似たもの同士
この違和感をどうにかしたい。
今のあいつのと距離感がもどかしくて仕方ない。
この間までは珍しく真剣に考えてたけどバカな俺がそんな長く考えられてるはずがなかったんだ!
最近では彼女と帰るときもあいつのことばっか考えてて話聞いてないでしょってよく怒られる…。
「ただいま~……………はぁ」
「おかえり~!歩が溜め息なんて珍しいね、どうしたの?」
「うぉっ兄貴!?珍しく帰ってくるの早いじゃん?」
「うん、今日は早く仕事終わったからさ。」
そう言ってにこにこと微笑む兄貴。
兄貴は俺の6歳上で小さい頃から俺のことを可愛がってくれていた。
そのせいか俺も兄貴のことをだいぶ慕っている自覚がある。
だからか兄貴にならこの気持ちを相談してもいいかなって思えた
「なぁ兄貴、ちょっと相談があるんだけど……」
◇◇◇◇◇◇
「なんか俺最近変なんだ……。そいつが他の人と話してるの見るとすごいモヤモヤするんだよ。一日中あいつのことばっか考えてたりしちゃって」
「うーん……それって恋じゃないの?あっけど歩彼女できたって母さんから聞いたし……んん?」
「や、やっぱりそうなんだと思う!?俺も一瞬その考え頭を掠めたんだけどあいつも俺も男だしそれはないかなって…。そうなんだよ、じゃあ彼女に今まで抱いてた気持ちはなんなんだろうって思っちゃうんだ。ってか母さんいつのまに…っ!」
「俺は高校の頃同性好きになったことあったけどね~。彼女に対してはどんな気持ちになるの?きっと歩わかりやすいんだよw」
…え?
いま何て言った??
軽く凄まじいこといったよな!?
「え、兄貴同性好きになったことあんの?」
「うん。」
そう言って兄貴はなんてことないように頷く。
むしろ俺がなにに驚いてるのかわからないようで首をかしげている
前から兄貴はちょっと抜けてるというか人とズレてるとは思ってたけどここまでとは…
「…兄貴そんな軽く言うことじゃないよそれは。言ったのが俺だったからいいけど他の人の前ではもう二度と言っちゃダメだかんな?」
「…わかった。」
兄貴は渋々といった感じで頷いた。
「けど、高校のとき友達にこのこと話したけど普通だったよ?それにたまたま好きになったのが同性だっただけだよ。」
そうやってなんてことないように言ってくる。
確かに兄貴のいってることは理解できる。
本当にたまたまなんだろう。けど、それを友達であれ誰かに言うことはとても勇気がいることじゃないの?
それとも俺が臆病なだけなのかな……
「……俺があいつに抱いてる気持ちが仮に恋だとしたら俺が彼女に抱いてるこの気持ちはなんなんだと思う?」
「ん……それも恋なんじゃない?形は違くても。ただ話を聞いてると、その彼女に対するのは淡い恋心って感じじゃない?そして友達に抱いてるのは劣情って感じがするなぁ。」
「れつじょう……?」
自慢じゃないが俺はバカだから難しいことを言われてもわからない。
しかし兄貴が伝えたいことはうっすらとわかる。……本当にうっすらと。
俺が彼女に抱いてる気持ちよりもあいつに抱いてる気持ちのが強いってことだろうきっと。
そう言われるとやけにすんなりとこの気持ちが落ち着いたような気がした。
「自分のなかで納得する答えが見つかった?」
「うん…。ありがとうな、兄貴。」
「いいえ、どういたしまして!」
「ところでさ、そのれつじょうってどういう意味?」
「…それは友達に聞いてみたらいいんじゃないかなー?" お前に劣情してるんだ" って言えば焦って教えてくれる思うよ?」
「…?わかった、今度きいてみる!」
この気持ちと向き合ってみたら案外簡単なことだった。
恋といってしまっていいのかは取り敢えず保留にしてもこの気持ちに嘘はない。
「……そういや、兄貴はどんなやつを好きになったんだろ…?今度聞いてみよっかな~」
兄弟揃って同性を好きになるだなんて滅多にあることじゃないだろう。
けど、そういうところで俺たちは兄弟なんだなって再確認した。