チノイシ
「あれ?三田さん?」
「お久しぶりです。増田さん。」
「まさかこんな所で会えるなんて。ビックリです。」
「増田さんでも驚く事ってあるんですね?」
「俺でもって何ですか。俺だって一応人間ですよ」
「それは大変失礼致しました。」
「今は看護師でもやってるんですか?」
「いえ、厳密には看護助手…のフリですね。」
「俺の塾に居た時も事務員の『フリ』ですか?」
「まあ、そう言う事です。」
「やっぱり三田さんはウィザードだなあ。悪どくて騙すのが上手い。」
「申し訳ありませんでした。」
「子供達はどうなっていますか?」
「何とか色々頑張ってますよ。増田さんが薬とかあげた子もいるんで大変ですよ。まあ、軽い奴なんで何とかなるかと思いますが。」
「それは大変申し訳ありません。今の俺には何もしてあげられませんが、俺の私財投げ売ってでもどうにか皆を幸せにしてあげて下さい」
「まあ、その辺りは色々手を尽くします。」
「ところで何か御用でしたか?三田さん」
「先ずは自己紹介から、私は厚生労働省の麻薬取締官の三田と申します」
「へー!マトリの人だったんだ。」
「で、最初はショウこと唐沢翔の逮捕から取り引き相手を捜査していて、あなたにたどり着きました。」
「はい。」
「あなたに近づき色々証拠などを探っていく内に我々の権限では手に負えない大きすぎる事件の数々の内容が分かり、警察と連携して逮捕となりました」
「それはご迷惑をおかけ致しました。」
「現段階ではあなたは心身喪失と言う事になり、精神科医の協力で、数々の事件の供述をして貰っています。」
「あー。俺は精神病に分類されるんだなあ。あの田所さんとの思い出話も取り調べなのね。」
「その田所ですが、実はこの人物も捜査対象となっています。」
「そうなの?何か温厚そうな人に見えるけど」
「あなたも世間から見たら同じ部類に見えますよ。」
「それは申し訳ありません」
「元の容疑は違法な薬物の入手です。それで私が潜入していました。」
「なんか医者ならバレずに簡単に手に入りそうだけど」
「危険薬物は医療用でも取り扱いに厳しいのです。必要分以外は例え医者でも普通のルートではまず入手出来ません。」
「さすが詳しいね!」
「有難うございます。で、調べているうちに厄介な人物と判明しました。」
「厄介?」
「はい。彼はまるで『最後の審判』気取りで殺人を犯しています。その為に薬物を入手しています。」
「そうなんだ。サイコパスだね。」
「…あなたに言われて田所も本望でしょう。なのであなたの時と同じく今警察と動いています。」
「そうかあ。田所さんともお別れになるのかあ。」
「田所は恐らく次のあなたとの会話であなたの殺人を決行するでしょう」
「そうなの?」
「はい。田所はあなたの物語のラストに執着していましたから。最初に供述したギルドマスターの世界で話し終えた所と現実世界の同じ時間軸まで来て調書を書き終えました。最後にあなたから知りたい事がある様です。恐らく最後にあなたと会話して決行するはずです。」
「成る程ねー。そんな面白い話でもないと思うけど、田所さんには面白かったんだね。知りたい事ね。」
「私ならあなたの命を助ける事も出来ます。あなたの人となりを知り悪意がない事を知りました。亡くなった方々もどの道刑に処せないあなたに対して死のうが生きようがどちらになっても浮かばれません。あなたが死にたい意志があるなら目を瞑って見逃します。いかが致しますか?」
「俺は…このままなんの感情も愛も無い…この世界に無意味に生き続けたくは無いです。自分の意思で消えたい。」
「分かりました。では、最後に個人的な質問をしても良いですか?」
「何でしょう?」
「あなたの調書を読ませて頂いて気になった事が1つあります」
「何だろう?俺は何も嘘は言ってないけどな?」
「あの星に出てくる名前は現実世界とリンクしていて、近い名前でした。ただ、長沢匠『ナミ』だけは両世界で同じ名前です。何故でしょう?」
「あー、ナミはね、俺のこの世界を作った言わば創世主ってのかな、無理矢理広い世界に連れ出した。まあ転落人生のスタートのキッカケ作った悪友だけどね。」
「成る程…キッカケは長沢に連れられて行ったあの店からですからね。」
「でもね、多分あれがなかったらやっぱり俺は冒険も無いまま狭い世界でずっと欠けたまま人生終わってたかなって思う。」
「そうですか。」
「ナミは…俺の世界の地の石を空に蹴り上げて突き破ってこじ開けて、太陽の光と宙の石を降らせて俺に拾わせて行ったんだろうな」
「チノイシ…」
「それじゃ、三田さんありがとう。お元気で!」




