賢神会議
正体不明。
正体不明であり、正体不明であるそいつを天界に報告した方がいいとガヴから助言をもらった。
僕は天界に戻る術を持ち合わせていないので、ガヴに穴をこじ開けてもらう。天界へ逃げ込んだ僕だったが、少しの隙間から正体不明が入り込んできている。指らしきものが穴をこじ開けているように見えたので、鎌で指を切断する。どうやら本当に指だったらしく、正体不明は外界へと落ちていったのだった。
賢神会議、19人の上位神によって開かれる会議のことである。そして僕は正体不明について問われている最中である。
内容は、先日僕が出会した正体不明についてである。いくら神の中で上位の位置づけに席をおいている上位神といえど、この承知不明については、史上例を見ない事件だったらしい。
会議は外界でいうところの5時間くらいだった。死神でも睡魔というものは存在するようだ(人間から見れば僕は悪魔のようなものなのだが)。
廊下の椅子に座り、会議室の風景をふいに思い出した。みんなスーツを着ていた、人間みたいに。
「人間みたいではない、人間が我らの真似をしておるだけだ。」
そういうのは賢神の一人、確か名前は、、、
「サウザンドキル・ドールメイク・クレイジーファザー」
「それが私の名だ」
サウザンドキル・ドールメイク・クレイジーファザー。一言、言わせてもらうのであれば、名前が長い。しかし名前が長いだけではない。
「まぁこんな形で自己紹介をしてしまい誠に恐縮だが、一つ君に謝らねばいけないことがある。
まぁここではなんだ、あとで私の部屋へ来てくれまいか」
そう言うと、サウザンドキル・ドールメイク・クレイジーファザーは、一緒に行けばいいものを、一人自室へ帰るのだった。
僕が死神になった理由、と言うか『転生した』という方が正しいのだけれど、それは死神のミスである。
間違えて僕の魂を刈り取った。死ななくていい、現世に留まっていい魂をだ。
死神大王は、死の神と交渉し、結果、僕が死神と成る、成らされる事になったのだ。
サウザンドキル・ドールメイク・クレイジーファザーの話はそのことだった。
「先の案件、済まないと思っている。死神大王がいるのにも関わらず、」
「え、ちょっと待って下さい、あなたが死神大王...?」
「いかにも、だからこそ君に謝らねば成るまい。だが、私にも顔があるのでな、人前で床に頭をつけるわけにもいかなかった。そこは理解してほしい。」
そこはいいのだが、何か、神だからなにか知らないが、クレイジーファザーの動きがぎこちないと感じた僕であった。
クレイジーファザーとの対談を終え、僕はガヴと合流し、今夜の寝床となるガヴの部屋へと向かったのだった。
クレイジーファザーの部屋を見たあとだと、いや、見なくともガヴの部屋はまさに『地獄絵図』というに相応しい部屋であった。とりあえず、部屋を片付けた僕であったが、片付けたとしてもまた地獄に戻ることは想定できた。そこで、僕の『奪う能力』を使い、部屋を汚すという行動を奪っておく。
「今日はここで寝てくださいー」
ガヴが床に敷かれた布団を指差す。
「僕は布団でいいけれど、ガヴはどこで寝るんだよ?」
「前から思っていたのですがー、そのガヴとはもしや私のことですかー?」
「他に誰がいるんだよ」
「私といたしましてはガヴよりガヴリのほうが好きなのですがー」
「そうか?それじゃぁまぁ、ガヴリ、お前はどこで寝るんだよ?」
「私にはベッドがあるので、そこで寝ようかとー」
「そうか、それじゃおやすみ」
「はいー、おやすみなさいですー」
そして、僕は色々あって疲れているであろう体を癒やすために、床についた。