表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

32/45

夏の蜃気楼

 日々が過ぎて行きました。暑すぎて寝てました。蝉の声が響きました。

 やりたいことがありました。やるべきことがありました。それをぼんやり眺めていました。

 存在が薄れてゆきました。ベッドには誰もいないのでした。そんな風景が浮かびました。

 体が軽くなりました。部屋は暗くなりました。短い夜がやって来ました。


 また朝が来ました。時間だけが過ぎて行きました。蝉の声が響きました。

 目指す理想がありました。叶えたい夢がありました。それをただ眺めていました。

 汗が流れてゆきました。感覚が麻痺してきました。なんだか悲しくなってきました。

 何もかも面倒になりました。何もかもわからなくなりました。また夜がやって来ました。


 夜は足早に過ぎました。窓から朝日が差し込みました。蝉の声が響きました。

 思っていた事がありました。考えていた事がありました。それを遠くから眺めていました。

 息苦しくなりました。海の底に落ちていくようでした。現実と夢が混ざってしまいました。

 混沌が部屋を満たしました。憂鬱が部屋を満たしました。夜が訪れたようでした。


 何故だか朝はやって来るのでした。ただ煩わしく思いました。蝉の声が響きました。

 ダメな事がありました。それを諦めたいと思いました。しかし諦める事すらもダメでした。

 無理だと叫びました。出来るだろうと思いました。出来るくせに何もしないのでした。

 日が傾いてきました。ただ涙が流れました。夜が涙を包み込みました。


 優しく儚い嘘がありました。優しく儚い涙がありました。優しく儚い現実がありました。

 遠く誰かが笑っていました。遥か遠くで口笛が聞こえました。遠くで誰かが死んでいました。

 社会がありました。世界がありました。全てがあるなんて虚言なのでした。

 日は昇り日は沈み。それでも僕は生きていました。蝉の声は止みました。

 明日からは一人で生きていかねばなりません。

 初めから分かっていた事だったのです。

 誰のせいでもないのです。

 悲しい願いがありました。悲しい答えがありました。悲しい現実が広がっていました。

 それでも生きてゆかねばなりません。

 夏は何時か必ず終わるでしょう。それでも人生は終わらないのです。


 夏の蜃気楼。

 今となっては遥か遠くの。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ