三人でショッピング!
曇天の予感……?
8話です
休日の土曜日、それは学校でのあの殺伐とした空気とは違って、家で平穏な暮らしができる日……のはずだった。しかし今俺は市内に立っている鯛の像の前で彼女たちを待っている。想定外の所用に、ただ呆然と立ち尽くしていた。
「どうしてこうなった……?」
それは昨日のあの話から始まる。
◇◇◇
俺は休み時間に二人の友人とアイドルの話をしていたら、友美から来て声がかかる。
「涼君、涼君っ。男達がこぞって何の話してるの?」
「ん? アイドルの話だよ」
「へー涼君、アイドル好きなんだ」
「いや、好きなのは一希だよ。俺はあくまで聞き役だよ」
「ふーん、そうなんだ~。で、涼君の持ってるこのグラビアは?」
「あぁ、これは一希が持ってきた岩倉さとみの写真集だよ」
「へー。古川君、こういう娘が好みなの?」
「いや、これは涼の好みに合わせて持ってきた本だよ」
「あ、バカ」
「! ふ~ん、涼君のね~」
そう言いながら彼女はニヤニヤし始める。そして俺が持っている本をひょいと素早く取る。
「ちょっと見せてっ」
「あ、こら破れるっ」
俺がそう慌てているのをよそに、彼女はそれをパラパラと見始める。
「……グラビアでも、普通に服着てる方なのね」
「当たり前だ。さとみたんが際どい格好なぞしない!」
「“たん”……ねぇ」
水着じゃないのが期待はずれだったのか、友美はつまらなさそうにページをめくる。そうしていると突然あっと声を上げる。
「なにこの服チョー可愛い!」
「え?」
「これこれ、見て見てっ! めっちゃこれ可愛いんだけど、どう?」
「え? いやまあ、確かに可愛いけど……」
「チョー可愛んだけど、やばーい!」
彼女はテンション高くはしゃいで、目をキラキラと輝かす。
「服ね~。そう言えば最近買ってなかったわね。明日買いにでも行こうかしら?」
「おー、それは良いんじゃないか? 行って来い、行って来い」
「あっ! 涼君も一緒に服買いに行く?」
「は? 何でだよやだよ!」
「どうせ涼君のことだからダサい服しか持ってなさそうだし」
「は、失礼なやつだ。俺にはな~、ちゃーんとした服が一着は一応あるんだぞ?」
「ふーん、けど一着しかないんでしょ? それじゃあ全然足りないわ。だから明日行こうよ」
「えー、やだよー」
「なに二人で楽しそうに話しているのかしら?」
「と、智華っ……!」
どこから聞きつけたのか、突然夜叉のような冷たい目を向ける俺の好きピが現れた。
「いや、これは違くて~(アセアセ)」
「あら智華!」
「何の話をしているの?」
「うん、涼君と明日一緒に服を買いに行こうと思って」
「……そう。けど友美それは止めた方が良いわね」
「え?」
「彼の服のセンスは壊滅的よ。一緒に行っても良いことないわよ」
「……」
「………そう。じゃあ三人で行きましょうか」
「へ?」
「そうね。それが妥協案ってところね」
「へ? いや待て待てっ、なに話が勝手に進んで……」
「行くわよね?」
「……はい」
二人同時に発した最後の威圧的な言葉に、いとも簡単に屈してしまった。
「……と、その前に」
「……ん?」
「学校にこういう本は禁止だから没収よ」
えーーー!?? 智華そんな殺生な~~~!!
◇◇◇
「……はあ」
俺は昨日のことを回想しながらため息をつく。そうこうして待っていると、二人が同時にやってきた。
「お待たせ」
「ごめ~ん、少し遅れたわ~」
「お、おう……」
俺はつい二人の服装を見て戸惑ってしまった。とてもおしゃれな格好をしていたからだ。
智華はひらひらしたのがたくさん着いた白の膝丈までのワンピース、友美は白黒と交互の線が入ったTシャツに、ショートパンツだった。
「どうかした?」
「いや……、別に」
「あれれー? 私達の服見て何か思うところがあったのかな~?♪♪」
「……」
くそ、図星を言われて腹が立つ……ん?
「智華その格好……どこかで見たことあるような~……」
「! まさか、そんなことないわっ。気のせいよ!」
「?」
俺が不思議そうにじろじろ見ていると、なんか恥ずかしそうな素振りをした。相変わらず友美はニヤニヤしているし…。
「涼君にしてはその服のセンスは悪くないわねっ」
「ふ、そうだろー。俺の自慢の一着だ」
「その格好で好きな子に告白したら、上手くいくんじゃないの?w」
「黙れ」
「……それより涼馬、この格好で来たのね」
「え……あぁ、俺の唯一の一張羅だからな」
「そ……」
「?」
「それじゃあ買い物に行こうぜ」
「そうね……」
「うん、行こ行こ~♪」
こうして俺達はこの像からほど近いショッピングモールへと向かったのであった。
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