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アルビレオの邂逅 4


 数年ぶりの彼女は、───美しくなっていた。

 凜とした美しさは、深まったやわらかさと合わさり彼女だけのあの静謐な空気をより濃くし。

 その不思議に染まる髪も。全てを吞み込みそのまま映す海の底の光のような深い深い色をした眼も。

 小さな身体はそのままに。───ただひたすら、その存在感だけを印象深く深め。

 ───とても美しい女性になっていた。

 出会った全てのものを吞み込んだのだろう。

 どれだけ苦くとも、どれだけ辛くとも。

 ───全てを吞み込みそのまま映して来たのだろう。

 人として。女性として。───本当に魅力的になって、帰って来てくれた彼女を。

「……」

 ───ただひたすらに。───抱きしめたかった。

「……みーさん」

 泣きながら自分の作った料理を食べ、それでもまだひっくひっくと小さくしゃくり上げる彼女を前に。

 そっと。───手をのばした。

 真っ赤に染まった大きな眼で見上げて来る彼女。───まるで、子供のように。

 たまらなくなって、───抱き上げた。

「ふぁっ……」

 向き合うような形で。それこそ、子供を抱っこするかのように。

 抱きしめて。───ソファーに座った。

 驚いたような、どうしたらいいのかわからないような顔で自分を膝の上に乗せられ少し高い位置から見つめて来る彼女に───微笑って。

 そっと眼を伏せて。───ずっとずっと触れたくて堪らなかった髪の滑らかな感触を味わいながら、小さな頭を引き寄せた。

「っ……」

 途端。───彼女が。

 びくりと震えた。───怯えたように。

「───」

 眼を開ける。───あとほんの少しで触れる、その距離で。

「……」

 彼女が。───息を止めていた。

「……」

 じっと。───見つめ合って。

「……みーさん」

 そっと、───髪を撫でる。

「……ごめんね、怖かった?」

「っ、」

 はっと我に返ったように彼女が息を取り戻して。それからふるふると首を横に振る。

「ち……が、う。……こわく、ない」

「そっか。……ごめんね、急いた」

「っ……」

 ううん、ううん。首を横に振り続ける彼女。───昨日、何度も触れた唇が。

 眼の前で堪えるようにきゅっと結ばれる。

「……」

 帰って来てくれた。───自分のところに。

 名前を呼んでくれた。───何度も、求めるように。

 でも。───でも。

「……まだ疲れ、残ってるでしょ? ……ゆっくりして」

 にこりと微笑みかけると。……彼女はぎこちなく、小さく微笑った。





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