君は?
辺りが暗くなりはじめたときに「いつもどおり。」そうぶっきらぼうに言い放った男は気になるくらいの大股で平然と歩きながら、一番離れたところにあるバーテーブルに座った。ここは、オーセンティックバーの名を借りた闇取引所だ。ただ、来る客全員がそういう人たちだけではない、出逢いを求めに来る女性や疲れを忘れたい紳士、チャラい男とその連れなど、どこにでもあるバーだ。そんなところでなぜ闇取引が行われているのか?それは分からない。防警カメラが地下1回への階段の前に1個。また、13番線道路を挟んだ向かいの店の1つ右の店に1個設置してある。それらの映像はこちらからリアルタイムで確認している。万が一、警察や探偵が探りに来たときは、銅色のシャガイロの布でグラスを拭く。そういうところが彼らにとってはうってつけらしい。やがて、もう1人のそれっぽい男が来店し私は視線で場所を示した。この仕事はもう5年やっている。金はそれなりに貰えるし、景気が悪いこの頃にとっては良い収入源だ。街から声が聞こえなくなるとき、店から誰もいなくなった。さっきの男たちが使っていたグラスを洗おうと立ち上がったとき、カメラの映像越しに怪しい男と目が合った。
「おかしい、おかしいぞ」防犯カメラの位置を知っているのは私とここを愛用する闇商人の数人だけだ。暗くてよく見えなかったが、大柄で黒のハットを被っていた。不気味な笑みを浮かべて口をぱくぱくと動かしてどこかに行ってしまった。逃がすまいとドアを雑に開け階段を駆け上り、防犯カメラの方に走った。しかし、男の姿はなかった。その時、私は驚愕し、瞼が大きく開き
反射的に後ずさった。なんと壁に紅色で
Vengeance
と大きく描いてあった。そして今日取引していた大男が頭から血を流して倒れていた。翌朝、新聞で取り上げられ店の前では捜査が行われていた。