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ヘリオスの心音 21


 アラン少年の手元にあるものはたった少しのものだった。

 二人は決して、アラン少年に武器になるものは持たせなかったのだ。

 二人を責めないでやって欲しい―――下手に武器を持たせ怪我をさせる可能性を考えたからでもあり、そして子供に慣れないナイフなどの武器を持たせるべきではないと、二人は考えたのだ。

 その分、自分たちで護り切ろうと。―――二人は。

 二人はそう決めていた。

 そしてそれを護り通した。

 結論から言おう。

 少なくても、アラン少年は、十年経った今も尚、生きている。




 アランの手元にあるもの。ヘッドライト。リュックの中に小さなペットボトル。お月さまのクッキー。代えのシャツにタオル、靴下。

 イヤフォン。サム。

「……」

 武器になるものはひとつもない。―――けれど。

 けれどなんとかしなければ。違う。―――なんとかするのだ。

「……モーテルにいる人は、ミユキ、ともり、それにおじさんとおばさん。……その四人だよね?」

『そして犯人。五人グループだった』

「……だった?」

『黒髪が二人再起不能にした』

 ともりが。……強い。

『けれどそこまでだった。カインズ夫妻を人質に取られ、黒髪も捕まった』

「っ……」

『三人の見張りに一人。……残る二人。それが今、』

「……ぼくを探している……?」

『そうだ』

 それじゃあ。それじゃあ―――。

「……ぼくが……」

『捕まればというのはなしだ』

「ぼくがそいつらを倒せない、かな」

『……』

「せめてどこかに閉じ込めるとか」

『……』

「サム?」

『……いや。……そうだな。君はドアノブよりずっと脆い。……けれどそこに価値があるんだろう』

「……?」

『危険だが。どうする?』

「―――やる」

 アランはうなずいた。

「やる。―――ぼくがそうしたいんだ」

 怖い。こわい。―――けれど。

 やめてなんか、やらない。

 誰にも。―――アランを連れて行かせたりしない。



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