俺、軟禁される
どうなる俺……?
7話です
廊下から強引に引きずられた俺はそのまま暗めのある一室の隅に縛られた。
「なんだ、なんだ!? 何がどうなってるんだ!? さっさとヒモを外せ!!」
「ふふふっ……」
この部屋の奥から不敵に笑う男の声が聞こえ、段々と近づいてくる。眼鏡をかけた三人の男子だった。見知らぬ顔だったが制服を着ているから、どうやらこの学校の生徒だろう。真ん中は老け顔の中肉中背、左が服がはち切れそうなほどの太っちょ、右が細々の体型をした出っ歯だった。
「な、何者だお前らっ!? さっさとここから出せっ!!」
「そう簡単には出せんな~。なんたって今から貴様を懲らしめんといかんからなー」
「な、なに……、懲らしめる……?」
「貴様は様々な悪行を智華さんに行っていたからなー。今までは黙って見過ごしていたが、ついにこの俺は堪忍袋の緒が切れた」
「なに……? 智華に…? お前らは智華の何なんだ?」
まず真ん中の男が言って、次に左のデブが、そして最後に右のガリガリが言う。
「俺達は智華さんを陰から見守る『智華さんファンクラブ』のメンバーの代表だ!」
「お、俺は副隊長の黒田光男……」
「僕が参事の山縣安男で、そしてこちらにおわすのがクラブ隊長の伊藤静男様だ!」
「……」
噂には聞いていたが、本当にあいつのファンクラブなるものがあったのか……。しかしこいつらから悪行とは言われても、いや、まあ……思い当たる節がないわけではないが、しかしここまでされる筋合いは全くない。俺は怒りながらこいつらに言った。
「ともかくこんなふざけたことせずに、さっさと俺に縛り付けたヒモを外さんか!」
「何が“ともかく”だ! このアスタキサンチンが!!」
「………ん??」
「ごほん……。とにかくだっ、俺は貴様を許すわけにはいかんのだ!」
「だから何でなんだよ!?」
「良いか!? 貴様はメンバー達の逆鱗に触れたのだっ!」
「なに……?」
「いつも余計なことはしていたが、幼馴染として智華さんと接していたから関与しなかったものの、最近では下心を持って接しておるではないか! それに智華さんもこんな奴に優しく話しかけているし……。そしてあまつさえ彼女の親友である友美さんとも気安くしやがってえ……」
「最後のは伊藤様のお気持ちが入って……」
「そうだぞっ、それはただの逆恨み……」
「黙れっっ!! このクロプトキサンチンがっ!!」
「……」
「とにかくだ、これはクラブの総意なのだ! 貴様を許すわけにはいかん!」
「だからってここまでする必要が……」
「黙らっしゃいっっ!!」
「……」
「こんなうらやまけしからん奴を野放しにしていては、校内で第二、第三の鹿野が現れかねんからな。俺様がこの手で成敗して、貴様を見せしめにしてやる!」
「お、おいっ、いったい何を……!?」
「貴様のフ○チン写真を撮って、校内のライングループに拡散するのだ!」
「な、なにっ……!?」
「俺が写真撮るから、山縣はズボンで、黒田はパンツな!」
「え? 俺がズボンが良い、男のパンツなんて嫌だ」
「僕だって男のパンツなんて嫌ですよ! ばっちい!」
「……」
そして三人が喧々囂々と言い合っているので、これがチャンスと思い俺は精一杯に叫んだ。
「だ、誰か助けてくれっ!」
「あ、こいつ叫びやがった!!」
「やべー……、誰か来るぞ……!?」
「い、急いでこいつの口を塞がなければっ」
こうして三人は慌てふためき、俺が精一杯叫んでいると、バッとドアが開いた。
「お待たせ!」
「……!」
結果として友美と智華が現れた。どうやら友美が俺をこの部屋に連れて行かれるのが見えたらしい。そしてこの部屋を覗いていた友美の後ろ姿を廊下で智華が見かけたさしい。いや、さっさと助けろよ!
あいつらはというと、智華の猛烈な説教でこっぴどく怒られ、「次こんなことしたらクラブの解散させるからっ」と彼女から解散要求されたので、萎縮したまま部屋から出て行ったのであった。
そして無断で部活を遅刻扱いされた俺はコーチから叱られ散々な日だった。
「今日はお疲れさまね~」
部活終わり、いつもの喫茶店で友美と二人で飲みに行った。
「本当だぜっ。今日は災難だった……」
「もしあの時に私が貴方を見かけなかったら~、今頃どうなってたでしょうね~?」
「本当だよ。助かった、ありがとう」
「いいえ~、別に~っ」
彼女は嬉しそうにニコニコとする。本当だよ、君はいつも俺を助けてくれ………あ、
「いやいや、今日三人で一緒にご飯を食べた時、どうして智華といい感じだったのに、余計なことを言ったんだ!!?」
「え? そんなこと言ったっけ?」
「言った言った! 『散々嫌がらせした』とかなんとかっ」
「あー、あれね。あれは~……そうね、私も貴方ともっと仲良くしたかったからかしらね?♪」
「……?」
彼女にニマニマしながらそう言われ、俺は相変わらず女の気持ちというものが一向に分からないと思ったのであった。
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