2話 新たな出会い
遅くなりましたが、2話目できましたので、投稿します。読んでいただけると嬉しいです。
もしも読んで頂けたら感想など、よろしくお願いします。
2話 新たな出会い
ヘレスさんと分かれた僕は、大きな門を通り、町へと入った。町には、たくさんの人がいて、見るからに賑やかなところだ。
辺りを見渡しながら、町の奥へと進んだ。どんなモンスターがいるのか、考えながら歩いていたら、モンスターと戦うための武器を持っていないことに気づいた。防具はヘレスさんに貰ったものを付けているが、武器は持っていない。
武器をどうするか考えながら、町を歩いていた。いつの間にか、歩く人の数が減っているのに気づき、周りを見てみると、路地裏に来てしまっていた。薄暗く、嫌な雰囲気が漂っている所で、如何にも悪そうな人が、そこら中に座っている。
僕は、ちょっとだけ早足になり、路地裏から戻れる道を探して歩いた。なかなか戻る道が見つからずに歩いていると、女の子が何人かの男に絡まれてるのを見つけた。女の子は嫌がってるみたいだった。
「あのー、女の子嫌がってるみたいですよ? 気付いてますか?」
「あー? 邪魔すんじゃねーよ」
ちょっと緩い感じで男たちに言ってみた。緩い感じで言えば怒鳴りはしないと思っていたが、そんなこと関係なく怒鳴られた。
もうどうにでもなれと思い、強気になってみた。
「いや、邪魔なのはあんたたちで、俺はその子に用があるんだけど」
「てめぇ、いい加減にしろよ!」
やはり、心の中で思っていたとうり、男たちは殴りかかってきた。僕はバカで、勉強が苦手だが、運動神経だけは自信があった。
腕を大きく振って襲い掛かってくる男たちの足元に入りこんで、真ん中の男を転ばした。そして腰につけていた剣を奪い、その剣で他の二人の服を切り裂いた。
女の子の側に行き、女の子を覆うように立って剣を構えていると、男たちは腰を抜かしながら、すごい勢いで逃げ出した。最初に転ばした男も後を追って逃げて行った。
右手に持っていた剣をその辺に置いて、女の子に声をかけた。
「大丈夫だった?」
女の子はずっと下を向いていたが、声をかけると少しずつ頭を上げた。女の子の顔が街灯の明かりに照らされると、僕は一瞬言葉を失ってしまった。
明かりに照らされるまで気づかなかったが、この女の子はクーシーという、犬の妖精の末裔だ。耳は猫の妖精ケットシーと似ているが、クーシーはしっぽが丸まっている。そしてこの女の子のしっぽも丸まっているので、この子はクーシーの末裔だ。
だけど僕は信じられなかった。クーシーは2年前にモンスターたちによって村ごと消されてしまったと、噂で聞いていたからだ。それにここは、クーシーの住んでいた村からも異世界と言える場所、なのになぜ神の力が使えないクーシーが、異世界にいるのかがとても不思議だった。
この状況に、頭の中が空回りしてしまい、爆発寸前の僕に、女の子はお礼を言ってきた。
「あの、助けて頂いてありがとうございます。私はテスカといいます」
「お礼なんて大丈夫だよ」
僕は彼女の笑顔を見て、癒されてしまった。というより、彼女の笑顔を見て癒されない人はいないに決まっている。
しっぽを振りながら、笑顔で顔を見られたら、誰だって癒されるだろう。
「君はクーシーだよね?」
「え⁉︎ そうですけど、なんでクーシーのことを知ってるんですか?」
驚いた顔で聞いてきた。その顔は驚き以外にも、何かある顔に見えた。
「僕は、一応神なんだ。だからクーシーのことを知っていて。まあ神の世界から捨てられて、ここに飛ばされちゃったんだけど」
テスカという女の子は、 驚いた顔をして黙り込んでしまった。
「だけど、クーシーの一族は村ごとモンスターによって消されてしまったって聞いたけど……生き残った人たちもいたの?」
「いえ、生き残ったのは私だけです。モンスターたちから逃げていたら、突然体が光りだして、いつの間にかこの町にいました」
テスカは、下を向きながら、とても辛そうな声で答えてくれた。
「ごめん、辛いこと思い出させちゃって」
「いえ、大丈夫です。それより、あなたのお名前を教えて頂けませんか?」
「そういえば、まだ名前言ってなかったね。僕はアヌスって言うんだ」
「アヌス様、ですか。私に何かお礼をさせてください」
「いや、お礼なんてしなくていいし、様付けで呼ばなくていいよ。今は神じゃないしさ」
「だめです! お礼をしなきゃ気がすみません。それに今は違くても、元神には違いありません」
ものすごい勢いに、僕はちょっとだけ諦めかけたが、いい考えを思いついた。
「それなら、お礼は僕と冒険者をやるってことでどうかな? あと、様付けじゃなくてさんにしてもらえると嬉しいんだけど」
「分かりました!」
テスカは即答でOKをしてくれた。それどころか耳をぴくぴくさせ、しっぽを振って嬉しそうだ。
地面に置いた剣を取り、ひとまず僕とテスカは明るいところへと向かった。
その頃神たちの住む世界、天界では神たちがアヌスのことを話していた。
「おい、ゼウス。このままだと神以外の種族が全滅してしまうぞ」
「そんなこと分かっている。だからアヌスをあの世界へ送ったのだ」
「でも、アヌスだけで大丈夫なの? あの子は確かに、神の中で一番の才能を持っているけど、まだ神の能力にさえ目覚めていないのよ」
「大丈夫だ。あの世界にはあいつが目覚めるためのきっかけをたくさんと用意してある。もしもハデスたち、反乱軍に気付かれても、あいつなら大丈夫だろう」
天界では、アヌスの知らない内にいろいろと大変なことになっていた。