店員としての初日
『じゃあまず、砂那ちゃんには見習いとしてこの下の喫茶店で働いてもらうわ。』
「はい。」
『これがこの店の制服よ。着替えくれる?』
そう言って出されたのはどこにでもある喫茶店の制服だった。
『あら、似合ってるじゃない。』
「そうですか?」
『えぇ、とっても。』
『まず仕事は簡単なものから覚えて行きましょう。』
そう言って店に戻る茜さんの後をついて行く。
『まず、接客には笑顔が大切よ。』
『そして挨拶。』
『このコーヒーあちらの席まで運んでみて?』
「はい」
そう言われて、慎重にそれを席まで運ぶとそこに居たのは厳つそうな男の人達だった。
『おい、姉ちゃん、』
「は、はい、なんですか?」
『あんた、新入りか?』
「そうです。どうかしましたか?」
『あまり見ない顔だからちょっとな』
「そうですか。」
あんな厳つい男達に初めて声を掛けられて、心臓が止まるかと思った。
『どうだった?』
そう茜さんに声を掛けられる。
「緊張しました。」
すると、スーツ姿の男が1人店に入ってきた。
『いらっしゃいませ。』
一斉に定員達が声を揃え、客を出迎える。
しかしその客は席には向かわず、マスターを呼んでくれと、私達に頼んだ。
頼まれた通り、マスターを呼ぶと、マスターの顔はさっきとは別人のように真剣な顔つきになっていて、男を店の奥に連れて行った。
店にその男が来ると、あの厳つい男達や、さっきから静かに本を読んでいた女性は会計を済ませ店を出ていた。
「あの人、誰なんですか?」
『あの人はね、死神協会って言う死神をまとめあげ、死んだ後の魂の行方を管理し、死後の世界を管理する、死神の中でもエリート集団の人よ。』
「なんでそんな人がここへ?」
『死人達の経歴などのファイルは私達がそれぞれ作っていて、それを作り上げたら定期的にあの人まとめて渡すの。』
「へぇー、そうなんですか。」
『もうすぐ閉店時間ですし、店を閉めましょう。』
そう一人の定員が言う。
『ええ、そうね。』
『じゃあそろそろ片付けましょうか。』
そういえば、ヒルカさんどこに行ったんだろう。死神の仕事かな。
テーブルを拭いたり、ティーカップを運んだりと、みんなの片付けを私も少し手伝う。
ガチャっとドアが開く音がした。すると、スーツを着たさっきの男が、奥の部屋から出てくる。そして、颯爽と店を出て行く。