3 まどろみの預言者
今回はあとがきにプロフィールNO.1があります。
ゆ っ く り、し て い っ て ね・・・
同日 午後三時
休み明けの授業ほど憂鬱なものはないと思う。しかし私はこの疲れた状態でさらにテニス部へ顔を出さなくてはならないのだ。
この篝火中学校では生徒は全員、何らかの部活に入らなくてはならないし、どの部もある程度活動的なので私は正直めんどくさい。そういえば、入ってきたばかりのノエルはどの部活にも入っていない。
「ねえ、ノエル。あなたはどの部活に入るつもりなの?」
「ぶかつ?ぶかつってなに?」
予想外の返答に絶句。前の学校には『部活』というものがなかったのだろうか?とりあえず、部活について簡単に説明してみる。
「すごく面白そうじゃん!どうしたら入れる?」
そこの見解は私とは逆のようだ。
「どうやってというと・・・あっ、もしよかったら案内するけど。」
「本当!?ありがとね〜」
こっちこそ感謝である。おかげで部活がサボれる。まずは冬摩先生に話を通さなくては・・・
午後三時十五分
「ということでですね、亜木々君と部活巡りに行ってきます。」
「わかりました。ところで傘音さんと亜木々君は仲がいいのですか?」
どうなんだろ?ノエルは性格も容姿も可愛いところがあるが、ちょっと前に出会ったばかりだし男の子だしな・・・まあでも、どちらかと言えばね?
「ええ、まあ割と話しますね。」
「琴葉ちゃんはこっちへ越してきてから初めてできた友達なんですよね〜」
友達だと思ってくれていたのか・・・悪い気はしないが。
「そうですか・・・では行ってきなさい。」
二人が去ってから、
「それはちょうどよかったです。」
聞こえないように。意味深に。
二日後 午後三時
ノエルと一緒に部活巡りをしてわかったことが二つある。一つはノエルがかなりの運動オンチであるということである。陸上部のハードル競走を体験したとき、タイミングが全く合わずにハードルを跳ぶことすらできなかったほどだ。一方、手先は非常に器用だった。手芸部を訪ねてぬいぐるみ作りを体験していたが、なんと十分ほどで完成させ、どの部員の作品よりも出来栄えがよかった(男の子なので初めはかなり白い目で見られていたが、完成品を見た後はむしろ入部させようとした。ノエルも気に入ったらしく、そのまま入部することになった)。さすがは人形館の主人といったところだろうか。私はあまりぬいぐるみなどに興味がない方なのだが、
ノエルのはかなりカワイイと感じた。
というわけでノエルは今日から手芸部へ通うことになる。HRがもうすぐ終わるということで彼はかなりそわそわしている。
「えー、ではHRを終わります。傘音さん、亜木々君、葛篭君は放課後先生のところへ来てください。」
驚きと落胆がノエルの顔に広がる。それはないよ冬摩先生・・・というより私たち何もしてないよ?
午後四時 冬摩宅
「冬摩先生・・・?」
「何でしょう、傘音さん。」
「私たちなんで呼ばれたのでしょう?そもそもなぜ冬摩先生の自宅なのですか?」
「部活行きたかったな〜」
それを声に出す?普通・・・
「傘音さんのいう通りっすよ!おれっちたち、やましいことした覚えなんてないぜ?」
いや、葛篭さんはやましいことだらけでしょ・・・
「言い出しにくいことなのですが、先生があなたたちを呼んだのは個人的な要件なのです。それを職員室で話すわけにはいけませんし。」
「それで先生、用件ってのは何なんっすかね?」
「まずは先生の言っていることが真実だと証明する必要がありますね。傘音さんは今日、父親が急な仕事で帰れなくなるので、母親が外食に連れて行ってくれます。」
「そんな話聞いたことがありませんよ?」
「亜木々君の今日の夕食はラーメンですね?しかし丼が出される前に店に火災が発生して結局食べそびれます。」
「確かに晩飯はラーメンにするつもりだけど・・・」
「葛篭君は妹さんにサラダとステーキを出してもらいますが、妹さんが居眠りをしていたため夕食は遅くなるでしょう。」
「震君、妹がいるの?」
ノエルは部活巡りの際に葛篭さんに会っていて、すぐに仲良くなった。私は葛篭さんのテンションが苦手だがノエルは気にならないのだろうか。
「ああ、今年から中学生のな。」
「とりあえず今話せるのはこれだけです。明日も呼びますので、また集まってもらいます。あと葛篭君は家に帰ってから髪の色を元に戻してきてくださいね。同じ赤でも妹さんのはもっと落ち着いた色でしたよ。」
「うっ、わかったっすよ・・・」
冬摩先生の謎の言葉を胸に全員帰宅した。
午後五時半 傘音サイド
私と母はほとんど同時に家についた。ちょうどその時電話が一本。私が受け取ってもいいのだが、疲れているので母に任せる。
「もしもし、傘音です・・・あっ、あなた・・・わかりました気を付けて。」
ん?
「琴葉、お父さんが急な出張で帰れなくなったの。今日は外食でいいかしら?」
マジですか?マジなのですか?
午後七時 駅前の中華料理店 ノエルサイド
「あっ、店員さ〜ん。ネギラーメン一つ!」
ノエルは駅前のラーメン店で注文中。
「ん〜たまにはね、自分で作らずに楽したいんだよね〜。生き帰り大変だろうけど。」
待っている間、この数日に起きたことを彼なりに整理しようとする。しかし間もなく、
「お、お客さん!逃げてください!火災です!」
しばらくして全員が避難完了。幸いにもけが人は出なかった。
「・・・お惣菜でも買って帰ろっか・・・」
今日はとことんついてないノエルである。
午後八時 葛篭宅 葛篭サイド
修行(喧嘩)から帰ってきた震を待っていたのは、同じく赤毛の(といっても震のように染めているわけではないので鮮やかな色ではない)妹、優の寝顔だった。おそらく慣れない環境で疲れたのだろう。
ごつい体格の震とは逆に優の体は華奢で、母を彷彿させる・・・
「クソッ・・・」
過去の惨劇が頭をよぎる。自分の人生が狂ったあの日のことである。
母のため、優のため、そして自分自身のため・・・俺はあいつをこの手で・・・
そんなことを考えているうちに震はもっと身近に大きな問題があることに気付く。
「メシ・・・ねーじゃん・・・」
父親は単身赴任、自分はカップ麺さえ作れない、母は・・・今はよそう。つまり最近は優が料理をしている。
体を動かした直後なので、とても腹が減っている。優を起こそうとも思ったが、その可愛らしい寝顔を見て考えを変えた。
次日 午前十二時半 昼休み
「私、昨日お父さんが急に出張に行ったから、晩ごはんが外食になった。」
「優が『お兄ちゃん早く食べたいみたいだし、今日は簡単なものにするね!』ってことでステーキとサラダになった。」
優とは多分、葛篭さんの妹のことだろう。にしても、葛篭さんの印象が髪を元に戻したことにより大分変わった。まだ赤いがこれは多分、元からだろう。
「火事でラーメン食べ損ねた〜」
「ご愁傷様です、ノエル・・・冬摩先生の言った通りになったね・・・これはつまり・・・」
「つまり?」
「わかるように言ってくれよ、傘音さん。」
なぜわからないのだろう?
「冬摩先生が未来予知したってことになるんじゃないのかな?」
ああ、我ながらに馬鹿げた仮説だ。しかし二人からは反論がない。ノエルはともかく葛篭さんは『あれ、ひょっとして傘音さん痛い人系!?』とか言いそうなもの。
「あのー、葛篭さん?まさか信じてなんか・・・いないよね?」
珍しく黙っている。えっ、信じちゃってる?
傘音 琴葉 13歳 女性
カサネ コトバ
身長 159cm 体重 ?
運動能力 4/5
頭脳 3/5
器用さ 3/5
癖 気が高ぶっているときに胸に手を当てて落ち着こうとする
こんなところですかね・・・みてみんの方ににデザインサンプルを載せています(http://7441.mitemin.net/i63038/)このアドレスです。これからもある程度進むごとにこういうことをしていきます。
さて次回は、葛篭 震の過去についてのお話です。
ではWISH「 4 白は嘲り、赤は怒り」をお楽しみに!