幼馴染争論
幼馴染っていいよね。
「突然だけど、私に告白しなさい」
「ほんっと突然だな!?」
幼馴染の梨花はいきなり変なことを言い出した。
「私、分かっちゃったのよ。ラノベでは幼馴染は主人公に告白する法則があるみたいなの!」
こいつの頭がおかしいのは元々だが、俺を家に呼び出しておいて言うことがそれか。
「それがどうした」
「つまり、ぷりんちゃんが私に告白するのはもはや必然的。分かったら告白しなさい」
誰がぷりんちゃんだ。俺には義和だから一文字も合ってねーよ。
「私らは、せっかく幼馴染という最強のステータスを持っているんだから、付き合わないといけないの」
確かにラノベとかで、幼馴染はよく出てくるし、最終的に付き合うって展開多いけど、なんで梨花みたいなキチってる奴と付き合わなきゃならんのだ。
「そのうち、文化祭でバンドをすることになって、それが終わればどうせ、私の美しい姿に惚れて告白するに決まってるの。だから、今のうちコクっときなさいって」
「ねぇよ!!」
文化祭でバンドやった後に告白って確かに腐るほどある展開だけど、こいつだけは例外だ!
「まったく、せっかく可愛い幼馴染なのにもったいないわね」
「自分で可愛いとか言っちゃってる残念な幼馴染じゃなかったら……げほぁ!」
殴られた。
「どうせ告白するんだから、過程なんてどうでもいいでしょ」
「よくねぇよ!それがあるからこそ、あいつらは結ばれるんだろ」
「だから、結ばれるって決まってるならさっさと告白すればいいでしょ!」
「じゃあお前が俺にコクればいいだろ!」
「女の私に告白させる気!?あんた絶対断るでしょ」
当然だ。
誰がこんなのと付き合うもんか。バンドなんて興味ないし、文化祭も適当にこなすつもりだ。
青春なんて知らない。
ぴろりろりーん♪
端末から音楽が流れる。友人からメールがきていた。
『文化祭に梨花と俺とで、バンドやらないか?』
「……はい?」
☆
「梨花、俺ずっと……お前のこと好きだった!」
「省略しすぎでしょぉおおおっ!」
文化祭でバンドをやりきった俺は梨花に告白した。
「確かに過程なんてどうでもいいって言ったけど、なんかすごく悔しい!」
梨花がなにか言っているが気にしない。もう想いを伝えるって決めたんだ。
「これからはお前をひとりにしない。もう逃げない」
「アンタのキャラ崩壊しすぎでしょぉおおおっ!文化祭を通して何があったのよ!」
梨花を見るだけでもう、心臓の鼓動が止まらない。
「お前と練習してるとき、俺は梨花を守ってやれなくて、ずっと後悔してた」
「なに!?私は何をしたの?」
「今度は彼氏として、梨花を守りたい」
「もはやアンタ誰よぉおおおおおっ!」
こうして、俺と梨花の物語が幕を開けた。
「知らないわよぉおおおっ!」
幼馴染とは、どんなに頑張っても手に入れられない存在である。