きっかけ※歩目線
いつものごとく帰りながらふと隣の友達を見上げた
落ち着いたダークブラウンの髪は俺のとは違い痛んでいてるがそんなことも気にならないくらいこいつの顔は整っている
切れ長の一重は格好いいというよりかは綺麗で身長は178と俺より10cmほど高いので悔しいけど見上げるような形になってしまう。
普段は涼しげに何事にも興味なさそうなのに俺と話すときは少しその瞳を和らげるそんな仕草が嬉しい。
他の奴が知らないこいつを知っているようで優越感に浸ってしまう
こいつと初めて会ったときもそうだった
いや、正確に言うと会ったことはないが存在は知っていた…主に悪評で。
噂に疎い俺にまで回ってくるんだからよっぽどだったと思う
あの日は、俺がたまたま小テストの追試で残っていた時だった。課題を提出して鞄を取りに行こうとしていたら突如人のいないはずの教室から微かな話し声が聞こえて気になって覗きにいったんだ
そしたらあいつが羽交い締めにされていてどうにも怪しい雰囲気だったから俺は慌てて頭を働かしてこの状況をどう切り抜くかを考えた。
あの時はともかく必死だったから
悪評は聞いていたけれど廊下とかで見かけるあいつは噂で聞くほど悪いやつに見えなくて…
確かに見た目は完全に不良なんだけどあいつが休んだりしてるとか聞いたことなかったから。
正直、助け出したとき名前なんて聞かなくても知ってた。だけどどうしてもあいつの口から聞きたくて
見るだけじゃなくてもっと声を聞いてみたいって思ったんだ
多分、心のどっかで憧れてたんだろうなんて思いながら見上げるとふと視線がぶつかった
見ていたことが恥ずかしくなって思わずふざけたようなことを言ってしまう。
「なんだよ、なんか顔についてる!?」
「いいや、なんか出会った頃思い出して懐かしくなった」
おんなじこと考えてたのかなんて少し浮き足立つ
おんなじクラスになってから俺たちの距離は急速に縮まっていった
だけど、仲良くなればなるほどこいつは時々切なそうな顔をすることが増えた気がする。
…きっと好きな子がいるんだろう。俺がそういう話をするときまってそういう顔をするから。
俺は色々悩んでこいつに相談するけどこいつはなんにも話してくれない。
それがたまに少し寂しい…
そして同時にこいつにそんな顔をさせる子が羨ましいなんて思ってしまうのだ。
なんでこんな気持ちになるのかよくわからない。多分、こいつの色んな顔を知ってるのは自分だけでいいなんていう友達にたいする幼稚な独占欲だろう
…きっとそうに決まってる。
俺は変化を怖がって今日も見ないフリを続けている。