こんな世界クソ喰らえ!
どうも初めまして空です。
お話を書くのはこれが初めてなので、どうか暖かい目で見て頂けたら幸いです。
私には弟がいた。弟は天才だった。
家では勉強なんかすることも無く、ずっとゲームばかり。学校のワーク類をしないのは当たり前。授業に遅れていくのも当たり前。そんな奴なのに、テストでは必ず学年1位を取ってくる。運動神経も抜群。歌、美術などの副教科も先生が絶賛するものを生み出している。
そんな完璧人間の姉をしているのがこの私。
私は弟とは正反対の人間だった。勉強駄目、運動駄目、副教科駄目。何もかも駄目な人間だった。
そんなんだから先生、親、親戚にも比べられて生きてきた。毎回顔を合わせる度に、「弟は出来るのに」「姉として恥ずかしくないの?」「こんなことなら産むんじゃなかった」など、沢山の罵声を浴びせられた。
この地獄が何年も続いた。
いつしか私は「飛びたい」と思うようになった。
そして夏の眩しい日差しが木々の隙間からこぼれ落ちる今日、私は山奥の川目掛けて飛んだ。
飛んだと言っても、それはほんの一瞬だった。その後は垂直落下で川まで一直線。それでも、私は嬉しかった。楽しかった。一瞬でも飛べたのだ。人間は鳥のような翼を持ち合わせてはいない。だから飛べない。でも、私は今日飛んだのだ。弟にも出来ないことを成し遂げたのだ。
今日という日に乾杯。
そして、来世こそ沢山の才能が得られることに期待。
私は川の中に頭から落下した。
大きな水飛沫をあげ、小鳥が騒いでいるのが聞こえる。
夏の暑い日に浴びる冷たい川の水は最高だ。
クソみたいな世界にさようなら。
これが私の前世だ。
あの後死体はどうなったのだろう。誰かに見つけて貰えたのだろうか。それとも、野生動物にでも食べられた?そんな事を考えても無駄か。
私は転生した。
今世は小さな村に住む夫婦の元に産まれた。
この小さな村には、私含めた数人の子供と数人の若い人、沢山の老人で構成されている。言わば過疎地域だ。そんな辺鄙なところだが、良いところもある。
ここは小さすぎるが故に教育があまり行き届いていないのだ。1日に1時間だけ村のお兄さんが勉強を教えてくれる。その内容が前世で言う所の『小学生』レベルで終わっているのだ。前世の記憶がある私にとっては簡単なもので、ほぼ無双状態だった。他人から讃えてもらえるというのは、とても気持ちが良かった。
その1時間が終われば自由時間。村の子供達や村の人々と沢山遊んだ。
こんな生活を続けいると楽過ぎて時間の流れが早く感じた。私はあっという間に18歳になった。
今日はなんだか妙に村の大人達が騒がしい。
疑問に思い、友達のニーナに聞いてみることにした。ニーナは村のゴシップ等に敏感で、私達同年代の間では『情報屋』と呼ばれている。
「ねぇニーナ、今日は何か催しでもあるの?」
「いいえ、そんなものないわ。」
ニーナは首を横に振った。その後、真剣は面差しでこう言った。
「王都から騎士様と魔法使い様が居らっしゃるのよ。」
「え、なんで?」
話を詳しく聞いてみると、この世界では18歳になった人は皆『才能検査』というものがあるらしい。そして、才能があるものは皆王都で働く決まりがあるとの事。
「王都で働くことはとても名誉なことなのよ。私にも隠された才能がきっとあるはず!」
ニーナは目を輝かせながら語った。
「なら、才能がない人はどうするの?」
「このまま変わらない生活を送るのよ。働かせて貰えず、ただ一生を子供のようにして過ごすの。とても屈辱的ね。」
ニーナは当たり前でしょ、と言わんばかりの口振りだった。
つまりは、才能がある人は王都という所で馬車馬の様に働き、才能がない人はこれまでと変わらず、遊んで食べて寝るだけの生活。という訳だ。
(、、、そんなの才能がない方が楽じゃない!!!!)
私は心の中で叫んだ。働くことに憧れを持つニーナは立派で、尊敬するが、私には到底理解できなかった。何せ私は今の生活を手離したくなかった。周りと同じく足並みで、誰にもバカにされることの無い生活。なんて素晴らしい!これを手放すなんて惜しいにも程がある。
「あ、ほら王都の馬車が到着したわ!早く行きましょう!」
私はニーナに腕を引かれ連れて行かれた。馬車の近くには既に同年代の友達が集まっており、『才能検査』が実施されていた。
検査を終えて帰ってくる者は皆残念そうな顔をしていた。終わった人に話を聞いてみると、皆才能無し認定を受けたらしい。才能有りは珍しいのだろうか。
「ほら、俺のパラメーター見てみろよ。全部規定以下なんだぜ。」
そう言い、パラメーターを見せてくれたのはロンと言う男の子。ロンのパラメーターには、5つの項目があった。剣、弓、盾、魔法、神聖の5つだ。どうやらこの世界はゲームのように剣と魔法などが存在するらしい。
「あ、次お前呼ばれてるぞ。」
「あ、もうか。行ってくるね。」
人数が少ないせいでもう順番が回ってきてしまった。私は心の中で「才能がありませんように」と願った。
「な、なんと!剣の才能有りじゃ!しかもLv10だと?!この国初だ!」
「へ、、?」
私は検査の後あれよあれよと馬車に乗せられ、王都に連れていかれてしまった。馬車の中で魔法使い様とお話をした。
「あの、これってそんなに凄いんですか?」
私はパラメーターを見ながら聞いた。私のパラメーターは、剣10、弓3、盾5、魔法2、神聖7という結果だった。
「勿論じゃ。剣はLvMAXの10、そして神聖も7と非常に高い。盾も5だからある程度は使えるだろう。」
魔法使い様はその長く白い髭を触りながらにこやかに答えた。
「それに、才能有りの中でも複数の才能をもった人間はそうそうおらん。今のところ嬢ちゃんが世界で最もパラメーターが高い人間じゃ。それは、『天才』の称号を与えるに値するじゃろう。」
私は『天才』という言葉に少し反応した。前世では欲しくて欲しくてたまらなかった称号。でも今世では絶対に要らない!こんな謎制度の世界じゃなかったら素直に喜んで狂喜乱舞していたところだが、なにせ私は働きたくない。
神様、私を生まれ変わらせる世界間違えていたりしませんか!?
私こんな制度の世界クソ喰らえです!!!
ここまで読んでくださり、ありがとうございました。
誤字脱字等沢山あったと思います。そこは皆様で上手く補完して読んでいただけていたら幸いです。