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白鴉部隊

2話目です。

ラウの毒舌が炸裂します(笑)

では、どうぞ。

小鳥の囀る声で目が覚めた。

ぼんやりと明るくなった室内で、ガイルは体を起こす。

彼は一度伸びをすると、サイドテーブルに目をやった。

そこには、一人の少女の写真が置いてある。

木製のフォトフレームに映っているのは、黒髪を束ねた深い色の瞳の少女。


ラウとそっくりな顔立ちの少女。


ただ、ラウと違い笑顔で、人間だ。

ラウの場合は戦闘時に目立つように銀髪で、変形がスムーズに行えるように黒い軟質の素材でできた球体関節が剥き出しになっている。

「おはよう」

ガイルは写真に向かい、悲しげに微笑んだ。

と、ふいに電子音が鳴った。

ラウを起動させるタイマーだ。

『ラスト・ウェポンを起動します』

ボーカロイドの声と共に、ラウは体を起こした。

「おはよう、ラウ」

ガイルが振り向いて彼女に微笑みかけた。

ラウは相変わらずの無表情で、ガイルの目を見つめる。

「おはようございます、ガイル」


キッチンから何かの焼ける音が聞こえてくる。

朝ご飯を作っている音だ。

フライパンで目玉焼きを作っているのは、ラウ。

2人暮らしのため、一応女性の姿をしている彼女が家事を担当している。

兵器ではあるものの彼女自身も食事を必要としないわけではないため、それなりに楽しそうにこなしている。

「ガイル、できましたよ」

まるで妻のようにそう言うと、ラウは目玉焼きを2人分皿に盛りつけた。

と同時に、トースターからこんがりと焼けたトーストが飛び出す。

冷蔵庫からバターとケチャップを取り出し、テーブルへと運ぶ。

「ガイル?」

ラウが見ると、彼は熱心に画面を見つめていた。

『ドレイク王国軍は昨日、隣国・スワトリカの南部を占領しました』

女性アナウンサーの声に、彼は呟く。

「ひどい話だ…南部がスラム街だからって捨てやがって……」

ラウが冷たい声で言う。

「スワトリカ…我が国もやはり信用なりませんね。また人を傷つけたのですから」

彼女が席に着いたと同時に、電話が鳴り出す。

ガイルは仕方なさそうに立ち上がり、受話器を取った。

「はい……はい、そうですか……え?………わかりました

、すぐに向かわせます」

彼は取ったときの何倍も重そうに、受話器を置いた。

「ラウ……君にスワトリカ国軍から召集要請が出た」

ラウは無表情のまま、続きを聞いた。

「……何故?」

「ニュースでやっていただろう?ドレイクの軍が南部を占領している。お前の任務は南西にある都市に行き、ドレイクの侵攻を止めることだ」

彼女はティーカップを置き、冷たく言い放った。

「……つまり、その都市で敵を全滅させろと?」

「……………ああ」

重々しく頷くガイルに対し、ラウはその無機質さを感じさせる瞳を閉じた。

そして再び開かれたときには、人間味を根こそぎ取り除いたように、まさに『兵器』と化していた。


スワトリカ南西に位置する都市・マリナス。

国軍の所有する車でそこへ到着したラウは、百数十名の敬礼を一斉に受けた。

「ご協力感謝いたします!!」

号令のように告げられた言葉に、彼女は無表情の目線を向ける。

「貴方がたは、勝つためなら兵器に媚びるのですか」

彼女の冷めた声に、新兵と思われる前衛部隊のメンバーが萎縮する。

「まあまあ、それでも敬意を払っているのですよ。ラウ様」

奥のほうからかけられた男の言葉に、ラウは少し眉を寄せてみせる。

50代程度と思われる外見に、整えられた髭。

彼の目は意味ありげに細められる。

「では聞きましょう。貴方たちのしたことは、その肩に担いだ銃に奉仕し、戦車や空母に敬礼をすることと同じだと思うのですが……違いますか?スワトリカ国軍精鋭部隊…通称・白鴉部隊(ホワイト・クロー)の皆さん」

無表情の彼女から感じる威圧感にほとんどが黙りこくる中、先程の男だけが口を開いた。

「ラウ様、貴方はご自分をもっと高く買われたほうがよろしい。天才科学者であったダグラス・ホプキンスの血を引くガイル・ホプキンスによって作られた最高傑作。我が国スワトリカにおける最重要戦力。そんな貴方に敬意を払わない兵士などおりませんとも」

ラウは少しだけ歩み寄り、その男の得意げな顔を拝んでやる。

「相変わらずの饒舌ぶりですね。白鴉部隊隊長…ヴィルヘルム・スレイマン」

ヴィルヘルムは含み笑いをしただけで、何も言わなかった。

と、そこに一人の兵士が現れ、敬礼をした。

「スレイマン隊長、報告があります!もうじき、ドレイクの軍が到着するようです!」

「そうか……ご苦労」

そう答えたヴィルヘルムを横目に、ラウは尋ねる。

「推定兵力は?」

「およそ5000です!」

「5000?随分少ないですね……」

電脳を使って考える。

白鴉部隊を甘く見ているだけなのか、それとも―――

「では諸君、位置につけ!」

ヴィルヘルムが叫ぶ。

「スレイマン、私はどこに?」

ラウの問いに、彼は笑みを浮かべる。

「ラウ様は後方に配置されます。逃がした者を食い止める役割を、と」

「……そう」

その言葉だけで彼の真意が分かった気がして、彼女は冷たく言い放つ。

この冷徹な男の考えることだ、今さら止めることもしない。

「ではラウ様……」

「……ええ」


「「健闘を」」



いかがでしたか?

次回からはマリナスでの陸上戦となります。

では、3話目でお会いしましょう。

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