夏の蜃気楼
日々が過ぎて行きました。暑すぎて寝てました。蝉の声が響きました。
やりたいことがありました。やるべきことがありました。それをぼんやり眺めていました。
存在が薄れてゆきました。ベッドには誰もいないのでした。そんな風景が浮かびました。
体が軽くなりました。部屋は暗くなりました。短い夜がやって来ました。
また朝が来ました。時間だけが過ぎて行きました。蝉の声が響きました。
目指す理想がありました。叶えたい夢がありました。それをただ眺めていました。
汗が流れてゆきました。感覚が麻痺してきました。なんだか悲しくなってきました。
何もかも面倒になりました。何もかもわからなくなりました。また夜がやって来ました。
夜は足早に過ぎました。窓から朝日が差し込みました。蝉の声が響きました。
思っていた事がありました。考えていた事がありました。それを遠くから眺めていました。
息苦しくなりました。海の底に落ちていくようでした。現実と夢が混ざってしまいました。
混沌が部屋を満たしました。憂鬱が部屋を満たしました。夜が訪れたようでした。
何故だか朝はやって来るのでした。ただ煩わしく思いました。蝉の声が響きました。
ダメな事がありました。それを諦めたいと思いました。しかし諦める事すらもダメでした。
無理だと叫びました。出来るだろうと思いました。出来るくせに何もしないのでした。
日が傾いてきました。ただ涙が流れました。夜が涙を包み込みました。
優しく儚い嘘がありました。優しく儚い涙がありました。優しく儚い現実がありました。
遠く誰かが笑っていました。遥か遠くで口笛が聞こえました。遠くで誰かが死んでいました。
社会がありました。世界がありました。全てがあるなんて虚言なのでした。
日は昇り日は沈み。それでも僕は生きていました。蝉の声は止みました。
明日からは一人で生きていかねばなりません。
初めから分かっていた事だったのです。
誰のせいでもないのです。
悲しい願いがありました。悲しい答えがありました。悲しい現実が広がっていました。
それでも生きてゆかねばなりません。
夏は何時か必ず終わるでしょう。それでも人生は終わらないのです。
夏の蜃気楼。
今となっては遥か遠くの。