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12,

 若紳士が家を出て、早一週間が過ぎた。

 若紳士がいない間私はソフィアさん達と何不自由なく楽しく過ごしていた。

 ソフィアさん達とお話したり、料理を作ったり、遊んだり、仕事をしたりと結構充実した生活だった。


 ソフィアさんはお洒落に詳しく、私の仕事の相談をよくさせてもらったりした。

 相談する度に親身になって乗ってくれてとても助かったし、誰かとこんな風に洋服や刺繍の事を話すことが久々なので結構わくわくしてしまった。


 メアリーさんは恋愛小説を沢山貸してくれた。いつも仕事ばっかりでお疲れでしょうから甘い恋愛小説でも読んで疲れを癒してって。

 渡された本はほとんど身分差の貴族と平民の恋愛小説で、普通なら絶対に有り得ないような非日常を見れて結構面白かった。


 ステファンさんはと言うと意外にも花が好きらしく、花の事を色々教えて貰った。

 私自身花は好きだし、よく花の刺繍をしていたので話が結構合いついつい長話をしてしまったりもした。


 そんなこんなで、三人といると時間があっっという間に過ぎていってしまった。

 若紳士といるのも楽しいけれど、三人といるのもとても楽しい。

 最初ここに来た時は直ぐに出て行ってやるって思っていたけれど、何だかんだ言ってここが安住の地になってしまっているような。

 家はとても綺麗で住み心地がいいし、優しい人ばかりだし。

 ずっとこれからも一緒にいたいと思ってしまった。


 あの方が現れるまでは。




 ◇◇◇


 若紳士が家を出て一週間と少しが過ぎた頃、家にとある女性が尋ねてきた。


 豪華な馬車に乗ったその人はレンガの屋敷の前に止まった。

 丁度私はその時レンガの家に居て、その人が来た時を窓から見ていた。

 豪華な馬車が家の前で止まったと思ったら、金色の長い綺麗な髪にこれまた派手なドレスを着たTheお貴族様が出てきたもんだからビックリしてしまった。


 彼女は庭に目もくれることもなく家の扉へ一直線へ向かって来た。

 女性が来たのに気付いたのか、ステファンさんとソフィアさんが急いで外に出てその女性と何か話していたがかなり難しそうな表情をしていたのが見えた。


 私はメアリーさんと一緒に窓からその様子を覗いていた。

 その時にメアリーさんにあの方を知っているのか尋ねると、『貴族社会って色々面倒臭いんですよねー』と帰ってきただけで答えにはなっていなかった。


 んー、若紳士のお知り合いなのかしら。

 だとしたら今若紳士はいないのだけれど。

 あ、だから揉めているのかしら。


 そんな呑気な事を考えているとメアリーさんがあの方の事を話してくれた。

 あの女性は“ダリア・イザベル”様と言って伯爵家のご令嬢らしい。

 あの方は若紳士たち兄弟の幼なじみであり、昔は実の姉弟のように仲睦まじかったらしい。

 今はみんな大人になり昔ほど会う機会は無くなったものの、時々会ってお互いの近況報告をしているとの事。


 そんな女性が若紳士のいない時に何故ここに来たかと言うと、それは私に用があったかららしい。



 メアリーさんと話している途中、部屋の扉がバンッと大きな音をたて開いた。

 慌てて扉の方を向くとニッコニッコ笑顔の女性と、慌て気味のステファンさん、無表情のソフィアさんがいた。


 つい話に夢中になって窓の外を見るの忘れてた……。

 女性は一歩、さらに一歩と私に近づいてくる。

 近づいてくる度に威圧感が強くなっているような、ないような。



「貴方が、リリーさん?」



 私の目の前で止まり、声をかけてきた。

 間近でみると本当にすごい。

 金色の髪は見ただけでも分かってしまうほどさらっさらで、目も髪に負けないほど綺麗な金色に輝いている。

 肌も透き通るように白く、傷一つない綺麗な肌で赤い口紅が映える。

 本っ当にお人形さんみたく綺麗。

 そんなお人形さんがThe平凡なこの私に用があるの?



「そ、そうですけど……何か私に用でしょうか?」

「ええ、そうよ。でなければあの子がいない時にここに来るわけないわ」



 ですよねー。

 女性は私が私と分かると腕を掴み、別室へと移動した。


 先程までいた部屋は本が並べてある少し狭い一室で、移動した部屋は談話室になっていて結構広い。


 そんな広い部屋で私はその女性と二人きり。

 メアリーさん達はお茶やお菓子を置いて下がってしまった。

 否、元々傍についていてくれたのだけれど、女性に下がってと言われ渋々下がっていってしまった。


 どーしよっかなー、これ。

 だだ広い部屋に二人っきりってのも嫌だけれど、それ以上にお貴族様と二人きりっていう空間が嫌だ。

 胃が痛い。



「ずっと会いたかったわ。リリーさん。ようやく二人きりになれたわね」

「そ、そうですね」

「ふふ、そんなに怖がることはわよ。別に取って食おうとしているわけではないの。ただ少し貴方と話してみたかっただけなのよ」



 二人きりになって数分の沈黙の後、女性が口を開いた。

 怖いんです。

 怖がるなと言われても怖いんです。

 今まで会ってきた貴族の方はもっと、なんか、こう、すっごいラフだったんです。

 なのに、今目の前にいるお方は扇で口元を隠して、リアルに目が笑っていない状態で「おほほほほ〜」って言っててなんか怖いんです。



「ねぇ、リリーさん。会ったばかりで悪いのだけれど単刀直入に聞くわね。あの三男坊の事どう思っているの?」

「へ?」



 唐突に、本当に唐突に聞かれた事に素っ頓狂な声が出てしまった。

 三男坊って若紳士の事だよね?


他の小説も書いているので明日は無理かもしれないけれど多分一週間内に次話が投稿されると思いますm(_ _)m


もしよろしければ評価などよろしくお願いします┏○┓

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