決心
難波…アッチでもコッチでも良い仕事してたのね。
あぁ…君も…増田くんも…
俺は興奮していた。
調書を打ち込み終えて…
トイレまで我慢出来ずにその場で自分の手の中に放出させていた。
「こんにちは、増田くん。今日の気分はどうかな?」
「こんにちは田所さん。今日も至って平穏です。」
「今日もお話し聞かせてくれるかな?」
「いいですよ。」
先日のヒロミの話で興奮しているかと思っていたが、言葉の通り平穏だった。
俺と話て行く内に彼の中でも段々此方の世界を思い出して来て現実を見つめ直して来て冷静になっているのかも知れない。
やはり物語の終わりが近い事を実感した。
物語が終わった時には…
俺はもう決意を固めていた。
「なら、今日は前回の続きが聞きたいな。」
「分かりました」
○○○○○○○○○○
やはり手元に有るとダメで、ついに渡されていた薬に手を出してしまった。
昔から分かってはいたけど、好奇心には勝てなかった。
これで人生狂わされる人が多い理由が分かる効き目だった。
思考や脳が徐々に破壊されていく実感もあった。
やはり高額だったので金の工面に苦労した。
宍戸さんに勧められて遂に愛する子供を金の為に利用する時もあった。
いつしか俺の塾は裏では秘密クラブの仲介業者みたいな仕事にもなっていた。
特に小さな子供は普通は中々暴れたりせず身体の関係の行為が出来る状態にするのが難しいらしく重宝された。
俺が今までずっと1番大切にして必死に集めて来た愛を…こんな薬や金の為に簡単に手放している…
その現実から目を逸らせる為にまた薬に頼る…
悪循環だった。
「増田さん、薬が増えてますよ…最近より強力な物になってきてます。大丈夫ですか?」
三田さんが心配していた。
「大丈夫…皆頑張ってるのに俺だけ何もしない訳に行かないからさ。」
「そうですか…その栄養剤…薬は副作用も結構強力に有ります。気をつけて下さいね」
一応滋養強壮の栄養剤とは言っているが、三田さんならこれが何か気づいているだろう。
俺はその頃には色々絶望していて、最後に自分を終わらせる場所を探していた。
どうしても最後の一押しと、残された子供達の事が気掛かりであと一歩が踏み出せて居なかった。
「俺の体の事で先の事は気にしてない…ただ、この塾がどうなるかが心配だ…頼ってくれてる子供も多い…」
「…」
「だから、俺が遠くに行ったら、三田さんに子供達の事任せたい…ダメかな?」
「承知しました…でも、増田さんが帰って来ることを私は信じて待ちます」
「ははは、三田さんらしく無い言葉だけど…有難う」
「私らしいって何ですか。私だって一応人間ですよ」
「悪かった悪かった。頼りにしてるよ」
「ハイ、増田さん。」
○○○○○○○○○○
「ハルミが他の男とホテル行ってるの見ちゃった…」
ある日カナハが俺に告げ口して来た。
「そうかー。ハルミも好きな人が他に出来たんだろ?ずっと俺だけって訳にも行かないだろ?勉強は頑張ってくれてるぞ?」
「でも!先生あんなにハルミに良くしてあげてるのにっ!酷いよ!なんで怒らないの!?」
俺は最近子供達に後ろめたい事をしているので、今はそう言う事に怒りとかは沸かなかった。
「うーん、俺は大丈夫だよ。でもカナハ、友達の事告げ口とか良く無いぞ。」
「だって!だって!先生最近ハルミとばっか遊んでる!」
「そんな事ないぞ?カナハとも遊んでるだろ?」
「…」
「拗ねちゃったか。可愛いなあ。お菓子あげるから一緒に遊ぼう。な。」
「うん」
そう言って頭を撫でるとやっと機嫌が直って来た。
「先生!なんか俺に言う事無いの!?」
「何だろう?」
「カナハから聞いたでしょ!?俺他の男とホテルいったんだよ!?」
「うーん、まあハルミにも事情があるだろうし、俺だけって命令なんて出来ないよ。親でも無いしさ。ハルミはちゃんと俺の事好きでいてくれるし。」
「何で怒んないの!?」
「うーん、怒りはしないなあ」
俺も今は同じ様な事をしている。裏切っている。
以前なら試す様な事は絶対許せなかったが、今はもう愛を手放して来ている…愛を諦めている…
「オレの事どうでも良いの!?」
「そんな訳ないよ。大事に思ってるし、好きだよ。一緒に遊んでるし。可愛いよ?」
「なら俺を殺してよ!先生だけのモノにしてよ!」
そう叫んでハルミは走って行ってしまった…
初めて言われた。
自分の命を自ら差し出す、自分から俺の中に入りたいと言う愛に心が震えていた。
もうこの愛はこの先二度と手に入らないだろう。
1番欲しかったものを貰えた…
欠けていた何かがやっと埋められた気がした。
この言葉で決心が固まった。
ごめんなあ、これで行ける…
有難う…ハルミ…




