の周りに花びらが舞ってるの? 

 ここにいるはずのない天馬(ペガサス)とか一角獣(ユニコーン)が突然やってきて寄り添ってきた……、っていうか空に神の使いの神獣とか天使が見えるんですけどー!? ぎゃー! 雲の切れ間から神様的なのが登場してきたー!』

訂正、ロザリアは、確実に錯乱していた。



「おや、良い反応だね? もしかして私に興味を示してくれてるのかな?」

「こ、ここここの状況で興味を持つなという方が無理ですですですすっわわわわ」


ロザリアは必死で身体を離そうとするが、リュドヴィックはがっちりとロザリアの身体をホールドしたまま歩いて行く。


「で、ですから、ち、ちちちか近ちか」

「ん?」


ルドヴィックは隣を歩くロザリアの髪を一房すくい取り、見せつけるように、その髪先に口づけてみせる。

『ぎゃ――! なんて事するのこの人! って言うか! 髪に! 髪に唇の感覚を感じる! 髪って神経通ってたかな!? 通ってた気がする! 前世の学校で習った!覚えてないけど!』


「あ・・・う、え…」

「私に興味を持ってくれるのは嬉しいけれど、ちょっと会話が成り立たないのは困るね。では私に慣れてもらうよう、もう少し2人で歩こうか、ロゼ」

「は、は、はいいいいい!?」



はたから見ると、恋人同士がいちゃついてるようにしか見えない光景を、遠くからクリストフとアデルが苦笑交じりに生暖かい目で見物していた。

また、さらに後ろの方で屋敷の侍女たちも声にならない歓声を上げつつ見物していた。


「いやぁあの殿下が女性にあんなに興味を示すとはねぇ、焚きつけてみるものだ」

「そんなに意外なのですか? クリストフ様、王太子様はなかなか慣れていらっしゃるように思うのですが」

主に対して色々思う所のある者どうし、この2人は即意気投合していた。


「いや?多分頭の中は物凄く色々考えてわりと無理してると思うよ? ああ見えて殿下は女性慣れしていないし人間不信のケがあってね、誰も寄せ付けず、『氷の貴公子』なんて呼ばれちゃっててね。」

「ああ、似合ってますね、それ」

「けど婚約者に対していつまでもそんな事は言っていられないだろう? だからフェリクスの紹介がてら、お二人を会わせる事にしたんだ」


「実を言うと殿下は今までロザリア嬢に興味を示してくれなくてね、結婚してもまぁ仮面夫婦になるだろう、と自分で言うくらいでさ、でもある日突然ロザリア嬢が変わった、という噂を聞いたんだ」

「ああ、まぁ、色々ありまして」


アデルは自分がその当事者だったので状況は良く知ってはいたが、主の事をペラペラ話すわけにもいかないので、なんとなくごまかした。


「突然自分の今までを悔やみはじめて、使用人に誠実に接するようになった、っていうんだね。最初は殿下も気まぐれだろう、と聞き流していたんだけど、1月経ってもどうも変わる様子が無い、

これは一度見に行かないと、という時に、ちょうどフェリクスが帰国したから、彼を口実に訪れたわけさ」


突然王太子が来たのはそういう事だったのか、とアデルが納得していると、クリストフが興味深そうに聞いてくる。


「そういえば、さっき君はリュドヴィック様と話をしてた時、一瞬で身を引いたよね?あれはどうして?」

「いえ、あの方の視線が怖くて、敵対するのは得策ではないと判断しただけです。お嬢様を見る目が、どんなに柔らかで熱のこもった目線であっても、目の奥底が全く笑っておらず、獲物を見る目でした」

「お、さすが良く人を見てるねぇ、ああ見えて執着心が物凄くてね、一旦気に入った相手にはとことん面倒臭い人なんだよ」

「まぁお嬢様も、親しい人とは距離感が近すぎる所がありますので、お似合いでしょう」


二人や屋敷の皆が生暖かく見守る中、ロザリアとリュドヴィックは2人だけの時間を、主にリュドヴィックが一方的に楽しんでいた。


次回 第15話「幼き日の出会いと別れ、想いは胸の奥に閉じ込めて」

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