quest11 veteran ~熟練者~
さあ、学校を終わらせ、3日目のプレイにいそしむ、コウです。
カインズに呼ばれたというところでログアウトした。というのが前回のあらすじ。
今回は、何を言われるのでしょうか。
_______19:55 自宅
今日は帰宅が遅い。なぜかというと、金曜で、
生徒会の活動があったのだ。
そう、俺は、生徒会に入ったのだ。
いや、入れさせられたのだ。
というのも、高校入試の得点が高い人は、
強制的に生徒会に入れさせられるらしい。
くたくたになるまで、働かせられて、惣菜を買って帰り、
家事を一通り終わらせて時計を見ると
時刻は、19:55というところだ。集合時間19:30を過ぎていた。
――遅くなったな。――
俺は、素早くブレインギアを装着して、ログインした。
connect on!!
_______サンシア地方市街地
ようやく、映像酔いになれてきたな、と思いつつ、
急いでクエスト本部に向かった。
遅刻したことに後ろめたい気持ちになっていた。
そういえば、現実でも(あっち)でも
似たような境遇の主人公がいるアニメが、
毎週の金曜日夜に、放送だったな。
と思いながら扉を開けると、
当然俺一人しかおらず、
ケインズが奥で、クエスト本部の美人の受付嬢3人と、
楽しそうに話していた。
ケインズは、俺に気がつくと、
「ガハハ、おお、コウ!」と上機嫌にあいさつしてきた。
――この、ハーレム男が…――と毒づきながら、
でも、申し訳なさそうに近づいた。
「カインズさん、ごめ…」といいかけたが、手を出され、
「話は聞いている、シンからな。
生徒会というもののに入っていて遅れるとな。」
シン、ナイス!と思った。
「で、どうする?
昨日のように、クエストの続きをしても構わないが、
実は、俺個人の、お願いを聞いて欲しいのだ。
内容は受けるかどうか、決めた方を伝える!」
俺は、考えた。ここでクエストに行ってもいいが、
カインズ個人のお願いは気になる。
「じゃあ、カインズさんのお願い受けるよ。」
「さすが、コウだ!助かる。」
そういってカインズは、受付嬢に向かって指をならした。
受付嬢三姉妹はくすり、と笑い合った。
すると、ゴゴゴゴゴゴ、と地響きがする。
「なんだ、これは」と、よろけながら、必死に体を支える。
目線を上にあげると、俺は、口をあけてボーッとしていた。
そこには、いくつもの高く、尖った岩で構成された、
バトルフィールドができていた。
まるで、氷柱のある岩フィールドだった。
「ガハハハハハ、さすがに、驚いた顔をしているな!
コウ!お願いと言うのは、俺と勝負してくれ、というものだ。」
と豪快に笑った。
当たり前だろ、こんなこと前までのVRMMOではなかったぞ、
と思いながら、さっきの受付嬢との会話はこのことか、
と合点がいった。
カインズさんが付け加えをする。
「まあ、当然、タダでとは言わない。
俺に勝てたら、武器屋のチケットでもやろう。お前専用のな。」
自分専用の武器か…欲しいな。
と、思った俺は、「わかった。やろう。」と言った。
主審は受付嬢三姉妹の長女スミレさん。
副審は、次女アンズさん。三女、スモモさんがそれぞれついてくれるようになった。
三姉妹は、いずれも、プリースト(僧侶)らしく、
決着がつき次第、回復魔法〈レジリエンス〉をかけてくれる
らしい。頼もしい限りだ。
勝負というのは、Versus(決闘)モードのことだ。略してVs
このVsにも種類があり、己のすべてを出す、総力戦モード
相手に手数をより多く、加えた方が勝つヒットカウントモード、
技のキメや、ダメージの大きさでポイントが加算される(柔道みたいなもの。)匠モードがある。
「カインズさん、どれにするんですか?」と聞くと、
「当然、総力戦だ!!」と言われた。
俺たち二人は準備をした。
スミレさんが、ルール説明を、する。
「制限時間は120秒。勝負がつかなかった場合に限り、
体力が減っている方を負けとしますわ。」
すべてを出してやる、と思ったが
そのとき、カインズが準備をしながら、
「俺はお前のスキルを知ってるからな、
ひとつだけ教えてやる。
俺の武器は、ハンマーだ。スキルは、[インパクト]だ。」
そういって、スキルの内容を見せてきた。
[インパクト]
効果 命中時に、ダメージ。追加で相手に、衝撃を与える。
説明 当たれば、誰でも目の前が真っ暗。
当たったときは怖そうだが、単純だな。
そう思い、カインズにオーケイのサインをする。
俺たちは、10メートルほどの距離をとる。
準備の確認ができた、スミレさんは、
そして、「では、始め!」
と、スミレさんが、手を上げてから、下げる。
俺は、一瞬で考える。
バトルフィールドは大量の、高く、
細長い氷柱のような岩で構成されている。
端には、岩の山があり壁代わりだった。
[ソニックアクセル]を利用し、岩の間を一気に駆けて攻撃する。
相手は、ハンマーの使い手。始めてのハンマーの使い手だが、
大剣使いのシンのように、大きな装備ということは、
スピードが遅い、そこでスピードを生かした攻撃だ。
気づくと俺は、寝かされていた。
「完敗だった。」
あのとき、考えを整理し終わった俺は、
陸上スタートから、[ソニックアクセル]を使用し、
あの尖った岩の間を一気にジグザグに駆けた。
そして、「いくぜ。」と、突きから入り攻撃を仕掛けた。
カインズの体にかすれ、少し、体力が削れた。
よし、このまま。と、次は、連続で切ろうとした。
が、その時カインズは、
一瞬、驚いた顔を浮かべたが、すぐに笑い、
俺の剣に対してあの、ハンマーで対応してきた。
っ!、動揺を隠しきれなかったが、ジリジリと俺がカインズを
押していく。カインズは、苦し紛れに
[インパクト]を放った。
その隙に、ここだ、と思い、かわしつつ、
突きをもう1度放った。
同じように、またカインズの体力が削れる。
ここまでで、お互いの体力は、俺が全快で、
カインズは、3分の1の体力を減らしていた。
順調だった。
――このまま…――
と、振り向いた瞬間、
突然、影が大きくなってくる。
上を見ると、山のようだった、岩が崩れ、一斉に落ちてきた。
やばいと思ってすぐに前に走った。
その前には、もう一度[インパクト]を放ったあとの、ケインズ。
前と後ろ、囲まれた俺は、剣で対抗しようとするが、
そのまま[インパクト]を受けて、
落ちてくる岩の中へ吹き飛ばされた。
そして、俺は、岩に埋められてしまった。
遠くなる意識ののなかで、
「すべては、この一撃の布石…」
と呟いて意識を手放した。
というのが、先程のVsだった。
カインズは、わざとおどけて
「ガハハハハハ、気がついたか。
残念だったな。しっかりと重量武器を考えて、
先手必勝の速攻。お前なら、一気に直線で来るかと思ったが、
岩の間を使ってジグザグ移動とは驚いた。まあ、しかし
すべて俺の手の込んだ策で転がされてただけだったがな。」と、言ってきた。
「どうも。でもそれは皮肉にしか、聞こえない。」
と、笑いながら俺は、むすっとした顔で答えた。
「いや、そんなことないぞ。俺にダメージを与えたのは、数人しかいなかった。
まあ、さらに少人数だが、倒されたぞ?」と、続けた。
――――――あの、カインズを…
と、落胆する俺に
ほれ、と投げられたのは、匠の武器屋モカ
と書かれた、手紙だった。
「何だ?これ」と聞くと、
「中には俺の紹介文と、チケットがある。
モカに任せるから、あとは、
お前に合う武器を選んでもらえ!
さっきのような、剣ではお前を十分に生かしきれていない。
そこの武器屋なら、適したものを渡してくれるだろう。
昨日の報酬と、今日の気持ちだ。あと、呼び捨てにしろ。」
そういって握手を求めてきた。
「ありがとうカインズ。」と、握手をし、答えると、
俺はクエスト本部をあとにした。
_______匠の武器屋 モカ
今回は裏道から、通りを抜け、防具屋の隣の武器屋にいくと、
口論が起こっていた。
「ふんっ!お前のところの武器がショボくて、ショボくて、
俺のところに、愚痴りに来ている冒険者がいたぞ!」
「はぁ~??あんたのところの間違いないじゃないの~?
高い金だすくせにショボい防具で耐久力なくて、
すぐダメになる~って報告に来てくれたけど!」
「うるせえ、がさつ女が!」
「黙れ、へたれ男!」
『『うーーー』』などと睨みあっていた。
両方の言い分に賛成した。
たしかに、モカらしき女性は、顔立ちは整っているが、しかし
作業の途中で抜け出してきたのだろう。
顔を黒くしたままだった。
赤色のショートヘアーのロックと言われる髪型で、
服は体の露出度が多く、特に大きな胸がわかるぐらいの
オレンジの鍛冶服で、
額には、黄色のバンダナをしていた。
おてんば娘とは、言おうにも言えない
いわゆる元気過ぎる女性のようだった。
がさつ女は、十分に的を射ていた。
たいして我らが相棒、ディールも今日も、
昨日と同じしゃれた服でいた。
さすがだ。細かいところまで身なりが整っている。
だがたしかに、がさつ女性のの言い分も分かる。
前回の戦闘、そしてさっきの戦闘で、早くも耐久値は100のうち、
すでに10しかなかった。
だから、修理を頼もうと思ったのだ。
「まあまあ、お二人とも、落ち着いて。みんな見てますよ。」
と、嘘をついて二人を落ち着かせると、
「でも、ディールって細かい作業上手よね~」とやっと落ち着き
ディールは、「いや~モカは力が強くて格好いいよな
お、コウ!いや、相棒じゃねえか!どうした?」
と言った。
――――こいつら本当は好き同士じゃないか?
先程までの行いが嘘のように、
ふるまい始めた。
俺は、ディールに、「ディール、黒ローブの修理を頼む。」
といって、装備を変えてから黒ローブを渡した。
「おう!明日取りに来てくれ。」と、ディールが言うと、
「誰?この子は?」と、ディールが聞かれ、
「紹介する。コウ!ってんだ。なかなかに見込みがあるやつでな。」と、自慢げに俺を紹介した。
すると、女性は、
「こんにちは!あたしは、モカ!
武器屋の一応、店長というか、オーナーよ。
武器のことなら、私に任せて!」
「俺は、コウです。よろしく。
それと、モカさん、これ。」と、俺は、カインズからもらった、
モカさんに手紙を渡した。
「おい、コウ!こいつは、さん付けなんかしなくても…」と言うディールを遮りながら、モカさんは、
「うるさいディール!、でも確かに。私は、呼び捨てにして!
さん付け慣れてないから。あと、その様子だと、
みんなにさん付けしてるでしょ!
いらないよ!冒険者は対等!っでしょっ?」
「はい。わかりました。」と言うと、
「よし、ディールよりよっぽどいい子だわ!
それと、早く店にはいってちょうだい。」
と言われた俺は、モカに悪口を言っている
ディールに、またあとで、と言って
モカの武器屋の中にはいった。
中に入ると、数えきれない種類の武器があり、
売り場のすぐそばには、強化、製造用だろうか、石窯と、
そばには、暖炉があった。
「コウ、座って。」と俺を座らせた。
全く。ケインズの給料から引いてやる。と、悪態をつきながら、
手紙を読んで、うーーん、と考え込んでいた。
「まあ、いいわ。ちょっと、ディールの悪口でもいいながら
探しましょう。」と、言って昔話を始めた。
「私とディールは、幼馴染みなの。ディールは、図体だけで
小さい頃から、いじめられっ子だったの。
そこで、いつも私がいじめっ子たちを
ぼこぼこにして泣いているディールをなぐさめるの。
私は力が強かったけど、裁縫とか、お料理とかはまるっきり
できなかったの。
でも、ディールは、いつのまにかできるようになっててね…
なんか、ディールのくせにと思ちゃって、腹が立ったの。
で、気づいたら、いっつもケンカばかりしてる。
ほんとは謝りたいな。」
沈黙が生まれ、モカは「これ、本人には絶対言わないで!」
と釘を刺された。
刺されてなかったらたぶん言ってた。と、冗談っぽく言うと、
やめてよね。と頬を赤らめて、武器探しに勤しんだ。
あった!自信作だったんだけど、なかなか使える人がいなくて困ってたの。カインズに見せたのが
正解だったわと、モカが言い、武器を渡してくれた。
装備してみると、
『双剣(pistolese)ピストレーゼ(業)』
能力
str+25
agi+20
tec+15
for+5
説明 鍛冶屋の業が込められている。
力、素早さも見違えるだろう。
さすが、本場仕込み。すごい、とモカに言うと、照れながら
「これは、我が家の鍛冶技術の塊なの。まだ、おじいちゃんには教わらないといけないことたくさんあるけど、
これを持つってことは、私の店を持つってこと。
世界に名を轟かせてよね。そしたら…(お金がもっと…)
なんでもない。」
「わかった。最高の鍛冶屋ってことを証明してやる。」
――なんか格好つけてしまった。
俺は、恥ずかしくなってきて、
モカにありがとう、と言って、
店を出た。
そして今日はもう遅いと思って、ログアウトした。
To be continued
カインズ強い…
それとモカとディールの犬猿(?)コンビも出てきましたね。
今後どうなるのか楽しみです。
ては、また!




