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俺、壮大にフラれる

少し出遅れたかな?


新連載です

「智華好きだ、付き合ってくれっ!」

「やだ」

「…………え?」


 なぜこういう流れになったのを他の人が知るには話を少しだけ遡らなければならないと思う。


◇◇◇


「お前たちって本当に仲が良いよなっ!」

「あたりきよ~。俺が『山』と言えば、智華は『川』と答えるだろうさ」

「へーっ、すっげー」


 俺の幼馴染の新居(にい)智華(ともか)は校内で成績優秀、スポーツ万能で、おまけに黒のショートボブの美少女だ。目はぱっちりしてて可愛らしいから、よく校内の男子から告白されている。しかししかしだ、あいつはそんな彼らを懇切丁寧にかつ容赦なくことごとくフッていく。だから今まであいつに彼氏が出来たことはない。これはほぼ間違いなく好きなやつがいる証拠だ。それでその好きな男は多分俺のことだろう。

 ずっと前からそう思っていた俺は誰が智華に告白しようが気にせず余裕綽々でいた。


「そんなに仲良いなら、告白しちゃってさっさと付き合ったらどうだ?」


 ある一人の男子が言う。


「え?」

「だってそうだろう? そんなに意思疎通出来ているんなら、もう後は付き合うだけじゃね?」

「……」

「それとも告白するほどの自信はないのか?」

「はっ、そんなことねーよ! 余裕に決まっているだろ!?」


 そしてあの顛末であった……。


◇◇◇


「ど、どうし……」

「どうしても、こうしてもじゃないわよー! 今まで散々私をからかっておいて、今更好きだなんて告白されても信用なんて出来ないわ!」

「……」

「幼稚園の時も……」

『スカートめくりー』

『やだー!』


「小学校の時も……」

『智華、蝉ー!』

『キャーッ!!』


「中学校の時も……」

『ほ~れ、ほれ~っ』

『文房具返してよー』


「今でも……」

『卵焼きも~らいっ』

「あっ、ちょっとー!」


「あれだけ私をイジめておいて、軽々しく『好き』だなんてっ。なんでok貰えると思ってんの? 馬鹿なんじゃないの!? 好きな女子にちょっかいかけて良いのは小学生までよっ!」

「そ、そんな……」

「だからね、あんたとは今まで通り()()()腐れ縁よ! じゃあね!」


 そう言って智華はさっさとここから去って行った。俺はしばらくこのまま動けなかった。それからの俺は幼馴染にフラれたことがすぐに校内に広まり、周りのお笑い種になっていた。


「クスクス、見てあれ~。机にうっ伏しているわー。自信持って告白したのに、あの新居さんにこっぴどくフラれたんだって~」

「かなり彼女をからかっていたみたいね~。それじゃあ当たり前じゃない。ただの自業自得よね~。クスクスッ」


 そう言いながら廊下を通る女子達もちらほらいる。


「……」


 そして俺はこの日の帰り道に、自転車を降りて夕日を眺めながら、学校近くの橋の真ん中の縁側にもたれながら感傷に浸る。フラれたあの日から智華とまともに顔を合わせていない。


「は~、死にてー……」

「涼~君っ」

「友美ちゃん……!」


 手を後ろにしてバッグを持って歩いてくるその彼女、姫野友美は智華の高校になってからの大親友だ。彼女は少し茶髪がかった髪をポニーテールにして、目がくりくりで唇がぷるっとしているこれまた可愛らしい美少女だ。


「駄目よ~。フラれたからって死んじゃー」

「うん、まあね……。そこまではしねーよ……。あ……」

「ん? 何?」

「智華、何か言ってたか?」

「んー。そうね~、『私はそこまで甘い人間じゃないわ』的なこと言ってたかしらね~」

「ぐふ……」


 俺は縁側と一体化するぐらい更に項垂れる。


「ねえ、涼君」

「……ん?」

「あそこの河川敷まで歩かない?」

「……?」


 俺達は橋を渡り、学校とは反対の河川敷に向かう。そして彼女はその斜面に立ち止まって、俺はその東側寄りの斜め上に位置する地面に座る。川が近いからかずっとそよ風が吹き続け、彼女の短いスカートがヒラヒラとなびく。


「良い夕日ね~。それに良い風ー」

「……」


 俺は感傷に浸りながら、彼女のほどよくムチムチした太ももを凝視する。


「あれ見てー。とっても綺麗じゃない?」

「ん~、そうだなー……」

「赤色に染まって反射する川も、こうして見ると一段と風情があるわねっ」

「お……おん……」

「なにその空返事はー。………ちょっとどこ見てるのよー! もうHねえっ」

「え? あ、おぉ。悪い悪いっ」

「もーっ」


 そう言いながら彼女も俺の隣にすっと座る。彼女の影に夕日が隠れていたから分からなかったが、ぱっと見えた夕日をバックにする川の風景はなかなか趣深かった。


「おー。……悪くない風景だ」

「でしょ~。私の太ももよりいいでしょう?」

「う~ん、甲乙つけがたいかな……?」

「えー、何よそれー?」


 そう言いながらも満更でもない彼女の表情を見て俺は笑い、彼女もつられて笑った。


「ふふふ。………涼君」

「……んー、なんだ~?」

「私と付き合ってみない?」

「…………え?」

最後まで読んで頂きありがとうございます。

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