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6.答え合わせの時間

「……神羅?」

「何だ?揣摩」

私は隣に立つ神羅に疑問を投げかける。

「ここ…図書室だよね?しかも今日は閉館日だよね?」

この学校の図書室は外部の人に司書を務めてもらっているため休館日が多い。平日の昼休みは割と空いているが…放課後はほとんど空いている日はなかった。

そして今日は閉館日である。閉館日ということは当然図書室にきても本を借りるどころか入ることさえできない。

…そもそも本を借りるのが目的ではないはずだけど。

すると神羅がおもむろにズボンのポケットに手を突っ込み、小さな鍵を取り出した。 

鍵はチェーンのようなものと繋がっており、チェーンの先はズボンのベルトに固定されている。

「それ、まさか…」

「あぁ、図書室の鍵だ。といってもスペアだが」

「いやそこじゃない、そこじゃない。え?何で持ってるの?司書さんや先生ならともかく生徒が持つ鍵ではないと思うけど…?」

「俺の家はこの学校の図書室に多くの本を寄贈しているからな。でも司書はあまりいないから結局俺が作業することになる。で、スペアキーが渡されたってわけだ」

「はぁ…」

いくら図書室とは言え、鍵渡しちゃっていいの?何というかザル…こほん。

神羅が鍵穴にスペアキーを差し込んでガチャリと解錠しながらいう。

「そんなわけで俺は図書室が閉まってても自由に出入りできるんだ。放課後読書やこういう折り入った話をしたいときには重宝する」

「なるほどねー(適当」

歩友はそれ以上考えることをやめた。

図書室。この学校ではまだ来たことがなかったが、存在していることは把握していた。

一面に本がずらりと並ぶその様はまさに圧巻だ。蔵書も幅広い。

(前に居た学校よりも普通に凄いな…)

なんて思いながら私は本棚を見上げる。

「揣摩。そこに座ってくれ」

振り返ると神羅が部屋の隅の方にある向かい合った椅子の片方にすでに座っていた。

どうやら現実逃避も長くはさせてもらえないらしい。

「りょーかい」

私は覚悟を決めるともう片方の椅子に座った。

「さて。まずはだが…」

まずはってことは次があるのか…わかってたけどしばらくは帰れなさそうだ。

「まずは?」

「揣摩、お前は一体何者だ?」

「ッ」

息を呑んだ。時が止まったような気さえした。そんなわけないのに。バレているはずがない。いや、今はそこを気にしている場合じゃない。話を逸らす。

「何者って…どういうこと?」

「少しわかりにくいか。言い方を変えよう。お前は天道日陰のことをどう思っている?」

「どうって…友達、だよ。逆にそれ以外の言葉なんて見つからない…違う?」

「その言葉に嘘はないな?」

「あるわけないでしょ…何?そんなことのためにわざわざ呼び出したの?」

そう答えつつ、私はほっと胸を撫で下ろした。どうやら私が危惧していたこととは違ったらしい。

「ないならそれでいい」

「ちょい待ち」

それなら遠慮なく踏み込ませてもらおう。答え合わせの時間だ。

(ここからは慎重に言葉を選ばないと)

「急に人のことを呼び出してあらぬ疑いかけといて、無いなら無いではい解散?少しくらい説明があってもいいんじゃ無いかな?だってあなたの言い方だとまるで私が何か悪いことでもしたかのような感じだったけど?」

「必要ないだろ。お前が日陰に危害を加えないならそれでいい」

「日陰、ね」

「ッ!」

「どうやら後ろめたいことがあるのはあなたの方みたいだね。教室では苗字呼びだったのに…やっぱり名前で呼んでたんだ」

「たまたまだ」

「じゃあ何であの時フリーズしてたの?」

「……フリーズなんてしていない」

あの時…日陰が必死に神羅に声をかけていた時。神羅はずっと本から目を離さなかった。あれだけ長い時間があったのに。ページを捲るどころかその視線は一点に固定されていた。

あの時はまるで凍っているみたいといったが…事実凍って(フリーズして)いたわけである。

「その言い訳はだいぶ苦しいと思うけど?だって私が肩を揺さぶったら反応したじゃん」

「ッ!」

神羅の眉尻が上がる。それは一見したら怒っているように見えるが…よく見ればわかる。自分のミスに気づいて呆然としているだけだと。

よし、畳み掛けるか。(鬼

「それとも…まさかとは思うけど日陰ちゃんのこと本当に無視してたの?」

「そんなことするわけないだろ!!俺はアイツらとは違う!」

神羅が声を荒らげる。その感情の動きが次の失態につながるというのに。

(へぇ…アイツら、ね。つついたらなんか出てきそう)

「じゃあ私の事をそのアイツらと一緒だと思ってたって事だよね?」

「ぐっ…」

神羅も馬鹿ではない。言い返したいが、下手な事を言うと先ほどの二の舞になる。それを警戒しているようだ。

(話の流れから推測するなら…)

「日陰ちゃんは昔友達から裏切られた…?」

いや裏切りって何?結局そこがわからないと解決しない。

「あんな奴ら…!日陰の友達じゃない!!」

神羅が吐き捨てるように言う。その瞳は怒りに燃えていた。

私は目の前で怒り狂う学年一のクールな男子を見て…特に怖がるとか不思議がるとかそんなことはなかった。

ただ驚いた。いつもの我関せずといったいっそ冷たいとも取れる言動との温度差に。でもそれはただの誤魔化しであって隠れ蓑だったのだろう。

もし本当に神羅が冷たいのなら。日陰のためにここまで怒ることはできないだろうから。つまり、冷たくしているのはわざと。それもまた、日陰のためなのだろう。

「神羅がそこまで言うなんて…一体何があったの?」

そして私は突き動かされた。純粋なる興味に。クールだと称されるこの完璧男子の裏側に。

「それはッ…!」

口を開いた神羅。そのまま何かを言おうとしていたが…口をつぐんだ。

口が割と硬いらしい。大事なところで口が重くなるタイプか…面倒な。

「言えないの?」

そんなに、酷いことなのだろうか。

「俺の口からは言えない。俺は日陰に許されてない」

神羅はすっと目線を下ろした。その瞳は先ほどまでの怒りは鳴りをひそめ、ただただ強い後悔だけがそこにはあった。

すると…ガラリとドアが開いた。

私と神羅二人の目が音源…開いたドアへと吸い寄せられる。

そこに立っていたのは。

「もういいよ。これ以上歩友ちゃんには隠し通せないから」

「日陰…いや、天道」

気まずそうに神羅が目を逸らし、苗字呼びに戻す。

「もうその呼び方しても意味ないよ。玲君」

「……そうだな。日陰の、いう通りだ」

「歩友ちゃん。今まで騙しててごめんね」

いつもの底抜けに明るい日陰とは違う。その顔に浮かんでいたのはいつもの笑顔ではなく、いいように言えば落ち着いた顔。悪いように言えば暗い表情だった。

「騙す…?物騒な言葉だね。それに神羅の話だと日陰ちゃんが裏切られた側なんじゃないの?」

「それもまとめて今から説明するよ」


「実はね…私と玲君は幼馴染なの」

そんな歩友ちゃんにとって衝撃であろうカミングアウトをする。今まで玲君とは一定以上の距離をとっていた。名前だって苗字で呼んでいた。歩友ちゃんに玲くんのことを聞かれた時もまるで赤の他人のように答えた。本当は幼馴染なのに。私はずっと歩友ちゃんに…そしてみんなに嘘をついていたんだ。

歩友ちゃんはなんて言うのだろうか。やっぱり…怒られるのかな?それとも落胆されるだろうか?怖くて歩友ちゃんの顔をまともに見ることができなかった。

でも…歩友ちゃんの返答は私にとって思わず顔を上げてしまうほどの衝撃があった。

「うん。そうだろうなって思ってた」

『え?』

玲くんと思わず一緒に驚いてしまう。

え?何で?だってバレる要素なんてないはず…!

しかし、歩友ちゃんの返事は落ち着いていて淡々としたものだった。

「だって私が日陰と話している時ほぼ毎回神羅に凄い目でみられるし」

き、気づかなかった…

「だから日陰に神羅について尋ねてみたけど、二人とも私たち他人ですみたいな反応するし、まぁ〜訳アリかなって」

「うぅ…」

全くもってその通りです…。まさか見抜かれてたなんて想定外すぎる。

「別に本当の他人の可能性だってゼロじゃないだろ」

どこか不服そうに玲君がいう。

「神羅…往生際悪すぎだよ」

「うるさい」

「ていうか他学年でも関係なしって感じで積極的に絡みに行く日陰が一人だけ全くの他人ですーみたいなスタンスとってるのが明らかおかしいし」

『あ…』

盲点だった…。

歩友ちゃんはそれまでの顔から一転してニヤリとした笑みを浮かべる。

「にしても二人ともそんなに仲良いってことは…もしかして付き合ってたり?」

きっと歩友ちゃんはこのシリアスは雰囲気をどうにかしようとしていってくれたのだろう。その言葉から悪意は感じなかった。

でも駄目だ。その言葉は…選んではいけなかった。

「俺と日陰が付き合ったことはない」

玲君が不機嫌そうな声をあげる。でも私には分かった。だって幼馴染だから。"付き合う"…その言葉は確実に彼を傷つけてしまった。

「へぇ…でもそれならこれから」

まだ何か言葉を続けようとしていた歩友ちゃんの言葉を遮り、玲君がピシャリという。

「そもそも俺は…すでに日陰から一度フラれている」

「なるほど」

だけど、それを聞いてもなお歩友ちゃんは落ち着いた態度を崩さなかった。まるで全てを知っていたかのように。

「なるほどって…驚いたりしないのか?」

「ん?そりゃまぁ生きてたらフラれることもあるんじゃ…こほん。えぇぇぇぇ!?」

あまりにもわざとらしい様子で歩友ちゃんが驚く。周りからよく、鈍いと言われる私でもわかる。演技だ、これ…。

「そろそろ怒るぞ、揣摩」

玲君がピクピクと頬を痙攣させていた。まずい。完璧に怒らせてしまっている。

(何とかこの空気を相殺しないと…)

「い、いや玲君落ち着いて…」

まぁまぁと宥める。胃が痛くなってきた。だってそもそも玲君のことを振ったのは私だから。

そう。いつも悪いのは…私だけ。

「歩友ちゃんもそろそろ…その。本題に入ってもいいかな?」

歩友ちゃんは少し考えるようなそぶりを見せたけれど、すぐにこくりと頷いた。

玲君も私に視線を向けている。

私はゆっくりと二人に向けて話し始めた。

今回はクールな神羅の怒ったところや、いつも明るい日陰の暗くも落ち着いた姿など書いていて楽しいところがたくさんありました。

神羅君ですが、実は(…実は?)とても感情表現が豊かな子です。まぁ普段はクールに振る舞ってますけどね。

次回はついに日陰ちゃんの過去が明かされます。楽しみに待っていただければ嬉しいです。

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