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「恐れ多いぞ!」とトニオが(わめ)く。


「あなたたちのお陰で、時が稼げました。聖宝を奪われず良かった」


「聖宝?」


「ええ。我々側の(ちから)(みなもと)です」


「こんな田舎にあるのか?」


「かつて、この地は重要でした。敵はなりふり構わなくなり、小さな積み重ねとて、(おろそ)かには出来ません」


「よく分からんな…」


 ダインは首を傾げた。


 まあ、ついさっきまでは死を覚悟していたのだから、今の気分が良いのは間違いない。


 聖女が歩きだした。


 ユニコーンもついてくる。


「どこへ?」


 ダインも続いた。


「聖宝を回収します。そうしないと、またこの村は襲われるでしょう」


「それは困るな。すぐ持っていってくれ」


 ついてきたがるトニオに負傷した仲間の治療を無理矢理(むりやり)承諾させ、ダインとオルソンはミリンダルと共に歩く。


 不思議と彼女の(そば)に居ると、疲れが()える気がした。


 村の中央に建つ、小さな(ほこら)に着いた。


「ここです」


 ミリンダルが祠を指した。


「この昔の祠が何だってんだ?」


 オルソンが(ひげ)を触りつつ、訊いた。


 ダインも両腕を組み、祠を見つめる。


 普段から、よく眼にはしていたが、何も感じたことはない。


 ダインが筋金(すじがね)入りに魔法に無縁な家系のせいかもしれないが。


 キュートに微笑むミリンダルが(そうすると、ただのかわいい娘に見えた)祠に近づいた。


 右掌(みぎてのひら)を祠に向けた。


 祠が輝きだし、崩れる。


 中から出てきた大人の拳大の光球が、ミリンダルの掌に吸い込まれて消えた。


 彼女が、ニッコリ笑う。


「これで大丈夫」


「そいつは良かった!」


 ダインが手を打つ。


「毎朝、その祠を丁寧に掃除してる婆さんも、明日から昼まで寝れるな」


「否、あの婆さん、元々早起きだからな」とオルソン。


 ミリンダルは颯爽(さっそう)とユニコーンに騎乗した。


「それでは、私は行きます。善良な人々よ」


(めん)と向かって言われると照れるな」


「そうだな」


 ダインとオルソンが笑う。


「2人とも、お酒は程々に」


「何で知ってる!?」


「おいおい! 急に母ちゃんみたいなこと言うなよ!」


 ダインは苦笑い、驚いているオルソンと顔を見合わせた。


「アハハ!」と美しい笑い声を残し、聖女はユニコーンと共に森の中へと去った。


「聖女なんて、ホントに居るんだな」


「ああ。そのお陰で命拾いした」


 2人が聖女の消えた森を見つめていると、トニオが駆け込んできた。


 どうやら猛スピードで怪我人たちを治したらしい。


「聖女様は!?」


「もう帰った。彼氏とデートじゃないか?」


「罰当たりなことを言うな!」


 トニオが憤慨(ふんがい)し、すぐにガックリと肩を落とす。


「私の信仰心をお伝えしたかったのに…」


「あの娘、俺たちが酒飲みなの知ってたから、あんたのことも知ってんじゃないか?」


 オルソンが教えると、トニオはすぐに上機嫌になった。


「神よ!」と連呼しだす。


 うるさくなった。


 しかし、今はそれも許せる。


 生きているとは素晴らしい。


 神は信じないが、聖女への恩は忘れまい。


 今夜は少し、酒の量を減らそうと思うダインだった。




 おわり


 

















 最後まで読んでいただき、ありがとうございます(*^^*)


 大感謝でございます\(^o^)/

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