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まがいもの軍師の国取物語  作者: 田辺千丸
精霊信仰の国
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第19話 出陣

 王都の宮殿前から城門まで一直線に伸びる道の沿道えんどうには多くの人が押し寄せ、その道の中央を甲冑かっちゅうを着た騎士や長い槍を持った兵士などが行進してゆく。

 馬たちも重そうなプレートを着けられて轡並くつわをならべており、チャリオットを引いている馬も見える。

 ゴンド王国への援軍は、王の近衛このえ軍や第一王子の軍などで、二万を超える大軍勢となっており、その壮大そうだいいさましい姿を誇示こじするかのように、出陣式が行われていた。

 もちろん狭い王都の街道に全ての兵士が入るわけもなく、限られた兵以外は城門の外で隊列を組んで出立の時を待っている。


「…壮観そうかんですね」

「うむ。そちの働きのおかげで、実に素晴らしい出陣となった」


 王の隣で、テミッドは深々と頭を下げて王に答える。


此度こたび遠征えんせい、そなたにとっても得るものが多かろう。よくはげむのだぞ」

「はい。王よ。ですが、帝国におくれを取れば…」

「我が軍は二万を数える大軍。それにゴンドの陸戦兵力は世界屈指のつわものどもだ。負けることなど、あるわけがない。して、そなたの後ろにひかえておる者は?」


 王がテミッドの後ろを見ると、黒い衣を着た男が深々とお辞儀をして控えていた。


此度こたびのために召抱めしかかえました。私の軍師(・・)にございます」

「…ジバと申します」


 ほう、と王はジバと名乗る男を見る


「…そなたの働きに期待する」


 その言葉に深々と頭を下げる男を見て、王は言い知れぬ不安を抱くのだった。


※※※※※※※※※※


―出陣式の数日前


 冒険者ギルドで用事を済ませ、一旦シンと別れて一人、王女の宮殿に戻って来た。


 宮殿の中を進み、一直線にアリサの部屋へと向かう。


 途中の広間でエマと出会でくわすが、彼女は自分の顔を見るなり、スッと身を引いて道をゆずってくれた。


「…良い顔になりましたね」

「エマさん、俺は…」

「それを言うべきは、私にではありません。…今の貴方あなたなら、大丈夫でしょう」


 そう行って、エマは広間から退室していく。


 そして自分は、アリサの部屋の前に立った。


※※※※※※※※※※


「…お別れでも言いに来たの?」


 部屋にむかえ入れるなり、突き放すような言葉を投げ掛けるアリサ。


 そんな彼女を見て、なぜか顔が緩んでしまう。


 みを見せるこちらを見て、彼女は怪訝けげんそうな顔をする。


「…あなた、私を馬鹿にしているの?」

「スマン、そんなつもりじゃ…」

「違わない!あなた、私を笑いに来たんでしょ!?」


 弁解しようとした自分を他所に、アリサは珍しく感情的になって、食ってかかってくる。


「私が、しっかりしなきゃいけないのに!私が、なんとかしなくちゃいけないのに!私が…」


 め込んだものがあふれ出るように、涙を浮かべながらうったえかけてくるアリサ。

 重圧プレッシャーに押しつぶされそうな、年相応としそうおうの姿を見せる少女の肩には、緑の聖霊が乗っていた。


―あるいは、それは呪いなのかも知れない。


 そんな少女の正面に立ち、そっと両肩に手を置き、真っ直ぐに彼女の目を見る。


「やらなきゃいけないことがある。だから、一緒に行く」


 自分を見る目に、期待と不安が入り混じる。  


「…また、あの時(・・・)みたいなことが、起こるかも知れないのよ」

「ああ」


 辺境で失ったものの姿が思い浮かぶ。


「…死んで、しまうかもしれないのよ」

「ああ」


 いろんな人に背中を押されて固まった覚悟。そんなに簡単に、らぐことは無い。


 そして最後に、涙が溢れてしまった彼女の目を改めて見て、こう言った。


「俺を、一緒に連れていけ」


※※※※※※※※※※


―王都の北に数キロの地


「あ〜ぁ、ありゃド派手な式典だなぁ。それに比べて、こっちは味気ねぇなぁ」


 デルトは王都の方を見ながら、そんなことを言っていた。

 ここに集まっているアリサの兵は、予想以上に少ない。既に北の地にて兵站へいたんの確保と部隊移動のための準備を進めているのだ。


「…ヒサヤ、その子は?」


 シャルが初めて見る少年の方を見て尋ねてくる。


「俺はシン。よろしくな」

「付いて来ると言って聞かなかったんだ。武器も持ってないって言うのに…」

「…弓でいいなら、教えてあげる」


 今まででは考えられないこと言い出すシャルに、戸惑う自分と、目を輝かせるシン。


「本当に?いいのか?」

「ええ。ただ、すごく厳しい」


 ウゲェと顔をしかめるシンに、相変わらず無表情のシャルの対比が面白い。


「面白ぇとこに居るみたいだな」


 今度はそんなやり取りを見ていたヒルが、こちらに近づいてきた。


「少数だが、腕の立つのを連れてきた。頼ってもらっていい」


 ヒルの後ろには、男女数名の冒険者がいた。

 一人ひとりが相当の実力者であるのが、雰囲気だけで伝わってくる。


「まぁ、俺には敵わないだろうがなぁ」


 そう笑いながら、ヒルは自分の腕をバンバン叩いて笑っていた。


「あなた達、遊びに行くのではないのですよ」


 騒がしいこちらをエマが注意するのを見ながら、アリサは微笑んでいる。


「それじゃ、私たちも行きましょうか」


 そう言うと、アリサの号令に従い、黒い羽の旗を掲げた軍は北方に向けて出陣するのだった。


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