俺達、女子の気持ちが一向に分からない
涼馬の友達登場です
5話です!
「はあ、はあ……」
俺は二人の圧力に屈し、自転車を友美ちゃんに託して、一人学校まで走ってきた。いつもはあそこまで必死に走らないものだから、今は下駄箱に着いて大量に汗をかく。
「大丈夫……? 涼馬君……?」
「こんな朝っぱらから疲れているとはまったくしようのない奴だな~」
そう言って心配して俺にタオルを渡してくれる優しい人と、ニヤニヤしながら皮肉を言う輩の二人がいた。あれ……? その声の主達は……、
「おぉ……! 広人に一希かっ」
「おはよう涼馬君」
「おーっす、涼!」
こいつらは早乙女広人と古川一希。彼らは俺の中学からの友達で、公私問わずよく一緒に動く連中だ。
「で、今日は何があった? さあ、さっさと教えろって」
「まあまあ今は涼馬君は疲れてるんだし、そんなに責っ付かなくても……」
「いんや~、広人はそこが甘いんだって! こういうのはちゃーんと言及せにゃならんのだって」
「うーん、そうなのかな~?」
「ほら涼! さっさと吐いて、楽になっちまえ!」
「……分かったよ。……広人、タオルありがとう」
「うん、い~えー」
そして俺はさっき学校まで走った経緯を二人に話す。一希はますますニヤニヤし、広人は眉を顰め、さらに不安そうな顔になる。
「なんだ~?ww 最近そんな展開になっているのか~ww」
「それ本当に大丈夫ー? なにか変なことに巻き込まれてない?」
「うん、大丈夫……」
……と思う。二人が一体何をしたいのかよく分からないから何とも言えんが……。
「けど不思議な話だな~」
「確かに……。フッたのにもかかわらず涼馬君に近づく智華ちゃんと、これまでそんなに僕達と関わりなかったのに、最近やけに涼馬君へ親しげに話す友美ちゃん。う~ん、二人は一体なに考えているんだろう?」
「……」
「だがこれだけは言えるぞ!」
「え?」
「フッた女なんてとっとと忘れちまって、さっさと新しい女に乗り換える!」
「いや、それは~…………」
「誰をとっとと忘れちまって……、ですって?」
俺達の後ろから冷たいドスの聞いた声が聞こえてくる。
「げっ、新居!?」
「じっ!!」
「あっ、やっ。智華、これは違くてーっっ!」
「あ、涼君涼君っ、自転車ありがとね♪ それとはい、自転車の鍵っ♪」
「あ、うん……」
「でさ~、ルカがさー……」
「うん……」
そうして二人(少なくとも友美ちゃん)は楽しそうにクラスへ向かうのであった。
「本当に女子ってよく分からないねー」
「……だなー」
「女って怖い………」
◇◇◇
「ふー……」
ひと段落ついた昼休み。俺は自分の席でため息をつく。
「涼~君っ♪」
なにやら嬉しそうに友美ちゃんが俺に絡んで来る。
「どうしたの友美ちゃん?」
「なに~? そんなによそよそしい言い方~? いつも二人っきりの時は友美って言ってるのに~?」
「いやいや、いつもからそういう風に言ってないしっ!?」
二人っきりの時からいつも『友美ちゃん』って言ってるよねーっ!?
「じゃあはい、恥ずかしがらずに『友美』っ!」
「友美…ちゃん……」
「はい、もう一回♪」
「友美……ちゃん」
「ハイ駄目~、もう一回♪」
「友美…………ちゃん」
「もう一回?♪」
「友美………」
彼女は「よしっ!」と強く言いながら、嬉しそうにニコーッとする。
「それで友美ち………友美は何か用?」
「うん、一緒に食堂でご飯食べようと思ってー」
「え!?」
いやいやっ、貴女とご飯を食べる相手はいつも決まって……、
「友美……?」
カバンを持って怪訝な顔して智華は俺らに近づいてくる。友美は気にせずにこにこと笑って、俺はハラハラだ。
「あら智華!」
「友美、どういうつもりかしら……?」
俺はふと思った。もしここがマンガの世界なら智華の後ろにゴゴゴッと効果音が書かれんぐらい迫力ある雰囲気だった。
「いつも私と食べているのに、なんで今日は涼馬となのよ……?」
「そうねー、偶には男子とも一緒に食べたいな~と思ってさっ」
「……。なら私は誰と食べるのよ……?」
「あ、そうねっ。じゃあ三人で食べましょうか♪」
「!」
確かにその案はなかった……が、智華は俺と一緒で良いのか?
「別に構わないわ…」
良いんだ……。
「涼馬!」
「はひっ!?」
「弁当…」
「……へ?」
「作ってきたの……」
「へ?」
え、俺に????
「受け取って……?」
「あ……あぁ、ありがと……」
「……///」
脈なしのはずなのに、なんで弁当を作ってくるのかまったく分からない俺と、それを渡して恥ずかしそうな表情をする智華と、それを見てニヤニヤする友美であった。
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