アルビレオの邂逅 12
抱き合う二人。───漸く、落ち着いて。
彼女にリタを紹介した。ディアムは勿論まだ正規従業員ではなくロースクール生である自分までも支えサポートしてくれる、ディアムと自分になくてはならない存在。
「レティよ、ミユキ。───二人からたくさん話は聞いているわ。よろしくね」
「はじめまして、レティ。よろしくお願いします」
それから、ぺこりともう一度頭を下げる。
「───ともりのこと、どうもありがとうございます」
それは想いが詰まった言葉だった。
これまでの時間総てを込めて紡がれた言葉だった。
「───いいえ、いいの。……いいのよ」
レティの声が一瞬潤んで。───ふわりと微笑う。
ディアムがそっと、レティの肩を叩いた。
「───ここに落ち着くんだろう?」
穏やかに言われた言葉に彼女はにこりとうなずいた。
「うん、暫くはどこにも行かない」
その言葉にどきりとした。眼を見開いて彼女を見つめる。
───暫く?
「仕事請けるとどうしてもロケとかで出張になる場合があるから……暫くは仕事はお休みしてゆっくりしようと思って」
そう続けられた言葉にほっとする。───そういう、意味か。
「仕事再開したらたくさん働いて、稼いで貯金して……」
ぐっと彼女が拳を握った。
「結婚資金にする!」
沈黙。
静寂。
「───よかったな、トモリ」
それを破った、……笑みを多分に含んだ声。
「プロポーズするまでもなく。───答えを貰えたようだぞ」
「っ……」
「え? ……ん、あ……」
思い至ったのか。───か! と彼女の頬が真っ赤に染まった。
「っ、みーさん!」
堪らなかった。抱き付いて抱きしめてぎゅうぎゅうに力を込める。腕の中、彼女が引っ繰り返った悲鳴を上げる。
「うれしい、うれしい……! でもちょっと待って! 俺が卒業するまで! ひとりの人間としてきちんと学業修めて就職するまで! そしたら言うから、俺から言うから! お願い、それまで待ってて!」
「は、はい!」
「あと俺から言うからみーさんからは言わないで! 俺の夢なの! 高校時代からの俺の夢なの!」
「はい……!」
信じられない。───幸せがこんなにも輝く愛おしいものだなんて。
そこに自分がいるだなんて。
それでも、ここに辿り着くまでの自分の努力や苦しみや笑顔や血はしっかりと染み付いていて。
自分の力と、支えてくれたたくさんのひとたちの力で辿り着けたのだと、これ以上なく実感出来て。
微笑った。───腕の中で、彼女も微笑った。




