表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
AFTER THE WISH   作者: マーチヘア
大根女優~鈴鳴 飛鳥の虚飾日和~
8/57

7 格差ある休暇

 新章突入!さて今回はあの戦闘の後日談です。ではどうぞ!


 次日 午前八時半

 

 「痛っ・・・」

 激痛の目覚まし時計が腕に鳴り響く。こんな起こされ方をされる覚えはないが、こんな目覚め方をしてしまう原因には心当たりがあった。

 「葛篭さん重すぎなのよ・・・」

 昨日は結局、葛篭さんを自宅まで運ぶ羽目となった。ノエルと二人がかりとはいえ葛篭さんの身体は身長や体型に比例して重かったので、私が家に着いたときはもう動けないほどに疲れていたということだ。

 要するにこれは筋肉痛。

 でも今日も休日。そこには葛篭さんの暑苦しさ、狩意への恐怖、異能、命の危険、戦闘はなく、ただただ退屈な日常があった。こういう時は何もしないのに限る。

 良い機会だし朝食を摂ってから二度寝でもしてみようかな・・・聞いた話だとかなり気持ちいいらしい。昨日みたいなことがいつまたあるかわからないし、それまでに十分リフレッシュしておかないと・・・

 階段を下りて母におはようのあいさつ。さっそく朝食を作ってもらい、いただきますと言おうとした時、

 「琴葉、悪いけどそれ食べ終わったらお遣いに行ってきてくれない?」

 ・・・まあいいでしょう。少し動いたほうが気持ちよく眠れるというものだ。ホラ、ものは考えようだって誰かが言っていたような気もするし。


 午前 九時


 髪を整え、服を着替えて顔を洗う。

 「うんっ、これでよし!」

 私だって女の子、寝起き姿で外出する訳にはいかなの。おかげで時間はかかるし、(もうこれって二度寝って言わないんじゃないの?)という疑問も湧いてきたが気にしない。二度寝が無理なら昼寝でもいいじゃない。

 「じゃあこのメモに書いてある物を買ってきて。」

 母は私に財布とメモを渡・・・待ってこのメモ、ルーズリーフにびっしり文字が書いてある!?

 「多すぎるわよ!」

 「一度引き受けたでしょ?だったら文句言わずにさっさと行きなさい。」

 くっ、この狸め・・・


 午前 九時半


 町に出て一つずつ目的の物を買っていく私。一つ目、二つ目ならまだ余裕なのだが、これだけ注文が多いと手で持てるかどうか・・・案の定、リストの四分の一程で私は動けなくなった。

 「・・・こんなの無理に決まってるじゃん!」

 人目をはばからずに叫んでしまいそうになる。しかたがない、面倒だけど一回家に帰ろうか・・・

 その時、

 ガラガラ・・・ゴトゴト・・・

 私の横から車輪が転がる音が聞こえてきた。そちらを見ると見慣れた小柄な少年が荷車を曳いているのが見える。

 「おはよう、ノエル。何してるの?」

 「あっ、おはよ〜。え?この荷車を見ても俺が何をしているのかわからないの?」

 荷車を曳いて町ですること?まったく思い当たらない。

 「買い物に決まってるじゃん!琴葉ちゃんは?」

 あーなるほど・・・つまりその荷車で買ったものを運ぶというわけだ。周りの人の迷惑になるし、そもそもそんなにたくさん買わないで・・・いや、まてよ・・・

 「ねえ、もしノエルが良ければ私の荷物も乗せてくれない?荷車曳くの手伝うからさ!」

 「全然かまわないよ。でも俺の買い物にも付き合ってくれるならだけどね。あと三か所行くところがあるんだけど、どうする?」


 午前 九時四十五分

 

 ここは街から少し離れた製鉄場。飛び散る火の粉がちょっとまぶしく、かすかに熱気を感じさせる。

 「えーと、ノエル?買い物だよね?ここどう見ても・・・」

 「ねえぇー、工場長さんどーこー?」

 どうやらノエルはここの人たちにかなり顔が利くようだ。気がついた一人がすぐに私たちを工場長の所へ連れて行ってくれた。

 「これはこれは、亜木々坊ちゃんじゃないですか。今回はどのような用件で?」

 「鉄と鉛の金属粉が欲しいんだけどあるかな?」

 「インゴットじゃなく金属粉ですか・・・?」

 「鉄がえーと・・・3kgと鉛が1kg。」

 「それならまあ・・・こんなところでどうでしょう。」

 電卓をノエルに見せる工場長。私の位置からは数字がよく見えない。

 「ちょっと高くない?もっと安くならないかな。」

 どうやらノエルにとって高額だったらしい。

 「粉末状態にする手間賃も込みですよ。こんなものでしょう。」

 「想定内の金額だから別にいいんだけどね。」

 どうやら商談は成立したらしい。ノエルが工場長にお金を渡しているのが見えた。

 「ところで坊ちゃん・・・女の子とのデート中にこんなむさ苦しいところに来ちゃそのうち逃げられちゃいますよ?」

 「デート?」

 「え、えーと失礼します!ほら、ノエル行くよ!」

 「ちょ、ちょっと?」

 二つの布袋を荷車に積んで早急にこの場から立ち去る。私たちってそんなにカップルに見えるのかしら?


 午前十一時十五分


 今度は路地裏を通って寂れた怪しいビルへ・・・こんな場所でいったい何が売っているというのだろうか。

 「もしかして亜木々君か?」

 声がする方を見ると顔に傷のあるコワモテの大男が立っていた。見た目だけなら狩意よりも凶悪に見える。

 「久しぶり〜おっさん。今日はここにいるって聞いたからさ。」

 「こ、この人は!?」

 「おっさんはこんな見た目でも一応化学者なんだ。おかしな薬とか作ったら特別に売ってくれるんだよ。」

 「こんな見た目ってどういう意味だ?まあ、そんなことはどうだっていい。どんな薬が欲しい?」

 「実はこの前おっさんが完成したって言ってた『強力睡眠薬』が欲しいんだ。」

 「お前不眠症なのか?あれは用法を間違えたら危険なんだぜ。」

 「別に俺が使う訳じゃないさ。」


 私はビルを出た後、なぜそんな物を買ったのか聞いてみることにした。

 「昨日のことだけど震君は言うまでもなく、琴葉ちゃんもサポートで役に立っていたでしょ?戦闘じゃほとんど役に立たない俺も俺なりにできることをしようと思ってね。」

 ?あまり質問の答えになっていないような気もするがノエルはそれ以上教えてくれそうにない。

 「さあ次で最後だよ。ちょっとここから遠いけど急げば夕飯までには帰れるはず・・・たぶん。」

 すごく嫌な予感・・・


 午後二時半


 昼食を抜いてまでただひたすらに歩いてたどり着いたのは・・・

 「ここってたまにテレビでCMやってる会社だよね。確か・・・工業用の大型機械のメーカーだっけ?」

 「うん、そうだよ〜」

 そう言ってノエルは何のためらいもなく、その物々しい入り口へ進んでいく。入り口の所には警備員が立っているがその警備員に向かって、

 「今日、社長さんに会う約束をしていた亜木々です。ここを通してくれませんか?」

 話のスケールが大きすぎるよ・・・これは私の頭の許容量を遥かに超えた事態になってきたな。

 

 午後二時四十分


 「ほー、大きくなったな!いよいよ浮世さんに似てきたじゃないか。もっとも性格は全く違うがな。」

 六十歳ぐらいのスーツを着た老人がノエルの肩を叩きながら笑っている。どうやらこの人が社長らしい。

 私は完全に蚊帳の外、なんか気まずいし頑張って話の輪に加わろうか・・・

 「あの、浮世さんってどなたですか?」

 「お嬢ちゃんはこの子の連れかい?浮世さんというのはこの子の祖父の名前じゃよ。わしがこの会社を立ち上げる時、よくお世話になったわい・・・」

 どうやら社長さんはノエルの祖父の古い知り合いらしい。

 「今日はちょっとお願いがあってきたんだ。俺の家にある機械を近いうちに使う予定だからメンテナンスして欲しいんだけどお願いしてもいい?」

 「浮世さんが死んでから一回も使っていないからのう・・・よしわかった、近いうちに人員を送ろう。」

 「本当?それじゃあよろしくね〜」


 午後五時半


 「いや〜付き合わせちゃってごめんね!疲れたでしょう?」

 それはもういろんな意味で。まさかあんな場所へ行くとは思ってなかった。

 ここで私の家に到着。

 「また明日ね〜琴葉ちゃん!はい、これ荷物。」

 「ありが・・・あ。」

 確か私がノエルに会ったのはメモの四分の一程買った時で、それから先はノエルの買い物に付き合って今に至る。つまり・・・

 日が落ちようとしているのに私のお遣いはほとんど終わっていない。この後、事情を話した母にこっぴどく叱られたのは言うまでもないことである・・・

 バトルパートを書くのはとてもめんど・・・難しいのですが、今回のようなのは楽でうれしいです。あ、もちろん筆休みじゃないですよ?ちゃんと真面目に書きました(焦)

 さて次回はいきなり新キャラ投入。正直大丈夫か・・・?

 ではWISH 8 「赤ポニテは今日も快活!」をお楽しみに!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ