第10話
父さんとの戦いを終えた俺は、午後からはいつも通りに畑を手伝い、森でスキルの熟練度上げに勤しんだ。畑でみんなの手伝いをしている時はほかの人たちからいろいろと声をかけられた。4歳児が自分の父親とあれだけの戦いをしていたら当然だろう。中には勇者様の生まれ変わりだという人もいたが、俺が困っている所で父さんが入ってきて、
「レオのスキルについては前も言った通り補助系のスキルだったろ。こいつは自分で努力してここまで来てるんだ。みんなもあんまりこいつをいじめないでやってくれ。」
と、助け舟を出してくれた。父さんは心なしか少しうれしそうにしていた。自分の息子が優秀だったらやはり親としてはうれしいものなのだろうか。
そんなことがありつつ、今は森でスキル上げをしていた。ちょうどいつもの日課が終わったので今度は自分のステータスに変化があるかどうかを確かめようとする。この時が一番楽しい。スキルが増えたり、熟練度が上がったりすることで自分が強くなったと感じやすいからだ。よくある例えとしては、テスト勉強をやっただけでテストを受けてすらいないのに妙な満足感に包まれるのに近い。
そんな感じでいつも通りにステータスを開いてみる。
名称 レオナルド
年齢 4
種族 人
性別 男
所有スキル
【皇帝】【鑑定】【剣術】【魔力操作】【炎魔法】【水魔法】【風魔法】【土魔法】【千里眼】【氷魔法】【農作業】【身体強化】【魔力強化】
称号 「転生者」「魔導の才」
今回新たに増えたのは【魔力強化】と「魔導の才」ってやつか。名前から大体の効果が見て取れるが、一応確認しておこうか。
スキル名【魔力強化】
スキル保持者の扱う魔力の質が向上する。全スキルの効果が上昇する。魔力操作の熟練度を一定まで上げ、大量の魔力を一度で扱うことで得ることが可能。
称号「魔導の才」
魔導士としての才能を認められた。魔力保有量が2倍になる。
まず【魔力強化】についてだが、このスキルは今までのスキルと違って獲得条件が複数あったみたいだ。父さんが【魔力操作】を持っていたのに【魔力強化】を持っていなかったのはこれが原因だろう。
もう一つが「魔導の才」だな。まずすぐに目についたのは「認められた」ってなんなんだ? 誰に認められたんだ? 俺たちをこの世界に送り飛ばした奴だろうか。しかも称号で詳細が見れたのは今回が初だ。いまだに「転生者」の詳細は確認することができない。まだまだ称号ってやつにはわからないことが多いな。
でも、魔力保有量が2倍になるのはありがたい効果だ。さっきまでのみんなの話を聞いているとどうやら俺の魔力量はかなり多いらしい。これが2倍になるとは、この世界で生きていくうえでかなりありがたい。毎日のスキル使用の回数も増えるしより熟練度が上げやすくなるな。
「まだ日も高いし、もう少しスキルの熟練度上げやろうかな...。」
(「魔導の才」のおかげでいつもよりも長い時間スキルが使えるようになったから、ルーティーンも改善していかないとな。)
ステータスの確認も済んだのでスキルの訓練を再開させる。
「そういえば父さんのスキルに【魔力感知】ってのがあったけどどうすればいいんだ?」
ここであることを思い出す。昨日の夜、戦いに備えて父さんのことを鑑定したときに【魔力感知】というスキルを見つけた。名前からして自分の周囲の魔力を感じ取るためのスキルだと思うが、俺はまだ持っていない。詳細を見た時には発現方法が書いてなかったから自分で頑張るしかないのだろう。
(確か、俺が初めて父さんにスキルを教えてもらったときは、父さんがスキルを使うときは剣の周りに魔力が集まるのしか感じなかったな。今日の戦いのときもそうだった。自分の体の魔力に関してなら体の内側の魔力まで鮮明に感じ取ることができるが、他人や物体に対してはまるで感じ取れない。父さんが前に言っていた、魔力を使った痕跡があったというのも俺にはわからない。ここが俺と父さんの違いだ。ということは、自分の体の中で感じ取ることができるように、他人の体の魔力も感じ取れればいいのか?)
俺は新たなスキルを発現させるための方法を考える。自分と父さんの違いを見つけ出し、自分の足りない部分を成長させればスキルの発現にたどり着けるのではないかと思ったからだ。
俺は【魔力感知】の発現方法について1つの仮説を立てた。それは、自分の体の魔力の流れと同じように他人の魔力の流れを感じ取るということ。これができれば俺も【魔力感知】を得ることができるかもしれない。
(もしこの方法でスキルが得られたとしても、協力者がいないとこれはできなさそうだな。父さんか母さんが寝ている間に試してみるか。)
とりあえずの目標を【魔力感知】の獲得にしながら、俺は日が沈むまでスキルの熟練度上げを続けた。
その日の夜。
晩御飯を食べ終わって寝る準備をしていると、父さんに話しかけられた。
「レオ、今日の戦いについてだが、いくつか聞きたいことがある。」
「どうしたの父さん?」
「昨日の夜にお前が話してくれたのはスキルが3つ増えたという話だったが、今日戦った時、お前は一体いくつのスキルを使った?」
しまった。勝つことに執着しすぎて後のことを考えることを忘れていた。俺はあの時、父さんに教えていないスキルをいくつか使ってしまった。父さんと母さんにしか新しいスキルの話をしていないから村の人たちは僕たちの事情の裏側を知らない。それでもスキルの数と魔力が異常というふうには思われてしまっているだろう。
俺が言い訳を考えながら黙っていると、僕たちの間に母さんが入ってきた。
「レオ、無理して話さなくてもいいのよ。何か言いたくない事情があるんでしょ? 私たちはあなたを信用してる。だから無理しなくていいわ。」
母さんは僕にやさしく話しかけてくれる。父さんは気になっていたみたいだが、母さんが話に入ってきたことで僕から話を聞くのをあきらめたみたいだ。
「母さんもこう言っているから、今は隠していてもいい。だが約束してくれ。その時が来たら必ず話すと。 隠し事をするのは仕方のないことだが、俺たちはお前が心配だ。だから約束してくれ。」
父さんの顔は本気だ。興味本位で聞いたというのもあるだろうが、多分俺のことを心配してくれているのだろう。ここは俺もこの気持ちに応えないとな。
「わかった。約束するよ、父さん、母さん。」
僕が言葉を返すと父さんと母さんは満足そうな顔を浮かべる。その後、母さんがその場を離れて僕と父さんだけが残る。すると父さんが俺の方に近づいてきて耳元でこういった。
「今日戦ってるとき、いつもと違って「俺」って言ってたぞ。」
「!!」
驚く俺とは裏腹に、にやけ顔の父さん。まるで獲物のしっぽをとらえたかのようなうれし顔だ。
「まあ今日のことはほとんど忘れてやる。それよりもレオ、気を付けるんだぞ。この村のやつらはいいやつがほとんどだが、外の世界はそう甘くはない。特に力や権力を持つ奴は嫉妬深い。大きくなるとそういう場面に出くわすこともあるだろう。だから自分の力をできる限り隠せ! そしてその力は自分よりも弱い者のために使ってやるんだ。わかったな?」
そういって父さんも向こうへ行った。父さんも言っていたが、やはりどの世界でも力を持つものは妬まれる運命なのだろう。それにここは地球とは違うところ。日本みたいに法整備が整っている可能性は少ないだろう。そういった政治的な文化というのは技術の発達とともに発展していくと聞いたことがある。もしこの世界でも同じことが言えるのならそういうことなのだろう。やはり俺は自分の力を自覚しないといけないらしい。
二人が俺のところから離れ、俺は再び寝る準備を続ける。そのまま俺が布団に入るのとほぼ同じタイミングで家の明かりも消える。これで今日も我が家の1日が終わった...。
どれくらい時間が経っただろうか。家の中にかすかに二人の寝息が聞こえる。俺はゆっくりとベッドから起き上がり、父さんと母さんの部屋に行く。
無論、さっきの二人の話は理解している。でも父さんと母さんには申し訳ないが、一応予定通りに【魔力感知】のスキルを獲得するための実験をさせてもらう。父さんと母さんが俺のことを心配するのと同様に俺も友人のことが心配だ。だからこの世界で強くならないといけない。
(父さんは今日の疲れがたまっているだろうから、眠りが深そうだ。勝手ながら、今日は父さんに手伝ってもらおう。)
俺は父さんの体にやさしく手を当てる。次に自分の体の中の魔力の動きに集中する。その流れのまま、今度は父さんの体にある魔力の流れに注目する。感覚としては父さんの体も自分の手を介して俺の体の延長という風に捉える。すると少しづつだが、触れている所から徐々に魔力の流れが感じ取ることができる。
(多分、やろうとしたかったことはこれで合ってる。あとはこれをバレないように繰り返すだけだ。)
俺はその日の夜、時間と魔力の許す限りに実験をつづけた。
ご愛読ありがとうございます!!
次回もお楽しみください。




