1.初めての転校
人は誰しも他人と接する時、「キャラクター」を作る。それは己を守る仮面だ。
クラスのムードメーカー、教室の隅で本を読んでいる子、足が速い運動部のレギュラー。
もちろんそれが嘘というわけではないし、本当の人だっている。しかし、同じようなキャラクターがたくさんいるのは何故なのか。
怖いからだ。自分が周りと違うということ、異質だということが。
そして人は未知を恐れる。知らないということは、理解できないということは。何よりも受け入れられないことだからだ。
だから人は「キャラクター」を作る。自分は周りと同じだと、自分は周りの輪から外れていないのだと、しっかり馴染めているのだと。そう思えることは何よりも安心できることだからだ。
だから私は今日も「キャラクター」という仮面を被る。
もう二度と同じ過ちを繰り返さないために。
時刻は朝の8時。この学校の始業時間は8時半らしいので、本来なら学校にいるには少し早い時間だ。何故私がこんな時間に学校の会議室にいるのか?答えは簡単だ。私が転校生であり、今日が転校して初めての登校日だからである。
新しい学校で右も左も分からないし、当然教科書なども出版社が違うものは新しく揃えなければならない。
新しい学校に初対面の先生。新しいや初めてが多すぎる。転校とはとても緊張するものらしい。
今は高校一年生の秋。二学期の後半であり、もうすでに桜舞う4月に入学した新入生たちもつるむグループはある程度出来上がっていることだろう。それに馴染むのは至難の技だ。
しかし、私が転入する頃には桜はとうに散り、イチョウと紅葉が綺麗なコントラストを描く絨毯を作っている。時の差とは残酷なものだ。
なぁんて、現実を受け入れたくない私は窓の外を見てぼうっと現実逃避を始めてしまう。
気づけば自分の入るクラスの担任らしい男の先生の話は終わり、教室の扉の前に立っていた。
いつの間にワープしたのだろうか?
いや、自分の足でここまでしっかり歩いてきたわけだけれど。
私は心の準備とか色々したかったのだが、先生はせっかちでさっさと扉を開けてずんずんと教室の中に入っていってしまった。少し慌ててその後を追いかける。
ワイワイガヤガヤと教室の扉を隔てた外まで聞こえていた賑やかな話し声はどこへやら。先生が教壇に立つとともに、ぴたりとその声は止んだ。
静かに!などの声もかけていないのにすごいなぁ、きっとこの先生はすごいんだろうなぁなんて現実逃避をしたくなってしまう。
が、生徒たちーいや。クラスメイトたちの視線はほぼ全て私に向けられていることは目を逸らしてもどうにもならない事実だった。
「それじゃあ自己紹介をしてもらおうか」
そういうが早いか担任は教壇からさっさとおり、挙げ句の果てに手渡す時間も惜しかったのか黒いペンを白板からぱっと投げてよこした。
……いやペン投げないで…。
私はそれに驚いた"フリ"をした。肩をビクッと跳ねさせ、慌てたように前へ手を突き出す。
しかし私は極めて冷静だった。放物線を描きこちらへ飛んでくるペンを左手であっさりと掴み取る。
そのままポンっとキャップを外すとキュッキュと白板に私の名前を書いた。
そしてくるりと振り返り、手でペンのキャップを落ち着きなく付けたり外したりしながら告げる。
「皆さん初めまして。私の名前は揣摩 歩友です。初めての転校で右も左もわかりませんが、よろしくお願いします」
そういって頭を下げたのだった。
初投稿です!まったり更新していきます。




