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【若紳士視点】前編

生きてます


[お知らせ]

【第十一話】なのですが、次話に繋げにくかったので消しました。若紳士の話が終わったら十話の続きを書く予定です。ご迷惑をおかけします。


今回は若紳士視点です

 俺はとある、長い歴史を持つ由緒正しい貴族家の元に生まれた。


 と言っても、自分は三男で親の跡継ぎでもなく、スペアでもなかったので、結構自由気ままに過ごしてきた。


 子供時代は適当に剣を習って、成人してからは適当に王宮騎士団に入り、特に出世欲がある訳でもないのであまり目立たないように適当に過ごしていた。


 両親はそんな俺を見ても何とも言わないばかりか、「犯罪や不誠実な事をさえしなければ全然もっと自由にしてくれていいよ」と言ってくる。

 父は母や自分の子供達と家の使用人に対してはとことん甘い。

 母の事を女神と言い、子供達の事を天使と言い、使用人達の事をファミリーと言っていた。

 女神や天使、ファミリーを傷つけ穢すものは一切許さないと酒を飲む度に言っていた。

 母も父と自分の子供達と使用人に(ry

 父の事をアナタと言い、子供たちの事をお人形さんと言い、使用人達の事を家族と言っていた。

 父とは違い早く孫が見たいと、成人していないお人形さん達に本気なのか冗談なのか言っていた。


 そんな両親(親バカ)の元で育った兄達は弟の俺から見ても一切穢れのないピュアッピュアな人達に育ってしまった。


 だけれども、ちゃんと兄達は立派な跡継ぎになるべく、幼少の頃からそれぞれに厳しい家庭教師を付けられ、朝から晩まで真面目に勉強していたのを覚えている。


 翻って俺は、幼少の頃から勉強はあまり好きではなかったので、両親に「勉強の講師ではなく剣の講師を付けて」と上目遣いで頼むと、翌日には過去に王宮騎士団の団長をしていた人が家にやって来た。


 その師匠(元団長)は、まぁ、何とも、アレな、所謂“プレイボーイ”と言うやつで、稽古の休憩時間に今まで出会ってきた女性の話をしてきた。十もしない子供に。

 そんな師匠の話を聞いて成人した自分は兄達とは違い、ピュアではない、煩悩のある一般的な成人男性に育った。

 が、一応両親達の背中も見て育ったので生涯愛する人は一人と決めているし、愛する人以外とは枕は交わさないと決めている。


 そんな自分の中の決め事のせいでまさか、チェリーなボーイのまま生涯を終えることになるかも知れないとは思いもしなかった。



 俺はとあるお針子の()()女性に一目惚れしてしまった。

 それは、確か暖かい風が吹き、色とりどりの花が見えるようになった頃だった。




 仕事の長期休暇中に領地にある本宅へと戻った。

 その時お忍びで市街に行き、たまたま目に入った洋服店。

 両親の結婚記念日が近かったのもあり、何かプレゼントでも買おうとその店に入った。

 店内には美しい刺繍が施された服やハンカチ等が並び、真ん中には贅沢にレースが使われた何とも美しいドレスがショーケースに飾られていた。

 この店に入って正解だった。


 美しい品物を見て歩いていると、一瞬従業員だかの控え室らしき部屋の扉が開き、その奥に、椅子に腰掛け白いハンカチに何か刺繍を施している女性が見えた。

 窓から射し込む光に照らされるその女性はとても美しかった。


 ほんの数秒しか見えなかったが、その数秒で、刺繍をする真剣な眼差しや、美しく洗礼された無駄の無いその動きに目も心も奪われた。


 扉が閉じた後もしばらくは扉を見つめ突っ立っていたと思う。

 離れようにも足も目も動かなかった。



 この日俺はどうやって家に帰ったのかは分からない。

 ただ、家に帰ってからはいつもとは違う俺の様子に気づいたのか両親から質問攻めにあったのは覚えている。

 何故親はこうも子供の色恋沙汰に鋭いのだろうか。



 彼女と出会ってからは人生が百八十度回転した。


 両親からいつも聞かされる二人の出会いから結婚までの長い道のり()。そして薔薇色のラブラブ新婚生活。そして子供達を授かり、今も二人で仲良く夫婦をしている、と言う馬鹿みたいなイチャイチャ自慢話。

 昔はこの話を聞くのが嫌で嫌で仕方がなかった。親のイチャイチャ話など聞きたくもない。それに毎回同じ内容を一語一句変えずに話すのでつまらない。

 が、今は楽しくてしょうがない。自分も彼女とこんな風に仲良し夫婦になるのかと妄想を膨らますのは楽しくて仕方がない。

 何回聞いても飽きない。


 少しでも恋愛知識を得ようとあんなに毛嫌っていた、恋愛小説を愛読するようになっていた。

 昔、【婚約破棄されましたので平民として自由気ままに恋愛を楽しもうと思います!】と言う何とも馬鹿げた小説を読まされたことがあった。その時は『そんなに簡単に婚約破棄出来るわけない』だとか馬鹿にしながら読んでいたけれど、今読んでみるとなかなかに面白い。

 自分も貴族なんて堅苦しいものは捨てて彼女と自由に生きてみたい。


 そして、恋愛小説を読むようになってから数日後、自宅の本棚から【これを身につければ必ず好きな女性に振り向いてもらえる50のテクニック!】と言う何ともタメになりそうな本を見つけた。


 えーと、なになに。

 早速本を開いた。


[1、身だしなみは清潔に]

好きな女性に振り向いて欲しい方は“清潔”を心がけましょう。

必ず毎日お風呂に入り身だしなみを整え、香水は必要最低限に。

え?何故清潔にですかって?そんなの決まっているでしょう?

汗ダックダクの髭モッサモサの体臭キッツキツの汚い人が隣にいるのは男の人は嫌でしょう?それは当然女の人も嫌なので身だしなみは清潔に保ちましょう。


「2、スマートな健康体に」

好きな女性に振り向いて欲しい方は“健康体”を心がけましょう。

必ず毎日運動して、健康的な食事を取り健康的な生活を送りましょう。

え?何故健康体にかって?そんなの決まっているでしょう?

お腹ブッルンブッルンないかにも不健康そうな人は嫌でしょう?好きな人とは長く一緒にいたいもの。その為には健康第一!さぁ!レッツ長生き健康生活!



 な、なんだこのタメになり過ぎる本は!?

 まだ2頁しか読んでいないが、2頁だけでもタメになる。

 コレを読めば彼女に絶対に振り向いて貰えるはずだ。

 よし少し拝借しよう。


 こうして始まった恋愛勉強生活。


 この時もまだ()()を知らずに恋に浮かれていた。

誰かチェリーボーイを止めて

自分の中の若紳士のイメージが壊れていく



もしよろしければ評価や感想よろしくお願します┏○┓

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