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地石  作者: 水嶋


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完全な人間

俺はぼんやりとテレビのニュースを見ていた。


民間のロケット月旅行計画

将来的に人が宿泊出来る施設の建設計画のイメージ映像…

「こうなったらまるでSFの世界みたいで我々が生きているうちに実現されると良いですね」

とアシスタントのアナウンサーがコメントしている。


某国の軍事パレードの映像

相変わらず見せつける様に最新の弾道ミサイルやら軍用機やら…


干ばつの地域に芽吹いた若葉の映像…


南の国の楽しそうなお祭りの映像

ビーチで開放的な格好でお酒を手に踊っている…


月には行けないけど…

暖かい南の国の、この国には無い鮮やかな海の色に見惚れていた。


外の世界…遥か遠い行った事の無い知らない外国に憧れていた。

どうせ長い人生なら色々な世界を知りたいと思っていた。


今までだと言葉も通じない、高い金を払ってせいぜい数日の滞在に価値を見出せていなかった。


『死ぬなら自分で決めて進んだ世界の中だ』


以前ナミに俺はそう言った。


今の俺は結局自分で選択して進んでこの世界にいる。


終わりはあの綺麗な海がいいなって最後の場所を自分で決めた。





「次の方、308番でお待ちの方、4番窓口までお越しください」


銀行に預金額を全額現金で受け取りの手続きに来た。


「まずは本人確認の為、身分証の確認をさせて頂きます」


そう言われて用意して居た自分の塾で作っていた社員証を見せた。


「後は住民票や印鑑登録証明書等と認印はお持ちですか?」


「ハイ」


運転免許は持って無かった。

パスポートはまだ無くこの後受け取りに行くのでまだ手元には無かった。


マイナンバーカードと保険証はここに来る前に捨てた。

全てを捨てる気で来ていた。

預金が残っていると、死んだ後引き落としが大変になるだろうと預金額を空にしておきたかった。

必要分以外は恵まれない子供を救う団体に寄付するつもりだった。



「確認が出来ました。それでは準備致しますので、そのまま暫くお待ちください。」

女性の銀行員が機械で札束を用意している。


あれが今まで集めて来た愛の数か…とぼんやり眺めていた。


「高額の出金の場合、理由を伺わせて頂いています。別室にご案内致しますのであちらに掛けて暫くお待ち下さい。」


そう言われて、最初に待って居た所とまた同じソファの並んだ場所で案内されるまで座って待った。


「それではお待たせ致しました。参りましょう」


そう言ってスーツを来た職員に銀行の奥へ連れられて行った。



「それでは此方へどうぞ」



案内していた職員が黒い扉の前に立ち、暗証番号で開くタイプのドアをボタンを押して開けた。


ドアからカチャッと音がしてドアノブを回してドアを開けた。


俺が入るとまたドアを閉めた。


中にスーツを着た別の男がいた。


「私は刑事の広瀬と申します」






そう言ってその広瀬と名乗った男は警察バッチの付いた顔写真付きの手帳を開いて見せて来た。





○○○○○○○○○○





遂に物語が終わってしまった…


あのファンタジー世界と同じ所で終わった。






「昨日はお話有難う…今日の気分はどうかな?増田くん…」


「平穏です。」


「そうか…」


「俺はこの後どうなるんでしょうね?」


「まだ何とも言えないかな。警察の判断だから。私はイチ精神科医でしかないからね」


「そうですか…」


「増田くんに質問しても良いかな?」


「どうぞ。」


「あの星…ギルドマスターの世界にいる時は増田三治の記憶はあったのかな?」


「ギルドマスター?」


「ポーションとかソライシとか…覚えてない?」


「うーん…何の話か…ちょっと分からないですが…なんですか?それは」



増田くんの中では完全に別人格でアチラの世界にいる時は現実世界と隔離されている様だ。アチラの世界にいる時は辛い事も忘れられてある意味幸せなのかも知れない。


こう言う解離性同一症は虐待などを受けた人にも自己防衛に発症したりする。




俺はこのモンスターが下衆な世間のエンタメに晒される事に我慢ならなくなっていた。


もっと…


崇高な…


神聖なもので無ければならない…




「このままだと増田くんは世間に晒されて良い娯楽のネタにされてしまうだろう。恐らくその精神状態だと死刑も執行されず長い寿命をこの牢獄でただ何もせず過ごす事になるだろう」


「そうですか…やっぱり俺はこの世から自分で消える事が許されなかったみたいですね…」


「私は増田くんには穢されず神聖なまま終わって欲しいと思っている。その手助けがしたい。」


「神聖?」



「最後に増田くんに質問です。あなたは『この世界から消えたい』ですか?消えたく無いですか?消えたく無い場合はこのままここで平穏に寿命が尽きるまで生きながらえるでしょう」


「俺は…このままなんの感情も愛も無い…この世界に無意味に生き続けたくは無いです。自分の意思で消えたい。」


「分かりました。それではこれを注射すれば安らかにこの世界から消える事が出来ます。増田くんの業績に報いる為、痛みも苦しみも無く眠る様に行けます。」




「ハイ…」



その返事を聞いて増田くんに注射した。


増田くんは段々体が倒れてきて目をつぶって最後に一言漏らした。








「これで『完全な人間』になれる…」


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