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シンデレラは美談であった

作者:




シンデレラ。


それは誰もが憧れる物語。


父を亡くし継母、義姉に虐げられながらも健気なヒロインが王子様と出逢い、結ばれる。




本当に?





そんな実話がある?


どうして優しい父が意地悪な継母と結婚した?


父がいないのに生活出来るの?


王宮の舞踏会にただの村娘が招待される?


魔法使いのってファンタジーだよね?


しかも時間制限ありの………


靴のサイズで本人が分かるの?


顔で判別するでしょう。普通は………






そう、物語とは実話を元に脚色された美談である。

これはシンデレラの実話である。






「シンディ!シンディ!」

「何よ?義母さん」


私の名前はシンデレラ。でも殆どの人達は愛称で呼ぶ。


朝から騒がしく私を呼ぶのは父の後妻。

私の義理の母親である。


私の母は私が物心がつく前に亡くなり、父も先月に亡くなった。


父さんは何故こんな人と結婚したのか?


「シンディ!どうしましょう!?卵が爆発したの!台所がっ!」


そう、この義母はどうしようもない程に家事がまったく出来なかった。


慌てて台所に行くと、そこは卵の殻と中身が飛び散り悲惨な状態となり、フライパンからは炎がのぼりコンロの火と一体化になっていた。


まずは説教の前に火を消さないと火事になる。


まずはコンロの火を消し、ボールに水を入れフライパンに入れた。

ジュッーと、急速に冷えたフライパンから煙と共に油も跳ねた。


次に換気。台所の窓を全開で開けると、煙は窓へと抜けていく。


あとは片付けだけだが、その前に。


「何やってるのよ。毎度毎度。台所には入るなと、私は言ったわよね?」


「だって………シンディにばかりご飯を作って貰うのも悪いから……朝くらい私が作ろうと…………」

「それで何で爆発させて火事騒ぎになるのよ?今度は何?また目玉焼きでも作ろうとしたの?」


義母さんは料理を作ろうとする気はある。だが気持ちはあっても技術がない。


気持ちは嬉しいが、こう何回も破壊されては嬉しさより悲しさのがまさる。


お願いだから悪いと思うなら何もしないでくれ。


「目玉焼きは前に失敗したでしょう?だから私もレベルを下げて今度は茹で卵に挑戦したのだけど………」


何故、茹で卵!?


いや、茹で卵は簡単だよ!鍋に水を入れて茹でるだけの簡単卵料理だよ。この際、半熟、完熟になる茹で時間などどうでもいいよっ。


でもさ、何で、茹で卵にを作るのにフライパン!?鍋はどうした、鍋はっ!?しかもフライパンにはコロッケでも揚げるのかと、言いたい程の油が入ってたよねっ!コロッケの代わりに卵を揚げたのっ!?しかもそのままっ!


「そりゃあ爆発もするわ…………」


もう朝から疲れたよ。


私がここを片付けて、それから朝食の準備を始めるのか…………昨日の夜に綺麗にしたのに、また一からやり直しかよ、おい。


「シンディ………ごめんなさい」


そんなに泣きそうに謝るなら料理をしないでくれよ。


泣きたいのはこっちだ………


「もういいから、ここから出て部屋で大人しくしててよ。ここを片付けて、朝食が出来たら呼ぶから」


「私も片づ……」

「頼むからっ!邪魔するなっ」


義母さんが掃除なんかしたら余計に片付く物も片付かないわっ。

台所から渋る義母さんを追い出し、片付けを始めた。




一時間後




台所も粗方片付き、朝食も準備完了。

今日の朝食はトマトリゾット、サラダ、スープ。


フライパンがお釈迦になったから使用不可、卵は全て破壊、無事なのは畑の野菜と保管庫にあった米と調味料のみ。


台所にあったパンや食材、調味料は全滅した。油まみれの卵の残骸の被害は大きかった。


台所に入室禁止の紙でも貼ろうかな。鍵のが良いか?

よし、今日は南京錠を町に買いに行こう。


「シンディ!シンディ!」

「シンディ!!」


くそっ、今度は義姉さん達なのっ………


「今度は何なのよっ」


義姉さん達の部屋へノックもなく入ると、そこでは………


「服がっ!服が脱げないー!!」

「櫛がっ!櫛が取れないー!!」


立ったまま下半身の丸出しで、頭からドレスを脱ごうともがく義姉其の壱。


鏡台の前に座り、櫛を髪から取ろうとするも、櫛に髪が絡まり、余りの痛さに苦しむ義姉其の弐。


……………えっ、何やってんの?

馬鹿じゃない?


「「シンディ!助けてっ!!」」


父さん………

何で再婚したのよ?


亡き人の悪口を言うのは憚れるが言わせて頂きたい。


「女の趣味疑うわ………」


あの義母にこの子ありだわ。


連れ子の女は他にも居るでしょう。何でコレ等をよりにもよって選んだ。

父さんの女性の好みは理解不能だわ。


母子ともに学習能力がない。


義姉さん達よ。あなた達はこれが何度目だ?もう、数えきれないわよ。義母さんのようにレベルダウンのつもりがレベルアップするよりマシだが、こう何回も同じ事をやられると、呆れて慣れるどころかイラッと、くるよ。


苛々しながらも義姉さん其の壱のドレスのファスナーを下げてやる。

脱げなくて当たり前でしょう。

いい加減、ズボラで面倒臭がりな性格を直して欲しい。切実にっ!


「服ぐらい着脱出来るようになってよ」

「シンディ、ありがとう!ドレスに殺されるところだったわ………」


感謝の言葉より行動で示してよ。


次は義姉さん其の弐ね。

櫛に絡まった毛をほどいていく。

身嗜みを整えるのはいいが何故、毛ブラシを使わないでただの櫛でとかす?

自分の髪質くらい把握してよ。このトウモロコシ毛がっ!


「うぅ、痛かった………ありがとう、シンディ」

「次は鋏で容赦なく切るから」


それでも駄目なら剃るっ!

手のかかる義姉さん達の支度を整え、義母さんを呼び、四人で朝食を取った。



これがシンディの日常であり、朝の始まり。




そのどうしようもない日常を覆されるとは、この時のシンディには想像もつかなかった。








それはある日の事。


「舞踏会?」


「そうなの!町のくじ引き抽選で当たったの!」


義母さんが町のくじ引きで王宮舞踏会招待券(女性四名様限定)を当てた。


義母さんが強運だったのを忘れてた。


あれだけ爆発破壊を繰り返すのに、未だに無傷なのは運のなせる技だ。けして危機回避能力や反射神経が宜しい訳ではない。どちらかと言うと家事能力、運動能力は底辺どころか底が無い程マイナスである。


「舞踏会招待券なんかより温泉旅行券くらい選べる運を遣ってよ」

「まぁシンディったら!舞踏会よ?舞踏会はほらっ、えっと、豪華?よ」


「何が?」

「何かしら?でも王宮だもの!キラキラのジャラジャラよ!しかも食べ放題!!」


「はい、はいー!私行きたい」

「はーい!私も!」


「義姉さん達も?私は王宮より断然、温泉。その券は売って、売った金で温泉旅行。はい、決定!」


「「「えー!!」」」


「反論は認めません」


「食べ放題よ」

「王宮では生ハムメロンなのよ」

「七面鳥だよ!丸ごと」


確かに王宮の料理は魅力的ではあるわ。


でも王宮舞踏会招待券なんて招待のみでしょう。

ドレス代や交通費は自腹を考えると………


「家にそんな金はないのっ」


父の遺産では女四人は生きていけない。


なので義母さんには持ち前の強運を活かし、くじ引きや、たまに賭け事をやって貰っている。その強運は義姉さん達にも受け継がれている。


そこだけは羨ましい。


義母さんばかり何でもかんでも当ててしまうと悪目立ちするし、破落戸に絡まれる心配がある為ローテーションしながら。それでも余りやらせない様にしている。


なので生計、家事を握る私が細々と繕い物をしたり、野菜を育て売ったりして主に私が稼いでいる。


お陰様で私が作ったドレス、小物、野菜は頗る好評で金には成るが、家事に追われ時間がなく、一人で作るので量産出来ないが、四人で生きていけるくらいには生活出来ている。


「ドレスはシンディので大丈夫だから」

「王宮までは歩くから」

「タッパーも持って行くから」


「「「行きましょうよー?」」」


ああー、ウ・ザ・イ


面倒だわ。


絶対、温泉のが有意義なのに………

もう、良いわよ。義母さんが当てたクジだし、好きにすればいいわ。


「良いわよ。行けば良いわよ。但し、私は行かないからね」


「「「ええー!」」」


「シンディも行きましょうよ!?」

「生ハムメロンだよ!」

「七面鳥だよ!」


義姉さん達みたいに食べ物に釣られる程、馬鹿じゃないわよ。


「あのね、舞踏会は食事会じゃないのよ?ダンスがメインなの。私達は踊れないでしょう?」


町娘にダンスの教養などない。


「良く言うじゃない?壁の花よ」

「生ハムメロンに花」

「七面鳥に花」


ダンスする気ははなっからないのね……………あっ、駄洒落になった。


「コホンッ、まぁ私は行かないからね。ご飯だけ持って帰って来てよ」


この話はここで終わり。


不満そうな家族を残し、私は家事を勤しんだ。


だから知らなかった。


その家族達が不満顔から一転、ある企てを思い付き、悪戯顔になった事など知るよしもなかった。








舞踏会当日




私が作ったドレスを身に纏い、義母さんと義姉さん達はタッパーを持ち、王宮まで徒歩で出掛けた。


いつもは何かと騒がしい我が家も水をうったような静けさだ。


寂しいなどとは思わない。


この時を存分に楽しむのだ!


いつもは慌ただしくてゆっくり掃除も出来ない窓ガラスや保管庫の整理などをやる。


台所は私の城なので侵入者(義母、義姉s)がいない限り綺麗だが他は駄目だ。


私が家の中の掃除をやろうとすると、侵入者が手伝おうとするので余計に汚くされる。


善意でも私にとっては悪意しか感じられない。


今日は家の隅々まで隈無く掃除してやる。


義母さんのクローゼットから腐ったバナナが出てこようが、義姉さん達のベットの下から虫籠に入った幼虫が出てこようが、全部綺麗(処分)にしてくれるわ。


闘志を燃やしていざ、出陣じゃあ!!








と、思った矢先…………


私は今、縄で手足を拘束され荷馬車の荷台に転がされている。


何故こうなった!?






遡る程、2時間前……


私は掃除をしていた。


クローゼットにバナナはなかったが代わりに卵があった。


また卵!!

何時の卵よっ!?

食べれるの?食べれないの?どっち!?


割るのも恐かったから処分したわよ。


ベットの下からは幼虫の代わりに水の入った箱に緑亀が住んでいた。


あれほど生き物は飼うなと、口を酸っぱく言ったのにっ!


どうするよ!?

亀って何処に逃がすのよ?


分からないから水辺のある田んぼへと転居して貰ったわ。


他にも色々出てきたけど…………


言葉にするのもおぞましいわ。


そんな掃除に熱中している時、玄関から町の住人達が一斉に押し寄せて来た。


「シンディ!聞いたわよ!」

「王宮舞踏会招待券がせっかく当たったのに行かないなんて勿体ない!」

「またそんな地味な格好でっ!掃除より女子力磨きなさいよ」

「ドレスは私の1回目のウェディングドレスをあげるから早く着なさい!」

「化粧は私に任せなさい!男も女の顔に変貌させる私の腕をとくと見よっ」

「宝石はさすがにないけど、ガラス細工なら親方が用意したからキラキラよ」

「グラス以外は初めてだが中々の出来になったぞ」

「王宮まで家(農家)の(荷)馬車で連れて行ってやるぞ。まだ藁が置いたままだからクッションせい抜群だ」


えっ、何!?


何ですか!?アンタ等っ!!


不法侵入に拉致、拘束の誘拐ですかっ!?


犯罪だからねっ!!


やめて、服を脱がせるなっ!おっちゃん達も見てるからっ!!


私、まだ、乙女だから!バツニのウェディングドレスを未婚の女に着せるなっ!!縁起悪いなっ!


おいっ、顔を引っ張るなっ!私は女だっ!オカマの化粧技術は必要ない!!


ガラスの装飾品も重っ!靴まで飾りをつけるなよ!つーか、誰の靴?滅茶苦茶大きいです。パカパカするし………って親父さんのっ!?あんたガラス細工の装飾品に限らず、そっちの趣味もあったの!?


おっちゃん達に稲を束ねる縄で問答無用に手足を縛られ、荷馬車にin!ちょっ、藁が口に入ったんですけど!!


そんな現状に馬は長閑にパカパカ走り始めた。


「「「いってらっしゃ~い!お土産も宜しく」」」


それが目当てかっ!


だから藁に埋もれ大量にタッパーがあるのかっ!!


義母さんや義姉さん達ではお土産(王宮料理)も確実に持ってこれるか定かではないわよ。


だけどね………

これはないでしょう!!!


「アンタ等!覚えてなさいよーっ!!!!」


私の叫びは町の住人達の笑顔で返されたのであった。










お城に到着。


拘束を解かれたと同時におっちゃんを殴った、私は悪くない。


悶絶するおっちゃんに気を落ち着かせ、仕方がないのでタッパーを抱えた。


持ちきれない程のタッパー。


おかげで尻が痛かった。藁よりタッパーのが多いって、どんだけよ。


招待券は私は持っていなかったから入れないと思っていたが、残念ながら城の入口には義母さんと義姉さん達が笑顔で待ち構えていた。


私、終わった。帰りたい。


嵌められた。こんな馬鹿達に…………


怒りよりも馬鹿の策略に嵌まった私が悲しい。


「シンディ!やっと来たー」

「遅いわよ!私達は徒歩だったのに」

「タッパーなら騎士様が預かってくれるから、早く行きましょう」


そりゃあ、そうでしょうね。

タッパー持ちの婦女子を王宮には入れられませんよね。


すいませんね。騎士様。


ついでに荷馬車のタッパーも宜しくお願いします。

どうせ王宮の舞踏会なんだから料理は余るでしょう?メインはダンスだからね。


ついでにタッパーに料理を詰めて下さい。


義母さんや義姉さんに任せたら、ぐちゃぐちゃになるので。何しろ家事能力がドン底この三人ですから汁物と一緒に菓子を詰めるぐらいなので、非常に助かります。


騎士様にタッパーを押し付けて、いざ舞踏会(食事会)へ。意気消沈の騎士様なんて知りません。泣きたいのは私だっ。


もう食うだけ食って帰ります。


明日は朝市に行くので私は早く寝ないと。


睡眠は大切なのよ。

朝市の戦場を駆使するにはっ!


招待券を渡してお城に入ると、そこは………


「金がかかってるわね」


きらびやかな王宮内はドレスを来た淑女に、高貴な紳士達がすでに音楽に合わせてダンスをしていた。


私達は庶民。


かなり浮いてます。


だがそんな空気を読む家族ではありません。


「生ハムメロン!」

「七面鳥!」

「お皿は………」


我先にと目当ての料理を食べに、みんなバラバラに別行動。協調性がない家族である。いや、ある意味あるのか?


私はそんな家族を放置してウェイターからワインを貰った。

喉が藁のせいで粉っぽかったのよね。


そんなに急がなくても料理はなくらないし、タッパーもあるから持ち帰り出来るのにね。


「お嬢さん、一曲いかがですか?」


金髪碧眼のイケメンが何をトチ狂ったのか、ダンスを誘って来やがった。


「踊れないからダンスはしません。イケメンなんだから他を誘ってやれや」


イケメンに淑女の熱い視線が集まる。私には憎悪の視線だが。


「貴女が良いのですが………いいから踊れ。俺だって踊りたくないんだよ」


イケメン、性格悪いわね。


後半は私にしか聞こえない程、小声で言ってきた。


「だから、他を誘いなさいよ」

「俺が誘ったら、その気になるだろ。後が面倒なんだよ」

「だからって私は関係ないわ」


「……………タッパー。取り上げるぞ?」


何でそれを知っている!?あの騎士、チクったわね!


客の個人情報を流すなんて、騎士にあるまじき行為よ。


タッパーを取り上げられるのは駄目よ。

私の家のタッパーだけではないんだから!!


あんなに大量のタッパーなんて買ってまで返すのは嫌よっ!


「何様なのよ。いいわ、一曲だけ踊ってあげるわ。だからタッパーには料理を詰めて返却して頂戴。あとワインも何本か付けてよね」

「了解した……………お嬢様、私と一曲踊って頂けますか?」

「ええ、喜んで」


足を踏んでやるわ。


ダンスホールの中央に手を引かれ誘導され、手を組まされた。


近いな、おいっ。密着しすぎだよね。ダンスって。


そこからはイケメンに操り人形のごとく躍らされた。


足を悪意満載で踏もうとしても上手くかわされ、しかも見た目に反した力でホールドされたまま動かせられる。


靴がパカパカして靴擦れして痛いです。

しかも周りの客はダンスを中断して、私達に注目しています。


こんな人形劇が楽しいのかお前等は!?


ちなみに我が家族は、身内が強制的にダンスを踊っているのに、見るどころか食事に夢中で私が踊らされているのに気付いてません。


アンタ等のタッパーは私に懸かっているんだぞっ!


もう、嫌だ。早く終われー!


「ダンスが下手だな」

「五月蝿い。ダンスなんぞ生活の足しにもならないもんなんか踊れるか」


「虫除けにはなった。礼を言う……………ほら、回れ」


クルリとドレスを広げながら回される。


だから足が痛いのに回すなよ。


「ねぇ、何時になったら終るのよ?私は早く帰って寝たいんですけど」

「もうすぐ終わるはずだが………今更だがお前、何しにここに来たんだよ?」


「聞くな。やむを得ない事情というものがあるんですよ」


言いたくない。


馬鹿に嵌められ、馬鹿に犯罪を犯されたなど黒歴史だ。


「ふーん。まぁ、どうでもいいが。俺はお前が気に入った」

「左様デスカ。残念ながら私は気に入りませんでしたがね」


「そこがいいのだよ。素でいられるのは楽だからな」


イケメンは顔だけだものね。


顔だけは好みだよ。顔だけは。


お嬢様達も騙されているよね。


「私にも夢を見せろや」


今更だけどね。


性格まで良かったらドン引きするけどな。


第一、そんな輩が私に声なんかかけないわよ。


「夢と現実を混同する奴なんかと踊れるかよ。理想の押し付けなんて迷惑なだけだ」

「だからって私を巻き込まないでよ。アンタの事情は私には関係ないわ」


「仲良くダンスを踊った仲だろう?」

「脅されてね」


曲も終わり、ダンスホールから逃げようとする私の手を掴み、キスをしてきた。


鳥肌がたったわ。


離そうとしても、掴む手の握力が強すぎて離れない。


「離して下さい。ダンスは終わったの。約束は守れっ」

「ダンスはね。でも料理とワインは約束したが、ダンスの後は俺が何をしようと特に約束した覚えはない」


屁理屈野郎だな。


「言ったはずだよ。俺はお前が気に入ったって」

「私も言ったわ。アンタなんか気に入らないって」


あー!もうっ!苛々する。


言葉が通じないの!?


もう夜中なのよ!

のんびり会話をする時間は過ぎたの!睡眠時間なのよ!!


マジでしつこいイケメンだな!


手を掴まれては帰れない。


……………などと思うなよ!


私はイケメンの鳩尾に思いっきり、膝をめり込ませた。


腹筋硬いな。おいっ。


私の膝の皿は無事か?かなり痛かったよ。


でもおかげで私の手は自由になったわ。


「さようならっ」


永遠にっ!二度と会いたくもない!


イケメンから逃れ、七面鳥とメロンを抱えた義姉さん達とホールケーキを持っている義母さんを回収してから王宮から離脱した。


ちなみに荷馬車には料理の詰められた大量のタッパーとワインが乗せられていた。


騎士よ、ありがとう。これでイケメンにチクったのは水に流そう。







大量収穫に喜び忘れていた。


あのイケメンが誰かなんて………


私の靴の飾りが膝蹴りした時に、落ちていたなんて気付かなかった。









後日、町にイケメンが訪れ、イケメンが王子。しかも次期国王だなんて知らなかった。


招待券の身元が分かり、尚且つ一点物のガラス細工を証拠にまたしても拘束され連行。


証言者は住民全員。


ふざけんなっ!

タッパーの中身、返せやっ!!


「俺と結婚しろ。お前に拒否権はない」


そうですね。


私は庶民の女ですから王族には逆らえませんよ。


王様と王の臣下に望みを託します。


お願いだから反対してくれ。


……………だが、そんな願いは叶わなかった。


王様も王の臣下も歓迎ムード一色。


あげくに国をあげて大々的にパレードをやろうかと、話されたら、どうすればいい?


聞けば、王子様は一人息子で大の女嫌いだそうで、このままでは後継ぎがと焦っていたようです。


王様は正妃一筋なので他に後継ぎがいなく、王子様の妻は女なら誰でも歓迎らしいです。


私は庶民ですが健康な女なので歓迎された訳です。

はい。


王様でも王子でもいいから媚薬くらい盛れやっ!それでも臣下かっ!!と、臣下に説教したら私が盛られました。


新婚初夜に…………




おかげで只今、妊娠中です。


何度か逃亡を図りましたが、捕まりました。


現在は鎖で繋がれ部屋から出れません。


「妊婦に運動は大事です。鎖を外しなさいよっ!この変態横暴鬼畜王子!!」

「逃亡は過度な運動だから駄目だ。いい加減諦めろよ」


王子の膝の間に座らされ、足に嵌められた鎖だけでは飽きたらず、腕で拘束されています。


「妊婦は大人しくしていろ。子に悪い」

「ストレスも子に悪いわよっ!」


いいから、離せっ!

何で私なのよっ!!


言っときますが私は王子を愛していない。


なら何故、妊娠したと思われるかも知れないが、あれだけヤられて妊娠しなかったら女としてどうかと思う。

病気を疑うわ。


「だいたい何で女嫌いのアンタが女の抱き方を知ってるのよっ!?」

「それと、これとは違うだろ。まぁ、望んで抱いたのはお前だけだ。シンデレラ」

「私は望んでないけどねっ!」


「そこが良いのだよ。だから気に入った」

「私は気に入らないわ」


「でも嫌いじゃないだろ?シンディは俺の顔は好きだろう」

「顔はね。顔はっ!性格は大っ嫌いよっ!!」


「俺は好きだよ。顔も性格も体も……………愛してる」


だから逃がさないよ。

一生………


「最悪だわ…………」


本当に最悪。


………最悪な私。


そうよ。

王子の顔はドストライクよ。


それに、本当に嫌いなら逃亡なんかしないで潔く死ぬわよ。

嫌いな相手の子を大人しく授かる程、私は大人しくない。


それを分かって、愛の言葉を吐く王子。



だから私は絶対に好きも愛してるも言わない。


例え言っても言わなくても、逃げられはしないのだから意味はない。


「やっぱり気に入らないわ」


愛してやるものか。


「君はそれでいいよ」


王子は私を抱きしめる。

私はこうして王子に籠の中に囚われた。






囚われたのはどちら?




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― 新着の感想 ―
[良い点] 無い [一言] 媚薬盛られてレイプされて妊娠。 挙句、軟禁って。 そもそもシンデレラそのものが美談では無いし、この話だってコメディ風にしてるだけで胸糞じゃん
[良い点] 本家より何故かあり過ぎるリアリティ [一言] 腹筋捻れるかと思いましたw 王子視点でも読んでみたいです!
[一言] タッパーという単語でシリアスブレイク お気楽に読めました タッパー万歳\(^o^)/
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