智華の異性の好み
え……? 鞭打つ……?
4話です
友美ちゃんの想定外の言葉に俺は驚きを隠せなかった。なに、鞭打って悦ぶ男が好きだって……!??
「ゲホゲホ……! マジで……!?」
「マジで…! 見た目は落ち着きはらって、そうは見えないけど、あの子もSッケがあるの。いわゆる隠れSッケね」
「……」
そうだったのか……。それは全く知らなかった。確かにあいつはしっかり者の面があるが、それ以上にSッケも兼ね備えていたのか……!
今まで散々からかってきたんだから、それは告白してもフラれる訳ですわ……。………ん?
「じゃあ、それとあの必死な声とどういう関係なんだ?」
「んー、それはね~。あの子も所詮は女、数少ない心を開いている男子を取られるのは嫌なんでしょう。Sッケのある女ってはっきりしてる性格が多いから、対立関係も出来やすいの」
「……」
そうか……。いや、確かにその通りだな。俺は女同士の派閥みたいなのをあんまり知らないが、智華のあのはっきり物事を決める性格だ。反対意見の側には容赦なく意見をぶつけるから、忌み嫌う女子達もいるだろう。
たとえ俺とも意見の食い違いがあったとしても、俺はずっとあいつの味方でおろう。
「後はね、思いやりのある男子が好きね」
「成る程……」
俺は友美ちゃんから教わったことを忘れないように、メモ帳に書き留める。
「ふふふっ」
「どうかしたか?」
「いえ、別に~♪」
対面に座っている謎に上機嫌な彼女の顔を見ながら、俺はまた違うタイミングでコーヒーを飲んだ。
「ゴホっ!! 熱っ!!」
◇◇◇
翌日。俺は昨日友美ちゃんから聞いた話を、整理してこれから智華とどう接していくかのイメージトレーニングを寝る前に100回はした。起きてからもずっとしている。
(よし、これで今日の智華への対応は完璧だろう……。いや、あと50回はしとくか……?)
「涼馬、塀に向かって何してるの?」
「げっ、智華!?」
「?」
彼女は不思議そうに俺を見てくる。こんな変な状態を見られてしまい、かなり小っ恥ずかしかった。いや、しかしこれはイメトレを生かす時がやってきたのだ。よし……、やるぞ……!
「きょ、今日は良い天気ですね~」
「え? えぇ」
「こんな晴れた日だと、洗濯日和で家も外もポカポカしてて、気持ちがいいなー」
「ま、まあね…」
よし、出始めは悪くないぞ……! 智華も険しい表情もしていないしっ。
「最近バレーの調子はどうだ?」
「んー、一段とトレーニング内容が上がって大変になったわ」
「それはお疲れさまだな」
「そっちはどうなの? 合気道部は?」
「まぁ、体力は使うが、基本型稽古だから内容がハードになるとかはないな」
「そう」
「智華はサーブ、レシーブ、アタックの中でどれが一番好きだ?」
「うーん、そうね~。やっぱりアタックかしら」
「やっぱりアタックの時は快感か?」
「そうね……入ると気持ちいいわ」
やっぱりそうなのか……。Sなんだな。
「でも俺はいつだってお前の味方だからな!」
「え……あ、ありがとう……?」
よしよし、とりあえず言いたいことは言えたぞっ。
「………あのさ涼馬」
「ん? なんだ?」
「私はね、昔からはっきりした性格だから、優しく接してくれる男が好きなの」
「……」
「それにもし意中の女子がいるにも関わらず、他の女にも尻を振る軽薄な男は嫌いね」
「…………」
「だからね、涼馬」
「お、おう……」
「そういう男になっちゃ駄目よ」
「はい……」
◇◇◇
そして通学路のいつもの橋に通りかかると、友美ちゃんが立っている。
「やっほ~、涼くーん♪ おやおやー? 今日も一緒に登校してお熱いことですな~~」
彼女はニヤニヤしながら俺達を見る。
「おはよう友美」
「おはよう智華♪ 今日も今日とて良い日になりそうね」
「えぇ、そうね」
なんだろう……。いつもの仲の良さげな会話と違って、今はお互いの腹の探り合いをしている気がする。
「それじゃあ行こっか、涼君♪」
「え、あっ、うn……」
と俺はその時ブリザードが吹き荒れる極寒のような冷たい目線を感じ、おもわずはっとする。振り向くと彼女はじーっと静かに俺の方だけを見ていた。
た、試されている……。
「どうしたの涼君、行かないの……?」
「あ、いや……その~……」
「(じー)」
「早く行かないと遅刻するわよー」
「……」
「(じー)」
「涼くーん……!?」
あわあわあわ………………っ。
「……友美ちゃん、僕ちんの自転車貸すから。智華と一緒に行ってくれ」
「え?」
「俺は走って学校に行くからーーー!!!」
「あっ、涼馬ーー!?」
「えー!? ちょっと待って、涼くーん…!?」
とうとう俺は二人の圧力に耐えきれず、一人さっさとこの場から走り去って学校へと向かったのであった。
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