06,
今回は短め
逃げると決めてからすぐに逃げる準備を始めた。
逃亡する先はお隣にある他の御貴族様が治めるアクア領と言う領。
今いるこの領の中でも良かったかもしれないけれど、この領を治める領主様から逃げるのだからこの領を出ておきたい。
所詮この領は領主様からしてみれば庭みたいなもんだからね。
隣の領までは歩きで行くと一週間以上はかかる。
もちろん、私にそんな時間はないので乗り合い馬車で行く。
馬車ならば早ければ一日でいけると思う。
今夜か明日の早朝に出れば間に合うはず。
逃げる方法が決まったのならば次は街に出て必要になりそうなものを買う。
変装用のカツラや、化粧道具、服などを買い、逃亡中に必要になりそうな保存食やナイフなども買った。
宿に戻る頃には日が沈みかけていた。
ちょっと、色んなものに目移りしちゃって、思ってたよりも時間がかかっちゃった。
部屋の鍵を閉め、カーテンを閉めてから一応変装の練習をしておく。
ぶっつけ本番だと不安しかないからね。
さっき買った茶色のショートカットのカツラを被り化粧をする。
すると、鏡には大人しそうな青年が映った。
かなり時間がかかってしまったがかなりの出来栄え。
どうしよう。好みの顔すぎる。この鏡の青年は自分なのに惚れてしまいそう///
いや、惚れてる場合じゃないんだよ。
もうそろそろ宿を出ないと馬車に間に合わないかも。
服を着替え、カバンに持っているもの全てをしまい、カツラを一旦外す。
宿にいる人達に怪しまれたらおしまいだから一応ね、
でも、化粧は落とさない。落とす時間ももう一度する時間もない。
それにこの完璧な仕上がりを落とすのが勿体ない。
帽子を深く被り、猫背になり部屋から出る。
おばあちゃんに宿を出る事を伝えチェックアウトを済ませ、宿を出た。
馬車の乗合所までの途中、目立たなそうな家の影に隠れカツラを被った。
カツラの上から帽子を深く被り、これで完璧。
どこからどう見ても普通の青年にしか見えない。
よし、急ごう。
◇◇◇◇◇◇◇
乗合所に着く頃には日が完全に沈んでいた。
一応買っておいたランプに火を灯し、アクア領行きの馬車を探す。
夜だと言うのに五つほど馬車が止まっている。
それに人も結構いる気がする。皆夜逃げか?
一つ一つ馬車を見ていき四つ目の馬車にアクア領行きの馬車を見つけた。
御者のおじちゃんに乗れるか聞いてみた。
この馬車は六人乗りの馬車らしく一つ席が埋まっただけで乗れると言うこと。
なので一席買い馬車に乗り込み一番奥の席に座った。
この馬車が意外と高くて、一席銀貨六枚だった。
ちなみに、この銀貨は私が元々持っていたやつ。
領主様に貰ったのは十枚ほど貰って後の残りは宿に泊まっていた領主様の騎士さんらしき人(※前話参照)の部屋の前に置いといた。
あんなの持ってたら盗賊に襲われちゃうからね。
それにすごく重いし、あれを持っていたら素早くは走れない。
きっとあの騎士さんに渡したら領主様のところに届けてくれるはず。多分ね。
それに騎士さんだったら守り抜いてくれるはず。
ガンバレ!騎士さん!
おじちゃんが馬車は後一時間ほどで出発すると伝えに来た。
なのでそれまでの間荷物を抱きしめ眠る。
この馬車にはまだ私しか乗っていないし、意外と座り心地が良くてグッスリ眠れた。
目が覚める頃には馬車は走っていた。
寝すぎたのか首とか腰が痛い。
早く馬車下りたいよ、、、
「おや? もう起きてしまったのですか?」
目を擦っていると突然上から声がした。
声のした方を向くとサラサラな黒い髪にエメラルドの瞳の無駄に顔が整っている顔があった。
それはもう大変美しい笑みを浮かべたあの若紳士の一人がなぜか隣に座っていた。
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