引き金
「昨日の深夜3時頃あなたは何をしていましたか」と刑事
『簡単に掃除をしていました。客は1人もいなかったし、来る感じもしなかったので』と私
「それを証明出来ますか?」と刑事
『店の中の防犯カメラがあります。』と私
刑事はその映像を確認し、ため息混じりに訊いてきた。
「昨日、不審な客が来たり不審なことが起きたりしませんでしたか?」
『いえ、不審な人(闇商人がしょっちゅう来るけど)なんて来てないし、店の前は静かでしたよ』
不満げな刑事はメモを終わり眉間にシワを寄せながら頭をかいて、店を後にした。
あのハット男のことは言わなかった。なぜなら、どこかで見たことがあるからだ。店に来たことがあるようなないようなとても曖昧だがどっかで見たことのある顔だった。私は防警カメラを確認した。いやな目付きだ、私を嘲けるような顔でこちらを見つめ、10秒程度でいなくなった。犯行の様子は映っていないしそれらしい音もしない。しかし確実にうちの"常連"は殺された。拳に力がこもる。そのとき、誰かが急いで階段を降りてくる音がし、扉が大きな音とともに開いた。
『すみません。まだ準...あなたは!』
「俺は荘野綉。昨日こちらで亡くなった新井アンドリューと取引をしていた者だ。」
『これは、ゆっくり話を聞いてもいいですか?』
「おう」
彼はそういい窓から1番遠い席に座った。
『飲み物はどうしますか?』
「温かい緑茶をもらえるか?」
『ここはバーですよ?』
「お願いだ。」
私は不思議に思いながらティーパックを使い緑茶を注いだ。荘野のもとへ持っていき、私も席に座り話を始めた。私と闇商人は基本的に金だけの繋がりでお互いの名前など知らない。恐らく「荘野」っていう名前も仮名だろう。だが、何故か荘野は怯えていた。
『あなたたちは何の取引をしていたのですか?』
「それは言えねーぜ。」
『それでは何の仕事をされているのですか?』
「簡単ににいうと殺しだ。」
『このカメラの映像を見てください。警察にはまだ見せてないです』
私は防警カメラの映像を見せた。
『この男に見覚えはありませんか』
「いや...どっかで見たことあるような、あ!そうだ」
彼は目を大きく見開いて言った。
「ありえない!やつは死んだはずだ。絶対に!しかし、なぜ?」
『こいつは何者なんですか?』
「名前は分からないがこう呼ばれていた"闇の残虐サイレント"」
『闇の残虐サイレント?』
「ああそうだ。夜になるとターゲットを殺す。
いかにも静かに残虐にな。」
『といいますと?』
「あいつは、必要以上に人を殺す。四肢を生きたまま引きちぎったり、両目をくり抜いてそこに火のついたマッチを入れたりしていた。」
『なんて残虐な...』
「だからこいつは同業者の中でも恐れられていた。殺しっていう仕事は現場に証拠を残したら終わりだ。長居するのもありえない。だがあいつは大声出しながら人の肌剥いだりしてんだ。狂ってるぜ。」
『なぜ彼は死んだと思われていたのですか?』
「俺らの中であいつは生かしておけねーってことになった。そこでやつに引き金をひいたのが...」
『新井、アンドリュー...』
「そうだ。あいつの拳銃は誰にも劣らない。恐らく世界一だ。あのとき、打ったときに見回りしているサツに気づかれてしまった。全くついてなかったぜ。」
『じゃあ、死体を...』
「恐らくあいつは一命をとりとめたに違いないそして復讐に違いない。」
緑茶はすっかり冷めてしまっていた。
「やつを野放しにすることはできない。アンちゃん一役買ってくんねーか?」
『私でよければ...』