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第11話「王太子リュドヴィックがあらわれた!」(挿絵)

王家の紋章が側面に描かれている豪華な馬車がローゼンフェルド家の門を過ぎ、アプローチを経て正面玄関前に止まった。

婚約者の王太子を始めて迎えるとあって、玄関ホールで迎える屋敷の面々の顔にも緊張の色が見える。

馬車の扉が開き、お付きの者達があわただしく降車の準備を始める。


「全員、礼!」


屋敷の主であるロザリアの父、マティアスの号令により、ローゼンフェルド家の者は一斉に礼の姿勢を取る。

いくらここが国の宰相でもあるローゼンフェルド侯爵家の屋敷とはいえ、王族を家に迎える際は頭を下げるのが礼儀となっていた。


『貴族ってマジ色々面倒よねー、さっさと終わらせたいわー、王子様なんて、絶対上から目線でエラソーに、こっちディスって来るようなイメージしかないんですけどー?』


本来であれば婚約者を迎える立場なので、ロザリアが一番緊張するはずなのだが、お(いえ)の雰囲気の建て直しから続く一連の事柄で、色々ありすぎて正直疲れていたロザリアは、既にちょっと面倒臭くなってきていた。

そしてそんなロザリアの王子様に対するイメージは自身も含む貴族令嬢などの印象からか、夢を見るどころか、大分歪んでいた。


重々しい音とともに正面扉が開き、中に誰かが入ってくる気配がする。足音と共にロザリアの視界に男性の足が視界に入ってきた、これが王太子の足だろうか。


「ああ堅苦しい礼はいいよ、突然おしかけて済まなかったね、ローゼンフェルド侯爵、皆も頭を上げてくれ」


玄関ホール内によく通る声が聞こえてきた、その声色には傲慢(ごうまん)な所は感じられず、ロザリアはちょっと安心した、言われた通り、頭を上げて相手に向き直る。



その瞬間、ロザリアは恋に落ちた。


『マ!? は❤ え!? ヤバ❤ 何この美形!? 天使!? ちょ! マジ無理無理無理無理無理❤ しんどい! こんなの目の前で見続けたら死ぬ死ぬ死ぬ! いや何この格好良い生き物❤ 欲しい❤ お持ち帰りしてずっと見物していたい!』


ロザリアは生まれた時から婚約者のいる侯爵令嬢という事で、同年代の男性との交流が無く、前世の『のばら』もギャルとはいえ普段は武術の稽古と、施設では子供たちの相手に忙殺されていたので、

要は男性に全く免疫が無かったのだ。それと、持ち帰ったらこの世界でも犯罪だからね?


挿絵(By みてみん)


そこには堂々たる美青年がいた、ロザリアより背が高く、すらりとした体躯は貧弱さを感じさせず、次期国王にふさわしい風格があった。

表情はやや怜悧(れいり)であるが、まだ鼻すじに幼さの残る顔は、少年から青年へと変わりつつある危うい美をかもしだし、短めの銀髪と涼やかな青い目がさらに神秘性を増していた。

服装は飾りの少ない簡素なものではあったが、逆にそれがまた王太子の雰囲気を人外じみた美形に印象付けており、その場の誰もがその美貌に見とれた。


リュドヴィック・グランロッシュ、グランロッシュ王国第一王子であり、17歳の王太子である。


「この家に王太子殿下をお迎えする栄誉にあずかれました事を、深く感謝いたします。この家の主、マティアス・ローゼンフェルドでございます」

「その妻、フェリシアでございます、本日はこのように車椅子で誠に失礼いたします」


「うん、リュドヴィック・グランロッシュだ、宰相殿は真面目だねぇ、堅苦しい礼はいいよ、って言ったのに。そして奥方殿、病の床にあるというのに、誠に申し訳なく思う。なるだけ早く退散するから、私の方こそ許して欲しい」


父が頭を下げ、母も車椅子に座ったまま、略式で淑女の礼(カーテシー)をするのに対し、王太子は父に対して軽く頭を下げ、母に対しては、わざわざひざまずき、母と目線を合わせた上で、そっと手を取り、その手に口づけてみせた。


「いやいや殿下、やはり格式というものは、形式を守る事でですな……」「まぁ殿下、私の方はむしろ殿下にお会いできて、かえって体調が良く……」「いやだから固いって宰相殿……奥方殿にそういってもらえると安心……」


などと父母と王太子が雑談をしている間、ロザリアは自分自身がすべき王太子への礼も忘れ、


『いやいやいやいや! 前世のウチより年下なのに! 何このイケメン!? 行動までイケメンだし!? イメージと全然違うんですけど!? この婚約ピってこの国でガチ最高オブ最高なのでは!? ウチ前世でどんな徳積んだの!? 前世はただの女子高生だったんですけど!?』

混乱しまくっていた。



「ロザリア……! ロザリア! 礼だ、礼!」「あらあらロザリア、あなたも礼をしないと、殿下に失礼ですよ」

さすがに気づいた父母がロザリアに礼をうながす。


「む、娘のロザリアでございます、本日は王太子殿下もご機嫌うるわしゅく…」


噛んだ。浮つく心を抑え、あわてて淑女の礼(カーテシー)と共に挨拶したが、噛んだ。場に気まずい雰囲気が流れ、ロザリアはいたたまれず下を向いてしまう。


「久しぶりだね、婚約者殿、私も会えて嬉しいよ」

意に介さない感じの言葉にハッと王太子の目を見るが、その瞬間ロザリアは気づいてしまう、


あ、この人(ウチ)の事を何とも思ってない。

前世でよく見た事のある目だ、こっちを値踏みするだけで、親愛も何も感じてない感情のこもらない目。


次回 第12話「撃沈……、かーらーのー、昇天っ!」①

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