新しい出会い
「増田くんはこの時初めて人を自分の中に入れたのかな?」
「そうです!あの時の興奮!胸が高鳴る感じ!忘れられません!どんな薬よりも凄かった!」
増田くんが元気を取り戻している…
よっぽど良い思い出なんだろう…
「人以外では無いのかな?」
「うーん…自分の中に入れる事は無かったかなあ。」
「そっか」
「でも、俺は好奇心が凄く旺盛だから…中身とか気になっちゃうと開けてみないと気が済まなくなって来るんです。」
「開ける?」
「そう、開いて。」
「どう言う風に?」
「それは…」
○○○○○○○○○○
昔から俺は人一倍好奇心が旺盛だったかも知れない。
たまたま図鑑で見た鳥や猫や犬の中身が同じか開いて見たくて、試していた。
「大体同じだなあ…」
そんな感想だった。
たまたま友達に、その頃飼っていた鳥を開いて見たって話したら
「そんな事普通は絶対しない!増田やば過ぎる!」
って口を聞いてくれなくなったから、これは人に知られたらダメな事なんだなって学習した。
今回は中身を見た訳じゃ無いけど、相手が人間だし、多分見つかったら大変な事になるなって段々冷静になって来た。
とりあえずこのクミは見つからない様にしないと…
でも非力な俺では1人で運べない。
頼めそうな人も思いつかない…
どうしようかなあって思っていて、ふと思いついた。
ショウに手伝って貰おう!
あの人は多分見つかるとヤバい薬を売買してる。
俺も散々売り上げに貢献した。
クミを運んだり隠したり位は手伝ってくれるだろう。
そう思って直ぐにショウに連絡した。
ショウはまた薬を買うと思っていたらしく、この状況を見て絶句していた。
「サンジくん…これどういう状況…」
「この子クミちゃんって言うんだけどね、クミちゃんだけを俺の1番にしてくれって頼んで来たの。でも俺は皆が同じ1番だから結局クミちゃんも1番なんだけどね。説明しても納得してくれないから俺の中に入れてあげたの。」
「…全然分からないけど…サンジくんがヤバい奴だって事は分かった…」
やっぱりそうなるのか…中々人と分かりあうのって難しいなあ。
「で、どうするのコレ…」
「コレじゃなくて、クミちゃんね。とりあえず隠さないとマズイかなぁって。俺非力だし1人じゃ無理だからショウに手伝って貰おうかなって連絡した。今まで売り上げに貢献して来たしこれ位サービスしてくれるよね?」
「何気に脅されてるなあ…でもサンジくんを敵に回したらヤバいってのは分かった…じゃあ、俺も非力だから…助っ人呼ぶわ」
「ありがとう!助かる!またショウから薬買うからね!」
「う…うん…こちらこそありがとう…」
そう言って誰かに連絡してくれて、怖そうなおじさんが2人やって来た。
「この人、高木組の人ね。普段お世話になってる」
「この度は夜分ご足労、誠に有難うございます。」
知らない年上のおじさんだったので、出来るだけ丁寧に挨拶した。
「なんかおもしれー奴がいるって聞いて来たけど、ホントーにおもしれーなあ!」
そんな俺は面白いだろうか?初めて言われたので、ちょっと驚いた。
「気に入った!手伝ってやる!隠蔽は御手のものだ!」
そう言ってさっさと車のトランクルームに運んでくれた。
「また何かあったら連絡しな!こんなキモの座った優男、面白すぎる、お前にまた会いたい!」
何か知らないが気に入られた。
そして皆さっさと居なくなってしまった。
何も無かったみたいに元通りだった。
何か…こんな呆気ないんだ…
色々心配して損した。