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第二十八話 関係

「しかし、そうなると、リルーの推測が正しいということになります! それだけは考えられません! あり得ないとしか言いようが……」

「しかし、現にこういう意見が出ていることは明らかだ。時間は。どれぐらいで落下する推測だ。……いや、それは既に聞いていたな、二時間だったか。こうもしちゃあいられん。一先ず小島には誰も向かわないようにしろ。そして、我々は厳戒態勢を敷く。その意味が分かるな?」

「……村民にはお伝えしないおつもりですか?」

「伝えないわけがあるか。今から私が話をする」

「村長が直接、ですか」

「そうだ。それ以外にどの方法があるというのだ」


 村長は会議室の奥にある一室へと向かう。そこには放送設備があり、村の一周に設置されているスピーカーからその声を聞くことが出来る。

 マイクロフォンのスイッチを入れ、声を発し始める。


「……これより、緊急の情報を報告する」


 その言葉は、村の中へと響き渡っていく。


『今、空を見上げれば分かることだが、何かが落下してきている。それについて、不安を感じている人も多いことだろう』

 外で待機しているラムスは、スピーカーを通してその言葉を聞いていた。


「結局、隠しきれない、と判断したわけ、か」


 誰にも話すでも無い、その言葉は誰にも届くことも無い独り言だった。


『そして、それは北東の無人島へ落下する見通しが立っており、落下による衝撃も懸念されている。推測では未だ確立出来ていないが……恐らく、村にも衝撃が発生する可能性がある。なので、今から外出を禁止する。また無人島への移動も禁止とする。もし、現時点であの無人島へ向かっている存在を知っていたら、情報を提供して欲しい』


 ぷつり、とスピーカーから音が聞こえ、放送が終了したのをラムスは感じた。


「……何というか、呆気ない説明だったな」

「おい、ラムス。何してるんだ?」


 親衛隊の一人、ピローが声をかける。


「おう、ピロー。どうしたんだ、急に。君から声をかけるなんて珍しい」

「お前がここでぼうっとしているから気になったんだよ。……で、あの話聞いたか?」

「あの話? 今、村長が言っていたことのやつ? だったら知ってるよ、ちょいと野暮用をしていたら運悪くというか運良くというか、その話を聞いてしまってね」

「そうか。だったら良いんだ」


 隣に腰掛けるピロー。


「何というかさ、……俺、怖いんだよ」

「怖い?」

「急に何かやってくるという感覚だよ。分からないか? なんと言えば良いかな、そのやってくる感覚がまるで肌に虫がざわざわと動いているようなそんな感覚だよ。……とはいえ、俺たちリザードマンの肌は硬い鱗で覆われているから、そんな感覚もあまり感じられないといえば感じられないのだがな」


 リザードマンは、背中を中心に堅い鱗に覆われている。

 しかしながら、お腹や膝裏といった部分は鱗ではなく柔らかい肌で覆われていることから、決してその防護は完璧とは言いがたい。

 だからこそ、兵士や親衛隊になったリザードマンは鎧を着けることを強制としている。そうしなければ心臓を狙われる可能性が非常に高いからだ。弱点を常に出しているのと等しい訳だから、それをわざわざ見せつける兵士など居るわけが無い。だから現に、親衛隊であるピローやラムスも鎧を着けているわけだが、


「……俺たちも、どうなるのかな。一度寮に返されるのかな?」

「可能性は高いと思うけれど、なんとも言えないよな。何せ、俺たちの目的は村長の警護だ。でも村長の家に武器を持ち込むことは緊急時を除いて禁じられている。それに今は重要な会議中だし。……案外、俺たちの命なんて軽く思われているかもしれないぜ」

「……どうだか。ま、俺たちはあまり考えない方が良いんじゃ無いか。とにかく今は、村長の警護のことだけを考えて……」

「やれやれ、何というか、いつまでもお前達は真面目のようで不真面目な連中じゃのう」


 そう言われて、ラムスとピローはそちらを向いた。

 そこに居たのは、村長の補佐であるバルダルスだった。

 バルダルスは老齢のリザードマンであり、村長よりも年齢が上だ。だから村長になってもおかしくはないのだが、バルダルス自体がそれを嫌悪しており、現在の補佐役に収まっている、というのが噂の範疇で語られている。

 バルダルスの話は続く。


「今、親衛隊として働いているお前達を特例で村長の家に入れることとなった。勿論、武器も装備したままで良い。何かあったとき、直ぐに向かえるようにするためだ」

「俺たちを……村長の家に、ですか?」

「どうした、何か問題でもあるか?」

「い、いえ。何でもっ」

「じゃあ、早く入って来なさい。……直ぐに村長の家は閉鎖する。衝撃に備える為だ。学者どもの噂によれば、地震が発生するとも音速の波(ソニックブーム)が発生するとも言われておる。いずれにせよ、外に親衛隊を放置して置いて、殺すわけにもいかないのが今の状態だ。いいかね」

「わ、分かりました」


 ラルスとピローは急いで立ち上がると、踵を返したバルダルスの後をついて行く。

 そうして彼らは中に入る。


「失礼します」


 ラルスとピローはほぼ同じタイミングで頭を下げると、そのまま中へ入っていく。

 かしゃり、かしゃり、と鎧の金属がこすれる音が響く。


「……あの、取りあえず鎧だけ脱いだ方が良いですか?」


 ピローの問いに首を傾げるバルダルス。


「何故じゃ?」

「いや……会議とかしている中で、この音を出すのは少々集中が途切れるんじゃないかなーって……」

「特に気にしなくて良いですよ」


 そう答えたのはリルーだった。


「……あなたたちは、僕たちに無い力を持っている。そしてその力を使って村長を守っている。それって、立派なことじゃないですか。だから、別に気にすることはありませんよ」

「……リルー」

「……ありがとう。こういうときじゃ無いと、君たちに会えないし、話をすることも出来ない」


 リルーは頭を下げる。


「い、いや。君たちは別に何もしていないってわけじゃあないだろう? 僕らには……はっきり言ってしまって、学がない。でも学者になっている君たちはいろいろな作戦を立ててくれている。持ちつ持たれつの関係、とでも言えば良いのかな。そういう風に思えばいいんじゃあないかな」



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