アルビレオの邂逅 6
「っ……っ……!」
言葉は、───声にならなかった。
ぼろぼろ涙を流しながら抱き付く。───ともりも。
ミユキを強く強く抱きしめた。ミユキよりも強い力で。ミユキを決して傷付けない力で。
ともり。ともり。───ともり。
「ともりっ……ともり、がっ……も、もう、ちがう、じんせいっ……ちがうひと、すきになってるかもって、おもってっ……!」
「なるわけがない。一生みーさんだけ。ずっとずっとみーさんだけ。……ごめんね、ずっとずっと、この日を待ってたから、ずっとずっと、この日を望んでたから。───浮かれてた、みたい。みーさんが俺のものになったって、勝手に思って浮かれてた」
「っ……」
「みーさんが。───人を待たせることが苦手なみーさんが、自分から俺に何か言えるような人じゃないって、少し考えれば分かるはずなのにね」
───待たせて、待たせて、待たせて。
いつか帰るという約束のみ置いて、姿を消して。
そんな人を。───そんなミユキを。
まだ好きでいてくれるかなんて、───どうして訊けるというのだろう?
ずるい。酷い。───なんて、残酷。それなの、に。
それなのにともりは、全てを赦す。
全てを赦して───漸く捕まえた、と、うれしそうに微笑ってくれる。
「みーさん」
「……はい」
「好きです」
「わたしも、好きです」
「みーさん」
「はい」
「愛してる。みーさんとずっと一緒にいたい。
何度でも言う。みーさん以外は要らない。……結婚を前提に、俺と付き合ってください」
大好きな人が、何度でも。
何度でも、何度でも、ともりがミユキを呼ぶ。
「……はい」
抱きしめる。───抱きしめ返される。
───漸く、漸く捕まえた。
「……みーさんは俺の」
「はい」
「誰にもやらない」
「はい」
「みーさんが愛してるひとを含めみーさんを愛してる。……今度どこかに行く時は俺も一緒。俺の心も身体も、全部あげるから───心も身体も、全部俺にちょうだい」
「はい。……ねえ、ともり」
「なに?」
「やりたかったことがあるの。やってもいい?」
「いいよ。なに?」
そっと、ミユキは身を引いた。
眼を閉じて。───ふわっと顔を寄せる。
ともりが小さく息を吞む音がして。───唇を重ねた。
永遠よりも長い数秒。
こぼれ満ちる、幸福。
ゆっくりと身を引いて───至近距離で、眼を合わす。
ふは、と、微笑った。……ゆっくりと涙が頬を伝うのが分かった。
「ともり、愛してる。愛してる……彼女になったから、キスしていいよね……?」
瞬間、ともりが動いた。




