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Grand Quest Online (仮)  作者: プードル
GQOの世界~本サービス開始編~
29/32

quest28 Real Intention ~本音~

九月です。秋です。読書です。


すっかり秋らしい天気が続きます。



以前、2千字を超えたあたりで、キーボードを入力する際動いてしまう

スクロールに気づかず、閉じるをクリック。

原稿もパァ~に。(泣)

もうやらない。

決めたはずなのに・・・・・・


今回、終了間際の5千字を超えたところでそれが起きました。

本当は、九月一日にUp予定だったのに・・・・・・

意気消沈を脱出するまでに二日かかり、そしてもう、5千字軽く超えてやる

気持ちでたたき続けること三日。

ようやく完成しました。

8千字の力作です。

お待たせしました。


では~どうぞ!!



「おい。思った以上に危なそうだぞ。」



左上のKameradという白枠で囲まれた枠の中にはKou,Alu,

Shin,Rukko,Nagiの5名の名前と体力表示がされている。

カメラートというのは、簡単に言ってしまえばパーティやギルドの呼称である。

体力の残りが表示され、すぐ確認することができる。



それを見ながらコウはアルに話しかける。


「本当ネ。」


アルも状況を理解したらしくそれに応答する。


その問題の体力ゲージの状況だが、

1回で体力が大幅に減ることはない。だがシンの体力はじりじりと減り

黄色から赤に変わるか変わらないかの瀬戸際で体力が大幅に回復する。


コウは推測する。

ーーーーーーたぶん、ボスかもしくはボスエリア手前の手先と戦っている。

俺たちが、ボスを倒す前までは、減っても断続的に続くことはなかったし

Naturalhealing(自然治癒)で、すぐに体力は空白になることはなかったはず。

しかも今回は手に取るようにどう戦うかがわかる。

シンが、タンク(防御役)としてルッコとナギを守り、その隙にルッコとナギが攻撃する。シンの体力が少なくなると回復魔法<レジリエンス>を使う。


「なんか成長してるな。」

コウは少し顔に笑みを含ませながらいう。


と、すこし嫉妬じみた声で答えるアル。

「なんか、悔しいネ。あの3人だけコウに成長を感じさせるなんて。」


コウはこう正論を返す。

「アルも成長してる。それは口にだすことじゃない。だって認められるためにゲームしてるわけじゃないだろ??」



こういってもアルはふくれっ面のまま。


コウはなだめることを諦め、今、優先すべきことを考える。


行動はいたって簡単。左回り順路のエリアボスを倒した今。合流してタワー

ダンジョンの1階をクリアするということなのだが、いかんせん右回り順路側の

カメラートの様子が気掛かりである。

それはアルとコウ、二人自身も思っていたことで、見逃せるわけがない。

それにコウ自身は、自分が関わっておいてのトラブルとなればなおさらである。


「まあ、それは置いといて、さあ、とりあえずは合流地点まで急ぐぞ。」



歩いていた二人だが、次第に早歩きとなっている右回り順路のふたりである。



ボスエリアを通過して、先ほどのような、ごつごつした岩に囲まれたボスっぽい雰囲気の広い場所は抜け、通常の一本道へと戻った二人は足早に移動する。





しばらく進んでいた二人だが、再び序盤のような2本の分かれ道に行きつく二人


アルが近くの岩が椅子のようになっている場所で休憩しながら聞いてくる。

「これはどっちネ??」


ーーーーーーーー順当に考えればの話だが、

最初の分かれ道も選択を迫られた。

そしてどちらにしてもクリアというゴールの一本道は、同じ。

ということはあいつら3人のカメラートは左の道。

俺たちは右の道そして、そのまま想定の話で進めると、

たぶん道は、いちごキャンディーとか鎖のような形になっていると推測できる。

だとすると。


結論づけたコウは答える。

「左だろうな。」


「左。了解ネ。」


岩の簡易椅子に手をつき足をブラブラさせていたアルはスタっとジャンプして移動の準備をする。



コウも準備を終え、再出発する二人。


「アル、俺の考えだとたぶんここが合流ポイントだ。」


「本当は、3人があっちで行くといったからにはここで待ってようと思ったんだが・・・・・・」


「それは」とアルが続きを言いかけようとした瞬間。


「二人で助けに行って、合流してから5人でこの階はクリアしよう。」

すこし強く主張するコウにアルは大きく首を縦に動かし、

同意する。


そして二人は、今度こそ5人カメラートで第1階をクリアするべく

左回り順路の方の道へと進み、走り出し始めた。








左回り順路の道を駆け足で進む二人。


道は、まったく右回り順路と変わっておらず、違和感が働くことは

道に関してはない。

だが、右回り順路と大きく違うポイント。それは、選択時での注意書きであったことだった。


右回りはトラップありの本格的ダンジョン。左回りは経験値稼ぎメインのバトルダンジョン。



どちらを選ぶも各プレイヤーの自由。自由度の高いということは、

表上には大きく取り上げられていないがこのゲーム、

『グランドクエストオンライン』のウリでもある。



今回、右回り順路を選択したコウとアルはトラップこそ苦しめられたが、

無事掻い潜り(かいくぐり)どうにかボスを倒し、先へと進んでいる。


だが、左回り順路の方を選ぶことになれば、道は変わらずとも

モンスターの出現ポップのあり方は変わるということは言わずともわかる。




駆け足で進んでいく二人を阻むのは、その右回り順路の特色でもある

モンスターだった。




突然、駆け足で進む二人の前に出現ポップするのは

コウモリ型モンスター ruinsbat(ルーインズバット)だった。


突如現れたコウモリ型モンスターに驚いたように反応するアル。

「な、なんネ。あれは!!」




とりあえず初めてみるモンスターなので分析するコウ。


ーーーーー見たことないな。が、小さい。サイズで判断するのはよくないが、

さっきのよりだいぶ小さい。


分析を終えてから予想をアルに伝達するコウ。


「たぶんこの階の右回り順路の雑魚モンスター。そんなに驚くことないだろ」


「なんか初のモンスターはちょっと緊張するネ。

警戒に越したことはないネ。

たしか日本にも油断大敵という四字熟語もあったネ。」


「アルの心配が蛇足で終わらなければいいな。」


「コウは故事成語までしってるとは感心ネ。」

アルは、やるネ、といった顔でコウを見る。



少しことわざの、頭のよさそうな話の対決をしている二人。





その、傍らでアルは、先ほどのフューリスワイプ(乱れひっかき)

氷爪スウェイクロウを駆使してさきほど、出現ポップした

ルーインズバットを駆逐していく。



コウも負けじと、数体のルーインズバットを引き付けてから

炎渦えんかでコウモリを炎で包み込み倒すという

MPをなるべく使わずに温存する

コストパフォーマンスのよい。つまり燃費のいい戦い方をしていた。


五体ほど倒すと辺りは落ち着きを取り戻し、静寂が訪れる。

ふう。と二人が息をつこうとした瞬間だった。



突然、画面左上のKamerad内のシン、そしてルッコの体力が七割減り、

気絶状態を知らせる、☆マークが点滅、つまり気絶している。



すぐにアルが危機を感じ、焦ったようにコウに呼びかける。

「コウ!!」



「ああ!!かなりやばい。次に今の一発の攻撃を食らえば、

完全に死ぬ。」



「休んでる暇がない。走るぞ。」





ダッシュで道を進んでいく二人だが、ダッシュのせいか、

出現ポップのせいかモンスターがとどまることを知らず、出てくる。



二体三体と増えていくが二人は、完全無視で、進んでいく。



もう、道の先しか見えてない状態のまま走り抜けると、



先ほどのボスの雰囲気が再来し、二人はそれを感じ取る。



少し、警戒したまま、進むと、


そこには、先ほどのコウモリの一回り大きな、ルーインズバットが三体。

通常のルーインズバットは羽は二つで、犬歯が発達した

鳥のような構成のモンスターだが、この大きなコウモリは、

羽が右前、左前、右後ろ、左後ろにも

ついている四つの羽の構成になっている。


名前はかなり類似していて単純に考えると体が大きくなり、

それなりに攻撃力も上がったかな??という不確かな情報を刷り込まれる。

そうすると必ず痛い目に合うモンスター。



そして、追い詰めるように先ほどまでずっと逃げてきた、一五体ものルーインズバットが二人の頭上を飛び回る。







見るだけで、先ほどまで対峙してきたルーインズバットとは大違い

そのモンスターの頭上には、Bigruinsbat(ビッグルーインズバット)というアイコン表示がされている。




「くそ。追っ手がきた・・・・・・アルお前は、俺たちを追ってきたルーインズバットを頼む。俺は、あのでかいのを倒す。頼んだ。」




「はいネ~!!」


陽気な声の裏では、固い決意が心の中で潜んでいた。



ーーーーーー今度は、最後まで、コウに頼らずに倒してみせるネ。

三人はここまでにもうコウに強くなったことを自覚させてるネ。

やってやるネ。




martial(武道家)の得意の部分でもあるスピードを生かして、

一気に、ルーインズバットとの間合いをつめて攻撃を繰り出す。


「フューリスワイプ!!」

スキル使用を知らせる赤く光るイフェクト(表示)が武器を包み、爪は一回、二回と、まずは一匹にスキル技を繰り出す。


ネコのひっかきのような攻撃、それでいて

力強さを見せるスキル技<フューリスワイプ>。


まず、一体が青い光ではじけ、次の一体。と右を振り向いたそのとき。

防具の合間からはみ出ていて手袋がつけられない爪を装備する者にとっては露出してしまうleftforearm(左前腕)の皮膚の部分に

恐ろしい犬歯をもった、ルーインズバットが噛みつく。

グリーンの体力ゲージが二割弱ほど減り、少し動転してしまう。


声にならない痛みに、考えることを忘れ、必死に右手の爪で、

左手の前腕に噛みつくルーインズバットを剥がそうとするが、

剥がれにくくもたもたしているアル。


さらに、剥がそうとして突き出した右手の前腕の部分には隙ありと言わんばかりにもう一体のルーインズバットが噛みつく。

さらに二割弱のダメージが加算され、また声にならない痛みがアルを襲う。


そこでダメージが終わることはなく、噛まれたままであるため追加ダメージが

発生し、もう五割をきり、緑色のゲージだった体力ゲージも黄色まで

変化している。

不意に、顔から、汗がにじみ出る。




だが、表向きでは焦りが見えるアルだが、

それとは裏腹に冷静なアルもまた中で存在していた。


ーーーーーーーー落ち着くネ。

martial(武道家)にも職業魔法があるはずネ。







あったネ。




これならいけるネ!!






アルは先ほどとはうって違ったイフェクトの黄色の光に包まれながら素早く詠唱する。



<ハイドウォーク(透歩)>


詠唱を終えたアルの姿は全く見えない状態、消えてしまった。

アル自身も驚き、最初は動けずにいたが、それはモンスターも同様だったようで

驚いた、ルーインズバットの

腕に噛みついていた犬歯がポロリととれ、

地面にルーインズバットがするっと落ちる。

その隙を逃さず、通常攻撃でその二体をあっさりと消滅させる。



これならいけると、ジャンプしては通常攻撃で、まったく打つ手はなくただ

宙に浮くだけの隙だらけのルーインズバットを二体ずつ倒していく。


最後の一体となったところで魔法は消えて、

ターゲットを再び明確にしたルーインズバットはアルに一直線で突っ込んで先ほどの噛みつきをしようとする。

だが、すっかり落ち着きを取り戻したアルは冷静に

横飛びで回避して最後の相手にはスウェイクロウ(氷爪)を繰り出し、

最後のルーインズバットを青い光に四散させて

一五体一人で倒し切った。


やった次は、コウのサポートまでできるネ。と後ろで戦っているコウを

サポートする・・・・・・



はず、だった。






コウは、もうすでにビッグルーインズバット三体を片づけ、

アルの加勢もせずにぽつんと立っていた。

コウは少し驚いた顔でそして興奮した声で笑いを含みながらアルに話しかける。


「すごいな~。透明化のスキルか!!モンスターもお手上げ状態だったじゃん。

あの、モンスターの顔。見た??顔に「こんなの無理じゃん」とか書いてた。

絶対そうだ。

俺も、途中からしか見てないから詳しくはわからないけど、気配しかわからなかった。すごいよアル!!」



「う、うん・・・・・・」


ーーーーーーー興奮気味で話すコウの一方でアルは喜ぶべきか、落胆するべきかの板ばさみに苦しめられて反応に困った。

最後の一言さえなければ、まったなしのミッションクリア。目標達成なのだが、

苦し紛れのひらめきでこの男コウは、モンスターでさえも見えなくて待機を余儀なくされたあの透歩ハイドウォークを見破った。



「・・・・・・」

沈黙のまま、コウを睨むアル。


「アルさん??また怖いですよ~??」




ーーーーまあ、いいネ。モンスターは一人で倒せたし、

コウにも一応驚きを与えられた見たいネ。





アルは、少し、膨れて下から身長の高いコウにつぶやく。



「今度は、ガツンともっと純粋におどろかせてやるネ・・・・・・」













一方、コウ。こちらは内心ひやひやしてます。


ーーーーーーーなんだぁ~!!。こ・れ・は。


聞こえるか聞こえないかの瀬戸際の声でつぶやく。それに悔しそうな顔で。

トドメは、あっちは気づいてないのかもしれない。


『上目遣い』に。


くそ。なんでだ。俺、恋愛経験ないからこんなにもドキッとしてしまうのか??

もしくは、男でもイイ・・・・・・

ならぬ断じてならぬ。

女。女。女。そうだ。いいぞ。そのまま。上にそう。凹凸があって


そう、顔も美女!?なんでアルなんだよ!!


ああああああ!?









ここまで長い葛藤を広げたコウ。だが、これは一瞬の思考。

すぐに、左上を確認。


冷静さを取り戻し、

「よし、先急ぐぞ。」


コウが言った矢先だった。



一気にKameradの中の全回復していた体力が、

シン、ルッコ、の順に八割減少した。

現在の体力は、シン二割、ルッコ二割、ナギ七割



「・・・・・・!!」











走っていったその先には、

二人がほんの少し前に倒したそいつとまったく同じだった。

その傍では、柱にうずくまるルッコとシンの姿が。





deceived Titan(騙しの巨人)だった。

そしてその体力は、のこりの一割である赤ゲージを超え、

その体力はなくなり、青い光に包まれていく、はず。



あまりの事態に考えを巡らす。


ーーーーーーーなんで最後の数センチの体力量だろ二人が、身代わりで受けたとしても、十分な一発は与えられるはずだろ。

最後の一発。

!!

俺たちの時にもあった。

モンスターの名前通り。倒したと思わせる、硬直。しかし、体力は、数センチ残っている。

それは、死ぬ前の前兆ではなく、その実態はまぎれもなく

重攻撃いわゆるチャージ攻撃のチャージ段階。

騙してからの重攻撃。

ルッコとシンに至っては、体力低下による一時的なパラメーター上昇による

ダメージ量の増加で言い訳が付く。










「アル。ルッコとシンを柱まで連れて行って、余ってる体力ポーション

飲ませろ!!」



ナギは、スキルを終えての数秒間の反動硬直が生まれる。




ーーーーーーーあの騙しの巨人に体力低下によるパラメーター上昇に、

今までとは違う、チャージ攻撃。かすったとしても二割は減ることは実証済み。

それが、今、避けられるタイミングか。答えは否。

あいつの残り体力は七割。

・・・・・・確実に死ぬ。




気づくと俺は、飛び出していた。




「ソニックアクセル!!」




一直線な光のごとく騙しの巨人の背後まで回り込み、



スキル名を叫ぶ。



炎渦かえん!!」






炎の渦が大きく騙しの巨人を包み込み、

火がナギまでも包み込もうとするのを

コウは叫びながら、ナギを包むように両肩をがっちりつかみ、覆いかぶさる。

「ナギーーーー!!」

ウガァァァァァァァァ~!!


コウの叫びは騙しの巨人にかき消されてしまった。












スキルが終了し、反動硬直の短い時間が私を支配する。


倒したはずの騙しの巨人が目を狂わせて大剣を大きく振りかぶり、赤いイフェクト色とともに、大きく振りおろそうとする。


もうダメ。と目を閉じた。


時間がスローモーションで刻まれて、コマ送りにされていく。


ーーーーーーーたしか現実リアルでも死ぬときの体感がこんな感じらしい

ってテレビで見たことある。

こんなにも一秒間が長く感じたのは始めて……これが死ぬってこと??

怖い。誰か……助けて。





長すぎる一秒間に

最後の最後で映し出される私の海馬に記憶された映像はなぜか、

彼が映ったものだった。

私がフィールドポイントの入り口をまんまと間違え、

命の危機を救ってくれた彼。よく、わからない。変態。

第一印象がその二つの彼とは、ついさっき、

ささいなことでケンカしてしまった。ケンカの種はこのダンジョンの選択。

しかも右回り順路を堂々と歩いてきたというのにもかかわらずこの結果。





ーーーーーーーーシンとルッコの二人には悪いことしちゃったな~。

二人には、謝ろう。死んだらどうなるんだろう・・・・・・

コウには、馬鹿にされて笑われるんだろうな・・・・・・

あ、アルにも謝ろう。





でもやっぱり聞こえたのは頭から離れない、あの彼のスキルだった。


炎渦かえん!!」




ーーーーーーーーそう。この名前。この言い方。

澄ました声でやる気なさそうな言い方。

それでいて胸の内でははっきりとした意志が見える。独特の言い方。






と、今まで、一コマ一コマがスローモーションの時間が、

突然変異したように時間のスピードがもとに戻る。







少し熱いバーベキューの火が自分に向け熱風となって吹き込むように

ブワッと私の髪の毛先を揺らす。





数秒して、静寂が場を支配し、不意に体全体にのしかかる重量感のある重みと肩に何かの感触、しっかりとしたモンスターではない二つの感触がナギを混乱させる。




そっと目を開くと、顔の横には、見覚えのある、前髪を上げたヘアスタイルの

黒髪の男。



コウ!?と言いたかった。うれしかった。

言いたかったけど何より引け目があった。

私のせいで、カメラートが全滅しかけた、という。

そのせいで私はふんぞり返って反抗的な態度しかとることしかできなかった。



「ねえ、肩、痛いんだけど・・・・・・それと、どいてくれる??」

語調を強め、キッと仮面の下から睨むように言うと


相手の方も、驚いたようにすまん。と言ってさっと手を放す。


地面についていた下半身をくるっと半回転させ、私に背を向けたまま体操座りをする恰好となっていた。









強く言われた俺は少し動転していた。ナギには背をむけたままだったが、


自分の行動に、自分自身に驚いた。


自分が言われるまでの間、ずっとかなりの力で肩を握りしめていたこと。


驚き、さっと離してしまった。そこであいつは俺のことが嫌っていたことを


思い出す。


でも、言いたいことは山ほどあった。考えは思いつかなかったので


アドリブで全部言ってやろうと思った。


俺はすぐに振り返り、ナギの顔を見つめる。


俺ははナギに何を言うべきか。考えた。


怒ることがまず第一に浮かんだ。当然である。

ナギの行動でカメラート全体が壊滅していたかもしれないからだ。

しかし、よくよく整理すると俺自身もその原因を作った

加害者であることは否めない。

そう判断した俺はナギ一人を矢面に立たせることはできないと考えた。



次に、惜しかったな。と励ますべきだと思った。

実際、三人は、五人カメラートが三人に減少したが臨機応変に対応し、

この右回り順路のボスエリアに到達し体力をほぼ0に近しい状態まで

持っていった。十分に称賛にあたいするはずである。

だが、最後の最後での甘さ。三人の過信。もう倒しただろう。これを言い出すと

もう惜しかっただけの話に収まらないような気がしたので断念した。


なにか、一言ですべてを凝縮したような言葉はないか。

俺はまた考え込んでしまう。

振り向いた先のナギの顔がしおれた花のように首から垂れて肩が上がり

奮えているのがわかった。

ここで初めてすごく怖い顔をしていたんだろうと悟った。


そのせいか、意外にもすんなりと言葉が口から出た。








「ごめん。俺が悪かった。」





衝撃が走ったようにナギの顔がパッと上がり、体全体の力が抜け仮面が震える。


震える仮面から放たれた言葉は、小さく、凍えたような声だった。


「なんで、謝るの??」



「いや、リーダー的に仕切っていた俺が自分の意見を突き通し続けてしまった。

ナギと別れる前にいってくれた理由がもっともだった。

心配もした。俺の責任だな。だからごめん。もうこんなことはしない。」


そこまで言ってなんかプロポーズっぽい雰囲気と感じ、恥ずかしくなった俺は

また、半回転し、顔を隠すように下を向いた。



コウの中では、その言葉が再生されていた。




「今日は、経験値を稼ぎに来たんだからおすすめな時計回りに行くのが筋なはずでしょ??当然の理由よ!!」















私は理解できなかった。振り向いたコウはいろんな顔をしていた。

そして、言うことが固まったように顔も怒りそうな顔になった。

とっさに、顔を下げ全身に力を入れて怒られるのを準備した。

幼いころから、怒鳴り散らされ怒られ続けた末の私の癖。


しかし、流れてきたのは、懺悔するような悔しそうな声と、心配そうな声の両方を含んだ優しい声だった。



わけもわからず顔を上げて見てしまう。拍子抜けし泣きそうになっているだろう顔を想像し仮面しといてよかった、と思いつつ

私の疑問をぶつける。




彼の返答には私が、回り順路を選択したときの、筋よりもはるかに立った理由づけがされていた。

これまでの怒られ方とは違う暖かくなるような言葉で私の胸は温度をあげ、

びっくりした胸は痙攣けいれんし始めてしまった。












返答の言葉に胸を打たれ、今度は身体全体が震えを起こし始める。

すると、震えは、少女の心を氷を溶かすように

虫の鳴き声のような小さな嗚咽へと変わっていった。

ストンと、ナギの仮面の額部分が背を向けていたコウの右肩にのり、泣き続けるナギ。


嗚咽しながらつぶやくナギ。

「ずるいよ。コウだけ謝って・・・・・ごめん。コウ。ごめん。みんな。」


それを黙って見守るコウ。

ポーションを飲み終えたルッコとシンも傷部分を抱えながら、

二人はアルに支えられる形で固唾を呑んで、

ボスエリアに木霊こだまする小さくすすり泣くナギを見守っていた。



次回も、お楽しみに!!またお会いいましょう。


ぜひ、読みに来てくださいね!!



評価・感想もくれると糧になります。



これからもよろしくお願いします。

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