第3話
俺の名前はクリストフ。妻のローゼと一緒に開拓村で生活している。15で親元を離れて生活し、その間はギルドで冒険家稼業をしていた。それから5年たったある時に今では妻となっているローゼと出会った。ローゼと出会ってから2年後、俺は冒険者をやめて開拓村のリーダーとなった。もちろんローゼも一緒だ。
開拓村っていうのはいわば町の前身だ。ある一定の人数で特定の地域に定住しながらその地を開墾する。その間にその土地の植生、動物、近くの魔物やダンジョンについてを調べることが開拓村に住む者に求められることだ。
俺が開拓村のリーダーを始めた理由は2つある。一つはもともとこういった自給自足っぽい生活に憧れていたからだ。子供のころはそんな生活とは無縁の環境で育ってきたからだと思う。もう一つはローゼに出会ったからだ。いつまでも冒険者をやっていてはローゼに迷惑をかけてしまうからな。あとこれは理由ではないが、どうやら開拓村での働きが認められるとその土地の地主にしてもらえることもあるみたいだし。
俺たちのいる開拓村はマルセーユという国にあるノルトワという町から離れた所に位置している。開拓村でとれたものと町にあるもので取引をし、それらを貯えにしながら冬を乗り越える生活をしている。
そんな開拓村での生活が3年たち、俺とローゼが25の時に二人の間に子供ができた。名前はレオナルド。これがまた賢くて、才能あふれる子供だったんだ。早いうちから俺たちの話すことを理解するようになり、4歳の誕生日には普通は1か月、長い子でも数か月はかかる魔力の扱いをほんの1分足らずでやってしまったのだ。
しかもこれだけにとどまらないのだ。スキルが発現してからすぐなのにスキルを使用した量がかなり多いのだ。普通は魔力系の補助が入るスキルでもなければ最初からはあれほどスキルを使うことはできないだろう。
まあこんなこともあり、ローゼに話したがローゼはローゼでわが子のことを
「うちの子は天才ね! 将来が楽しみだわ!」
と言っており、なかなかの浮足立ちっぷりだ。まあ気持ちはわからなくもない。どの親も自分の子供に才能があると分かればうれしいものだろう。残念なことに発現したスキルが補助型のスキルだったから俺と同じ冒険者の道に進んだとしたら最初のほうは苦労するだろうが、使えるスキルが増えてくればなるようになるだろう。俺がそうだったしな。まあ冒険者に進んでくれなくてもいい。開拓村なんかで生活するときはすごく便利なスキルだし、何より冒険者よりは安全だからな。
村で警備をしていると午前中に町に行ってた3人が帰ってきた。どうやらレオは本を買ってもらったみたいだ。まだ4歳なのに勉強熱心とは感心する。どうやらマーティンに買ってもらったみたいだ。マーティンとは冒険者のころからの付き合いで、俺が開拓村で働くと言ったらついてきてくれた本当に頼もしい奴だ。本を買ってくれたお礼に、今度酒でもおごらないとな。
太陽が一番高いところから少し落ちたぐらいに僕たちは開拓村に帰ってきた。父さんに町で何があったかを話してから、少し遅めの昼ご飯を食べる。
家に帰って一通りのことを終えてやっと落ち着ける時間が取れたので、家の近くにある気に寄りかかりながら、俺は買ってきた本を開ける。
まずは世界地図から見てみようと思い、本の最初のほうのページを開いてみる。地球でもそうだったが世界地図なんてのは本の最初か最後にあるからな。そんな予想は見事に当たり、この世界の地図は本の頭に書いてあった。
その地図に書いてあることに俺は驚く。なんと地図には三角形に似た形の大陸一つしか書かれていなかったのだ。もしかしたらそれほど航海技術が発達しておらず、ほかの大陸が見つかっていないのかもしれない。昔のヨーロッパの地図も、世界には一つの大陸しかなく、周りはすべて海に囲まれていると信じられていたものもあったみたいだから似たようなものなのかもしれない。
俺は地図をよく眺めてみる。大きく見れば三角形に見える大陸の真ん中には火山地帯があるみたいだ。そしてその火山を囲むように時計の12時の方向から順に、パルテノ教国、魔導大国ゼノバ、俺の住むマルセーユ、大陸の5分の1ほどを占める山岳地帯、そして最後に同じように大陸の5分の1ほどを占める大森林地帯だ。この本に書かれていることには、どうやら山岳地帯にはドワーフの住むダインズという国、大森林地帯にはエルフの住むミストという国があるみたいだ。ここに書かれている国は5つ。この地図を見る限り国と国の間隔が小さく見えるので、この地図の縮尺が大雑把なのか、あるいは一つ一つの国の領土が大きいかのどちらかだと思う。こういったのは自分で行ってみないと分からないかな。
俺はちょっとずつ本を読み進めていく。どうやら俺の今いる国、マルセーユが歴史上一番長く存在している国らしい。昔はもっと大きかったみたいだが、度重なる小競り合いなどで少しずつ国が小さくなっていったようだ。それまでにあった国もいくつか無くなっているみたいで、今人間が生活している国は、マルセーユ、パルテノ教国、魔導大国ゼノバの3つみたいだ。パルテノは宗教国家みたいで他種族を良しとしない考えを持っており、隣の大森林にすむエルフと度々戦争をしているみたいだ。ゼノバについては数多の国を滅ぼしたうえで成り立っている軍事国家みたいだ。この国は世界にたくさん点在するダンジョンを攻略することを引き換えに他国と取引をしているみたいだ。どうやら実質的にこの国が世界の覇権を握っているらしい。いくつもの国を滅ぼしているみたいだし、そんな国と戦争なんてしたら滅んでしまいそうだ。この本にはこれぐらいのことしか書かれていない。ダインズとミストのことをもう少し知りたかったが、他種族だからだろうか、詳しいことは書かれていない。ほかに書かれているのは伝説の童話だったりとかの空想ものだ。ただ、この世界は剣と魔法の世界なので書かれてあることは本当のことなのかもしれない。気が向いたときに読んでみようと思う。
今日は本を読むのはこれくらいにしておいて、今朝整理したスキルの試し打ちをしようと思う。
俺は今日のことを振り返る。今日すでに確かめたスキルは【剣術】と【千里眼】である。【剣術】についてはもう少しこの体で慣らす必要があるというのが今後の課題だ。【千里眼】については、今のところ需要がないので気が付いたときにスキルを発動して熟練度を上げていこうと思う。また、【魔力操作】に関しては自分で発動するスキルというよりも、【皇帝】に似た感じで常に発動しているようなものな気がする。ゲームでいるところのパッシブスキルみたいなものだろう。だからこいつも後回しだ。残るスキルは魔法系の4つだ。まず最初は王道の【炎魔法】にしてみようと思う。俺は近くの木から少し離れてスキルを使ってみる。手に魔力を集中させると拳よりは一回りは小さい炎が出てきた。かなり手のひらに近いが不思議と熱さは感じない。でも母さんが料理するときは炎魔法でつけた火を使っているから、体から離れるとちゃんとした炎として機能するのかもしれない。ほかのどの魔法も試してみたがこれと言って凄い効果のものはなかった。【水魔法】についてはジョウロから出る水みたいな勢いと量だったし、【土魔法】も近くの土を動かせるくらいだった。【風魔法】は言わずもがな、小さな風が吹くぐらいだった。これが父さんの言っていた途中から得るスキルの欠点というものだろう。まあ幸い時間はある。ただもたもたはしていられない。この世界にきてもう4年になるが、ほかの生徒も4年になるといることだ。世界のことも少しだけ把握したから余裕のある時に仲間を探しに行きたいと思っている。
スキルの確認がすべて終わったところで今日の日も暮れてきた。明日からはスキルの熟練度を上げる訓練をしないといけない。色々なことが山積みだ。それに今のままだと行動がとりにくいからな。少しづつ自由な時間がとれるようにするには、4歳という体である限りは無茶を承知で悪目立ちしてしまおうと、行動していかないといけないな。そんな決心を固め、俺は今日も帰路に就くのであった。
今日は父親視点を混ぜて軽く設定について語る回でした。すこし文章がながったるくなってしまったので読みにくいと思われてしまった方がいましたら申し訳ございません。
是非次話もお読みいただけましたら幸いです!