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第1話-3

遅くなりましたが、第三話始まります。

「八ア~~~~。ったく、実の兄を本気で切るとは、我が妹ながら恐ろしく育ったもんだぜ」


閑静な夜の住宅街を陸斗は高速で走り抜けながらため息をつく。

昔はいつも兄さん兄さんと、陸斗の後ろばかりを追いかけてきた妹だったが。今はそんな面影は消え失せ、兄をナイフで切りつけるアサシンに成り果てた。


「いくら何でもあれはない。育てかたを間違えたかな?」


十年前、両親が事故で死亡してから男手一人で育て上げてきたからな。

独り言を愚痴りながら走る陸斗。

数分走り続けると、住宅街を抜け、人通りと車通りの激しい大道路に到着する。


「結構人がいるな。気をつけて移動しないとな。」


周囲の民家、コンビニ、カラオケ、居酒屋、ファミレスなどが建ち並んでいる。そこに高校生、大学生、主婦、サラリーマンなど大勢の人々が行き来する歩道。

様々な人が歩いているが、誰も陸斗の存在に気がつかない。

普通コンクリートの上を走れば足音がなるものだが、武術を修行し続けた陸斗はほとんど無音で走り続ける事が可能になり。

人々の意識の隙間を通ることにより、自身の存在を限界まで消すことを可能した。

この技術が妹の追ってを振りきる為だけに生み出したことは誰にも秘密だ。


(でも、歩道を歩いている人数は平均より少ない。子供や女性が全然いないな。…………….やはり例の事件が原因か?)


数分間走り続けて目的のコンビニに到着する。

陸斗は妹へのおみやげを考えながら、コンビニの自動ドアを潜ろとした。その瞬間


『緊急速報です。今日の午後八時五分ごろ、室田(むろた)市福間(ふくま)の十階マンション「トリア」の住民二百十七人すべていなくなっていることが判明しました。原因は不明。警察は―――』


例の事件のニュースが隣の電気屋のテレビから聞こえてきた。


「またか、これで今月に入って三件目だぞ。」


コンビニに入る事を一時中断した陸斗は、電気屋まで移動、テレビを見る。

女性のニュースキャスターが真剣表情で喋っているのは、ここ三ヶ月で日本全国で連続で二十回以上発生している事件『集団消失事件』である。

一番始めに発生したのは山に囲まれた小さな町、一夜にして三人の家族がいなくなった。

当初は家に財布、携帯電話など残っており、争った形成がなかった事から家族で山に入り遭難したのだと思っていた。警察も山に入り捜索体をつくりあげ捜索した、誰もがすぐに見つかると思っていた。が、三日が経過しても誰一人見つける事が出来なかった。警察もただの行方不明ではなく、何かの事件に巻き込まれたと判断した。

しかし、気づくのが遅すぎた。

四日目には、隣の市の一家の五人家族がいなくなった。こうしたペースで次々と人がいなくなっていき、今全国で行方不明者は千人を越えている。

しかも、少しずつ『消失』する人数が増えて、今回は二百人弱が消えた。過去最高である。


「……….…誰が起こしているかは知らないが、頼むから来ないでくれよ。俺はまだ消える訳にはいかないんだ。」


ニュースが別の事件を放送し始める。

陸斗は、興味をなくし初期の目的である妹へのおみやげを買うべくコンビニの自動ドアをくぐった。




月の光だけが室内を僅かに照している廃ビルのー階。普通なら誰もいない筈のリビングに、二人の女性が自分たちの前の空間、暗闇にいる何を睨み牽制する。

一人は百六十センチ程の身長に、女性として立派な体型をした女性。歳は十五~~十六ぐらい。

月の僅かな光を反射して輝く腰まである銀色の髪をなびかせながら立つている女性。サファイアのような蒼い色の瞳を鋭くして目の前にいる何かを睨んでいる。

服装は、ドレスと甲冑を混ぜたような格好。その材質は金属で造られているのか布製で造られているのか、まったくわからない。

そして手には髪と同じ銀色の槍を構えながら。


もう一人の女性、というより女の子である。

年は十歳ぐらい。百三十センチ程のミニマムな身長に、凸凹のない年相応の体型に、月の光のように暖かく輝く金髪をツインテールをした女の子。瞳は髪と同じで金色の瞳。

こちらは、大きめの三角帽子に、不思議なローブのような、インナーのような服装を着ている。

こちらは目の前にいる何かから目を反らし、瞳に涙を溜めて今にも泣きそうな顔で銀色の髪をしている女性の後ろに隠れている。


「コルナさん、どうしましょうかこの状況。」


「………………そうね。どうしょうかしら?」


コルナと呼ばれた女性は前だけではなく、二人の周囲にも視線にも視線を動かす。周囲には蠢く何かが十匹ほどいるが、これらはあくまでも雑魚だ、倒すべき相手は別にいる。


(おかしい。これだけの『従魔獣』がいれば、それを支配している本人がいる筈。どこに….………)


隠れている相手を探すが、どこにもいない。


「リア、貴方探知、捜索系の魔法技術も得意でしたね。相手がどこにいるかわかりませんか?」


「あ、はい。やってみます。」


何処から出したのか。リアと呼ばれた女の子の手には4本の短剣が握られ、地面に突き刺す。そして、四本の短剣の中心にリアは輝く液体を一滴だけ落とす。

すると、短剣の全てが輝き出す。剣は自動的に輝きながら地面に円を作成、その中に幾つもの模様が描かれ魔法陣が完成する。


「探知術式『完成された地球儀』発動します。」


魔法陣が一気に拡大する。

一瞬で廃ビルを抜けて拡大、数秒で今いる都市のすべて囲んだ魔法陣は点滅した後に消滅する。


「どうリア?犯人の位置は掴めた?」


「はい。でも、いけません。あの人また人間を殺すきです。」


「!!位置は何処にいるの。」


「ここから南に五キロほどにある繁華街にいます。」


リアは南に指を指し示す。

思っていたよりも近い場所にいることは嬉しかったが、だからこそ悩んでしまう。

今ここで自分たちが離れてしまえば、目の前にいる敵は間違いなく周囲にいる人々、民家の住民に襲いかかり何十人という罪のない人々が犠牲になるだろう。

でも、ここで犯人の思惑通りに時間をかけてしまえば、犯人は取り逃がし。また違う町や都市で多くの犠牲者を出してしまうのは明白である。

コルナの考えがまとまらない内に、闇の中から何かが前に歩き出す。


「ガギギギアアアアアアアアアアア!!!」


歩きながら雄叫びをあげる何かの全貌が月明かりにより見え始める。体長は十メートルほどもある巨体、脚は無数にあり動く度にイヤな音が辺りに響く。目は8個あり主眼が一つ、主眼の周りに三つの副眼が存在する。姿形は細長くムカデのように見えるが、体には蟻の様な黒い装甲で覆われている。

地球上のどんな昆虫にも類似しない敵が現れる。

周囲にいる九匹の敵も、同じような姿をしており、統一された動きでコルナとリアに接近する。

悠長に考えている暇はない。


「….………リア、私がこのものたちを倒します。貴方は先に向かい、術式結界を展開して相手を封じ籠めてください。」


「はえっ!ム、ム、無理無理無理ムリですよーー!!わ、わ、私、結界術式は得意ですけど、攻撃術式なんて使えませんし、捕獲したままにするなんてとても。」


「大丈夫です。この程度の『従魔獣』なら数分で倒せます。私が追いつくまで隠れたり、逃げていて下さい。」


「で、でも…………」


この状況で自分でリアはコルナの役にたてないことはわかっているが、仲間を一人置いていくことに罪悪感を感じているリアは中々頷くことができない。そして、敵はそんな二人をただ待つてくれるハズがない。

周囲にいる敵は残り五メートルにまで近づき、いつでもコルナたちに襲いかかれるように待機する。


「行ってリア。必ず追いつくから。私を信じて。」


「……….…はい。わかりました。必ず追いつて来てくださいね。」


力強く頷くリアに微笑み返すコルナ。

瞬間、痺れを切らしたのかー匹の『従魔獣』が二人に襲いかかる。普通の人間では動いた事すら認識できないほどの速度、五メートルの距離を殺した『従魔獣』。前肢にある鋭い爪で二人を切り裂こうと振るう。が、


ザン!!!


銀色の軌跡が空間に描かれる。

同時に何か空に舞い上がり、数秒の後に地面に落下する。べチャと、不愉快な音とともに落下したのは、今まさに二人を切り裂こうとした『従魔獣』の爪と頭部。

切り裂かれた首と前肢から噴水のように赤黒い液体が噴出され、しばらく動き倒れ動かなくなる。


「加速術式『加速する世界』!!」


リアが術式を唱える。

瞬間、リアの全身が赤い球体に包まれ、消えてなくなる。残るのは移動した時に舞い上った粉塵だけ、コルナは安心した表情を作り、残った『従魔獣』を見据える。


「さてさて、私も早くあの子を追わなといけません。」


コルナは赤黒い液体が付着した銀槍を振り、液体を吹き飛ばす。

再び槍を水平に構えるコルナに、『従魔獣』は僅かに身を引く。僅かにある知性が警戒してるいるのだ、このままいけば殺されると。

下がり警戒している『従魔獣』にコルナは。


「警戒しても無駄ですよ。貴方たちはここで私に殺されるんですから。」


コルナが握っている銀槍が光輝く。


「貫通術式『穿つ銀月の閃光』発動。」


銀槍にオーラのようなものに包まれ、コルナは身を低く構える。その姿は獲物を狙う猛獣の姿を連想させる。銀槍のオーラに危険性を感じたのか『従魔獣』たちの警戒度が最大まで引き上がる。


「いきます。」


踏み込む。

銀色のオーラで周囲を照らしながら一本の槍となったかのように、高速で『従魔獣』に近接するコルナ。「ガガガアアアアアアアアアアア」と雄叫びをあげながら、『従魔獣』は迎撃する。




「………….….…ん、なんだ。何かおかしくないか。」


妹の機嫌が少しでも好転することを祈りながら、コンビニの雑誌コーナーで立ち読みしていた陸斗は周囲の異変に気づく。


「なんだ?いつの間に人がいなくなったんだ。こんな短期間に。」


つい先まで隣で陸斗と同じように雑誌コーナーで立ち読みしていたオッサンがいた筈なのに、何処にもいない。それどころか、コンビニの中には客も従業員も誰一人としていくなっていた。

嫌な感じがした陸斗はコンビニを出て、周囲を見渡す。しかし、車はあるが人が乗っいず、歩いている人すらいない、どこを見ても誰一人として人を見つける事ができない。


「一体全体どうなっているんだ。いくらなんでも、これだけの人数の人間がいなくなるなんておかしいだろ。」


とりあえず人を探そうと歩き出そうとする陸斗の耳に、小さな女の子の悲鳴と、大きな何かが歩いてーーーー否。鋭い何かが連続で地面を穿つような地鳴りのような音が聞こえてくる。


「おいおい、なんだこの地響きは、○撃の巨人の巨人でもいるのかよ。」


最近のお気に入りの漫画に出てくる巨人の姿を思い浮かべながら、こちらに向かって来ている『何か』に警戒する。地鳴りは次第にこちらに向かってくるのと比例して、悲鳴の声はどんどん大きくなり。遂に陸斗にその姿を現した。


「マジかよ。……….…ーーったくカンベンしてくれよ。厄日だな今日は。」


現れた化物に陸斗はため息を洩らす。

蜘蛛のような瞳に、蟹のような分厚い鋏、カブトムシのような固そうなな甲殻、ムカデのような長い胴体に鋭い刃物のような脚をしている。

その高さは十メートル以上、全長は十五メートル以上ある。

まるで、錬金術で創りだしたキメラそのものだ。

そんな化物が時速三十キロ程度の速度で陸斗の方に歩いてくる。

イヤ、陸斗に向かってくるのでは誤解がある。化物は自身の前を前を必死に走っている十歳ぐらいの金髪の女の子を踏み殺そうとしているのだ。


「ヤダァァァァァーーーーー!!!助けてーーーーーコルナァァァァァ~ーーーーーーー!!!!」


悲鳴をあげながら、クネクネとジグザグに走り迫りくる化物の脚を器用に回避していく。とてもじゃないが『カン』だけ避けらる手数ではない。


「どんな手品で避けているかは知らないが、いつまでも避けられるほど甘くはないな。女の子の体力では続かない。」


陸斗の言う通り、女の子の動きが少しずつだが鈍くなっていき。速度は落ち、機敏な動きが出来なくなっていく。僅かだが、女の子の服装に切り傷が増えていく、あれでは攻撃を受けて死んでしまうのは目に見えている。


「しょうがない、助けにーー」


「あう!?」


陸斗が走り出す前に、脚がもつれたのか見事に転び転がる。


「!!!駄目だ!!!そのまま転がれ!!!」


「ほえっ?」


声をかけられてまぬけ面をする女の子。

その頭上から刃物のような化物の脚が降り下ろされる。その一撃は間違いなく女の子の命を奪い、女の子のこれからの人生を奪ってしまう無慈悲な一撃。


「んなことさせるかよ!!!!」


ドン!!!!

陸斗の踏み込みでコンクリートが吹き飛ぶ。

三十メートル以上離れていた距離を一瞬で殺して、陸斗は化物の側面に回し蹴りを叩き込む。

ドカン!!!と、化物の装甲を陥没させ、そのままの勢いで十メートル以上をバウンドさせながら吹き飛ばす。

陸斗は転んだ女の子の前に立ち、背を向けながら。


「もう大丈夫だ。後は俺に任せろ。」


「ほえっ?」


再びまぬけ声が聞こえてくるが無視する。

陸斗の眼前で化物はゆっくりとだが立ち上がる。陸斗の蹴りはただの蹴りではなく、鎧通しを組み入れた特殊な蹴りだ。その一撃を直撃してダメージはあるだろうが、戦闘不能になるほどのダメージを与えられないのはわりと傷つく光景だ。


「ギギギギギギアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」


咆哮をあげる化物。

ただそれだけの行為で、家のガラスが粉々に割れ、地面に亀裂ができ、家は倒壊する。まるで天災のような化物に女の子は震え、泣き出しそうになる。が、


「うるせーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!」



陸斗は化物の以上の咆哮をあげると同時に、脚を振り上げて、堕とす。


ドカン!!!!!!


地面が凹む。

陸斗の周囲だけが、隕石でも堕ちたかのようなクレーターが出来上がり、その中心にたたずむ。

化物は茫然としたまま、女の子は呆然として、その光景に目を奪われる。


「化物風情が喚くな鬱陶しい。まあ、今から死んでしまうんだから嘆きたくもあるか?」


陸斗は軽く笑うと、化物を手招きする。


「来いよ化物、人間の恐ろしさを教えてやる。」


挑発された事に気がついたのか。

化物は陸斗に向かって走り出す。陸斗は向かってくる化物に対して悠然と構えた。



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