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転生者は世界を紡ぐ  作者: 金剛 奏
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第9話

 朝になった。俺は朝ご飯を食べたあと、村の広場へと向かった。広場にはすでに父が木刀を2本持って待っていた。


「来たか、レオ。ほら、こいつを使え。」


 父さんは持っていた木刀のうちの一つを僕に向かって投げた。いつも練習で使ってるのと同じやつだ。

 村の人も何人かが家から出てきた。何が起こるのか気になる様子だ。すると父さんが、


「みんな、今から俺はこの木刀でレオと試合をする! この試合にレオが勝ったら村の狩りに連れて行くという条件でだ。逆に俺が勝ったら、レオには6歳まで待ってもらうことになる! 村のみんなにもこの試合の行く末を見届けてほしい!」


 村のみんなも驚いた様子だ。そりゃそうだろう。4歳の息子と木刀を持って試合をするような親はそうそういない。周りの人の何人かは遊びだろうと思って見ているようだ。

 これはかなり緊張するな。多分父さんもそれを狙ってのことだろう。俺と父さんでは経験に圧倒的な差が存在する。それに周りでは多くの人が見ている委縮するのも当然だろう。

 だが俺は人生2週目の男だ。長い人生を歩めなかったとしてもそれなりの知恵は持っているつもりだ。こんな初歩的なものに惑わされたりはしない。

 ただ、負けた時の条件は聞いてなかったな…。まあ昨日の時点で聞かなかった俺が悪いし聞いていたところで挑戦を取り下げるつもりはなかったけどな。


「いいのかよ? 相手はまだ子供だぞ。確かにお前んとこのレオはスキルを使いこなしているし優秀だが、さすがにやりすぎにならないか?」


 周りで僕たちを観戦しようとしていた人の中の1人が、父さんのやり方には少し批判的みたいだ。


「まあ最初はみんなもそう思うだろう。だがこいつの才能を目にしたらそんなことは言ってられなくなると思うぜ。それじゃあそろそろ始めるか。アラン、立会人をやってくれないか?」


「いいぜ。ボク、どれだけ戦えるのかは知らないが、無茶はするなよ」


 今回立会人をやってくれる人は父さんの冒険者時代の仲間のアランさんだ。優しそうな20代後半の顔つきだ。


「大丈夫だよ。父さんもだと思うけど、僕も今日の戦いは負けられないからね。」


「なかなか強気じゃないか。二人とも準備はできているな。」


「うん(おう)!!」


「では! ここにクリストフ対レオナルドの決闘を執り行う!! 始め!!!」


 アランさんの掛け声とともに、広場は盛り上がる。周りからは父さんに対して、手加減してやれといった少しいたずら気の意味の込められた言葉が投げかけられる。しかしそれとは対照的に僕たちの間には張り詰めた空気が流れている。

 父さんも俺も最初は見合ってた。しかし父さんには動く気配は見えない。まるでかかってこいとでもいうような目つきだ。

 まずは俺から動いた。剣を両手で持ち、体の後ろに構え、素早く距離を詰めながら両腕と剣に魔力を貯める。父の間合いに入る直前というところで、下から振り上げ、スキルを放つ。同じタイミングで父もスキルを放つ。打ち合った剣どうしが互いに音を立てる。剣の接触部分から連鎖した振動が俺の体を伝う。


(なるほど、これが【上級剣術】か。スキルとしての格は向こうが上だろうから、普通に打ち合ったら力負けするな)


 お互いが剣を間にしてに睨みあう。単純な力でも劣っている俺は、少しずつ後ろに押されていく。


「そんなものか、レオ。確かに剣を使いこなせているし、力もついてはいるのだろう。だがその程度で俺に勝とうとは10年早いぞ!」


 父さんが硬直状態にあった剣をそのまま下に振り切った。体勢を崩しそうになった俺に対して父さんは追い打ちをかけてこようとする。剣での防御が間に合わないと踏んだ俺は、二人の間に火柱で壁を作り、距離をとった。


「間に合わないと判断して、魔法で距離をとったか。悪くない判断だ。」


 今の一連の流れを見ていた周りが騒がしくなってくる。


「おい、今の見たかよ。剣術だけじゃなくて魔法も使ったぞ。」


「まさか本気で試合する気だったのかよ...」


 村の人々は口々にそう話していた。近くで見ていたアランさんも少し驚いた表情をしているが、自分の立場を思い出したのか、何も言わず、次の瞬間には先ほどまでとは違い鋭い目つきになる。ここにいた誰もがようやくこれがただの親子の力比べではないことに気づいた様だった。


 訓練のおかげで魔力にはかなり余裕がある。だからこの勝負の間はほぼ際限なく魔法を使っていられるだろう。それなら離れたところから魔法を使い続ければ勝てるということになるがそうはいかない。俺の魔法はまだ()()()ことができない。魔法を球のようにして放つことができないので現状、遠距離からの攻撃手段を持っていないのだ。多分スキルの熟練度が影響しているのだろう。いまは半径1メートル以内でしか魔法が出すことができない。

 このままだと少し近づいて魔法で距離をとってというヒットアンドアウェイになるが、父さんも魔法について対策をするだろう。このままだとジリ貧になるな。だがまあ、こうなることも予想していたからまだ手はある。


 俺はもう一度距離を詰めた。父さんもこうなることをわかっていたようで、すぐに迎え撃てる体制になる。俺は父さんの間合いに入る前に魔法を発動させる。

 自分の前方に【水魔法】で水を作り出し、その水を【炎魔法】で高温に熱する。さらにそれを【氷魔法】で冷やせば、そう、「霧」を作り出すことができるのだ。広い範囲で温度を下げられるわけではないので、霧はすぐに消えてしまうが、幸い僕は魔力量が大きい。だから、消えてしまう分、大量に出せばいいのだ。しかも続ければ続けるほど水分と【氷魔法】の影響で僕と父さんの周りは温度が下がるので、より霧は濃くなる。日ごろの、魔法を練習しておいて助かった。普通の魔力量ならここまでは無理だろう。あとは前世の記憶のおかげだな。

 僕の作り出した霧にさらに【風魔法】で初速を与えてあげれば、その霧は父さんの方へと流れる。これならば、僕の魔法を発動させられる範囲内で可能だ。あとは父さんの周りを回るだけで、視界を奪うことができる。霧を作り出しながら父さんとの間合いを詰める。

 【身体強化】で攻撃力を上乗せし木刀を振るう。だがその瞬間、父さんはそれに反応して木刀を受け止めて見せた。


「なんでっ!?」


 俺があっけにとられると、父さんはこう返してきた。


「悪くない技だ、だが詰めが甘い。そんな間合いの詰め方じゃせっかく視界を奪っても音で丸わかりだぞ。」


 父さんに言われて、俺はハッとする。足音でばれていたのだ。完全に侮っていた。元冒険者という経験のことを。

 僕はそのまま弾かれて霧の外に飛ばされる。身体強化で体は丈夫になっているので無事だが、僕は次の光景に目を見張る。なんと父さんは木刀を振る回すことで霧をかき消したのだ。


「どうした。次の手を見せてくれ。」


 僕はその時の父さんの不敵な笑みに寒気を感じた。一瞬勝てないと思ってしまったのだ。スキルの量と組み合わせだけでは、圧倒的な経験と地力には勝てないのだと。


(いや、あきらめちゃダメだ。今ここで負けてしまえば村を出るのがかなり遅くなってしまう。だがどうすれば...。 ちょっと待てよ。)


 俺はあることを思いつく。なぜ霧を作り出すことを思いつけたのにこんな簡単なことを思いつかなかったのだろう。

 僕は再び立ち上がり、父にこう言い放った。


「この勝負、俺の勝ちだっ!」


「いい自信じゃないか、見せてくれよ。俺を負かせるお前の技を。」


 俺は再び霧を作り出す。今度は先ほどよりも距離を詰めずに離れた位置でだ。離れていれば離れているほど、魔力の消費が大きくなるが、それでいいのだ。一撃で決め切るのだから。

 俺はさっきと同じように父さんの周りを回って霧を飛ばす。


「まさかまた同じ手を使うんじゃないだろうな。今のお前じゃ、視界を奪ったところで俺には勝てないぞ。 ふんっ!!」


 父さんはまた霧を払い飛ばす。しかしその目に飛び込んできたのは、目を見張るものだった。


「なにっ?!」


 視界が開けた父さんの目に入ったもの、それは無数の氷でできた弾丸だった。

 作り出した氷に【風魔法】で速度を与える。じつはこれだけでも遠距離から攻撃できたのだ。しかも作り出せば作り出すほど手数が増える。


「ちくしょうっ!」


 だが驚くことにそれでも父さんは倒れない、何と自らの前で氷をたたき割っているのだ。俺は少しずつ氷に与える速度を上げていく。すると段々と防ぎきれずに父さんへと届き始める。

 しかしまだ倒れない。このままでは耐えきられて、俺の魔力が尽きてしまうかもしれない。少し痛いだろうがこの魔法を使おう。


 僕は氷を飛ばす傍ら、自分の体の前に意識を集中させる。体にある限りの魔力をそこに貯める。僕の体の前が光みを帯びて輝く。僕の体の魔力がほぼ尽きるのと同時にその輝きは絶頂へと到達する。


 次の瞬間、無数の氷の球と共に、僕のもとから父さんのところへと一直線の炎の柱がまるで生きているかのようにうねりながら、そして轟音とともに放たれた。それはまるで龍のごとく。


 そしてそのまま、おれは魔力枯渇でたおれたのだった。


 


 


 どれだけ時間がたっただろうか。どこからか声が聞こえてくる。

 何と言っているのかは分からないが、何を言いたいのかは分かる。俺のことを呼んでいるんだと思う。

 目を開けようとするが、開けられない。周りが見えない。でも何かが目の前にいるのは分かる。瞼は閉じているのだとは思うが、どこからか光を感じる。ほんの少しの神々しささえ感じる。

 俺の前にいる何かが俺に対して手を差し伸べているのがわかる。俺は差し出された手にそっと触れる。

 途端に言いようのない充足感と共に体に何かが流れ込んでくるのを感じる。


(なんか...疲れたな。)


 そして再び俺の意識は遠のいていく。





「...っ! ...ォっ! ...レオっ!!」


 ハッとした。俺は目を覚まして、上半身を起こす。

 とても長い間眠っていたような気がする。なんで寝ていたんだっけ...。そうだ思い出したぞ。父さんと戦っていたんだった。それで最後に...


「魔力枯渇で倒れちゃったのよ。心配したわ。良かった、レオがケガしてなくて。」


 ことの顛末を思い返していると隣にいた母さんが何があったのかを教えてくれた。


「それでどっちが勝ったの?!」


「お前の勝ちだレオ。誇っていいことだぞ」


「ほんとに!!  やったぞぉ!!」


 どうやらみんなの話を聞いていると、最後に放った魔法が勝敗を分けたみたいだ。俺が魔法を放った時にアランさんと、試合を見ていたマーティンさんが本能的にやばいと思ったみたいで、父さんに魔法が届く前に防ごうと割って入ったみたいだった。3人がかりで抑えようとしたため、最悪の状況は免れたが、それでもまだ抑えきれず、結果として三人とも吹き飛ばされたみたいだった。


「危うく寝たきりになるところだったぜ。はっはっは!」


「あなたがレオと試合するなんて言うからいけないんですよ。」


 父さんは冗談っぽく言っているが、実際はマジだったのだろう。そして父さんのことを微塵も心配していない母さん。多分、俺がケガしていなければそれでいいのだろう。


「マーティンさんとアランさんは大丈夫でしたか? ごめんなさい、僕が考えなしに魔法を使ったばかりに...」


「いいってことよ! それにしてもめちゃくちゃ強いじゃねえか、坊主!」


「私も大丈夫だよ。それにしても最後の魔法は素晴らしい威力だったね。誰かに教えてもらったのかい?」


 僕がそういうと、マーティンさんとアランさんは言葉を返してくれた。


「いえ、誰にも教わったことはないです。僕の魔法はまだ遠距離に魔法を飛ばすことができないので、途中で間合いを取るために使った火柱を応用させてみました。自分の近くからなら魔法が出せるので出せる限りの魔力を込めてみました。」


「確かに、魔法のスキルは最初は自分の近くでしか発動が出来なかったね。しかし魔法を大きくすることで距離を稼ぐとは、そんなこと考えたこともなかったよ。」


「ああいった攻撃方法はないんですか?」


「やったことのある人はいるかもしれないが、そういない。そもそも、魔法スキルの成長がまだまだ進んでない人で君ほどの魔力を持っている人は少ないだろう。貴族の子供だったり、由緒ある血統の子は遺伝的にそういったことがあるとは聞いたことがある。あとは小さいころにスキルを使う訓練をしていたとかね。多分君は後者だろう。クリスから聞いたが、なんでも君はすぐにスキルを発現させたみたいだね。普通はもう少し時間がかかるし、君ほど熱心には練習しないだろう。まさしく努力の結晶という奴だろう。」


 どうやら俺はいろいろとやらかしてしまっているらしい。ただ救われたことといえば、決してありえないことではなかったということ。そうだよな、普通に考えたらこんな4歳児は強すぎだよな。


 俺が考え込んでいると、父さんが口を開く。


「まあなんにしろ俺の負けだな。約束通り、狩りには連れて行ってやろう。 お前はまだまだ強くなれそうだ。しっかり励めよ。」


(よっしゃー! とりあえず最初の関門は突破したぞ。これからはトレーニングだけじゃなくて実戦も積めるぞ!!)


 その日はその後も夜まで、俺と父さんの試合の話で村は持ちきりだった。

お待たせいたしました!!

初の小説の中での初戦闘!!うまく描けていたでしょうか。物語の中で最初の戦闘シーンということもありかなり気合を入れて書かせていただきました!

漫画や小説はよく読みますが、戦闘シーンを書くのがここまで難しい思っていませんでした笑

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 「作り出した氷に速度を与える。じつはこれだけでも遠距離から攻撃できたのだ。」 この、時の”速度を与える”なんですけど、魔法に対して物理的(叩いたり)に速度を加えているのか、 そのまま、…
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